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2022.08.01
硬式野球

[硬式野球] 〜最後に散った1部の夢、ここから再起を図れるか〜14日間連続インタビュー第1日目・ 杉本泰彦監督

聖地神宮に戻ることを夢見て、チーム一丸となりこの春を戦った東洋大の戦士たち。厳しい2部を戦い抜き、1部への切符を掴みかけたが、最後は戦国東都の重圧がのしかかり、思い出の地で涙を流した。心に焼き付く経験をした選手たちは何を語るのか。14日間にわたり彼らの思いをお届けする。



14日連続インタビューの初日は杉本泰彦監督。1部昇格が叶わなかった原因を指揮官はどのように捉えているのか。想定外の事態に悩まされた入替戦を中心に今季を振り返る。(取材日・7月16日、聞き手=宮谷美涼)


ーー今季を振り返っていかがでしたか

入替戦以外は上手く戦えたかなという感じがするし、選手の方はすごく頑張ってくれたと思います。でも、リーグ優勝して1部に上がるという大きな目標があった中、その目標を逃したということについては、目標達成できてないので、0点かなと思います。


ーー2部優勝まではイメージ通りに進んでいましたか

そうですね。紆余曲折はあるんですけど、自分たちのやろうとしていることもそうですし、ピッチャーはもともといいんですけど、バッティングの方が良くなってきていたので、すごく面白いなと。リーグ戦から今もそうですけど、進化は続いてると思います。


ーーチームとしては、「全勝」を目標に掲げていましたが

「圧倒する」という気概は必要でしょうけど、まずは勝ち点を取っていく。そうじゃないと2部で優勝できない、入替戦に出れないと分かってたので、そこのところはこだわってなかったですね。


ーー1年では宮下(総1=北海)選手がスタメンに名を連ねましたが、今後に期待するところは

多分浮き沈みはあると思いますけど、今の形で小さくならずに、スケールの大きい選手としてやってほしい。彼は守備がいいので、そういう面では、加藤響(総2=東海大相模)もそうなんですけど、あれだけの守備力を持っていれば、バッティングが追いついてきたらスーパースターになれると思うので。宮下も同じだと思います。彼は今、セカンドをやってますけど、最終的にはショートに回ってくると思うので。石上泰(営3=徳島商業)がけがしたら宮下が入ると思うので。そういう面では、大きな選手に育ってほしいなと思います。


ーーまた今季は、河北(営4=浦和学院)投手がピンチで多く登板しましたが

河北は春は、絶不調だったんで、ひょっとしたらベンチ外れるんじゃないかなという感覚だったんですけど。自分で頑張って(ベンチに)入るところまで来て。あいつがレギュラーとして、後ろを奪い取ったと。羽田野(法4=汎愛)が故障したので、本当は一條(総2=常総学院)に頑張ってもらわないといけなかったんですけど。ピッチャー陣が万全じゃなかったことは確かですけど、それ以上のポテンシャルの高さがあるので、抑え切ったというところだと思います。


ーー1部が最下位決定戦までもつれこんでいましたが、どうご覧になっていましたか

かなりシビアな戦いが続いていたので。逆にシビアな試合を何試合もやってきたところは、疲労してるか、開き直ってるかのどちらかとは思っていました。


ーーそれでは、入替戦を戦ってみていかがでしたか

初戦や第2戦の打線については、どういう風に見られるか分からないですが、野球は審判の判断が影響するので、第3戦は打てないです。あれだけ(ストライクゾーンを)広く取られると無理です。無理だから、そこのところについては粘っていかないといけないし、同じことが繰り返されていましたからね。それは、専大の菊地くんとの時と同じで、あの時も審判のストライクゾーンが広かったんですよ。うちの打線は圧倒的な長打が多くて、2部の中では飛び抜けている。いつもならスイングを入れる彼らがスイングできない。菊地(専大)くんの15奪三振の10個とか、西舘(中大)くんの時も7個は見逃し三振でしたからね。


ーー審判への対策は行っていたのですか

うちの選手に言ってるのは、「2ストライクに追い込まれて、スピード負けするならバットを短く持て」と。でもうちの選手は西舘(中大)くんのボールを速いと思っていないですから。選手は自分のストライクゾーンを持っていて、自分で打ちにいって「際どい。追い込まれてる。ボールだ」と思ったら、手が出ないんですよ。それが普通なので。「(ストライクゾーンが)広いの分かってるんだから手を出せ」って言っても出せないから、可哀想な部分ですよね。でも、同じことを繰り返さないようにしていかないといけない。その対処は秋に向けての課題であることは確かです。審判(のストライクゾーン)が広い時に、どういう対処をするか。それだけだと思いますよ。


ーー他にも想定外なことはありましたか

言い訳になってしまうんですけど、神宮の仕様が変わっていて、あんなにマウンドが固くなってるとは思わなかったので、うちのピッチャーで合うピッチャーと合わないピッチャーが出てしまうというのは、想定外だったんですよね。1戦目の時はリードしてたので、どれぐらい投げられるかなと思ったら、マウンドと合わなかったと。2戦目はみんなそういう風になってしまいました。うちはパワー系のピッチャーなので、少々力んで、腕が遅れてくる。これがうちの特徴なんですけど。全く下半身の柔軟性とか、強さとかも含めて、合うピッチャーと合わないピッチャーが色分けされたというのは想定外でした。


ーーマウンドの固さの変化は監督自身も感じたと

「マウンドが固い」と言われていたんですけど、あそこまで固いとは思わなかったので。私もピッチャーにアドバイスに行く時に、「これ?」という感じだったんですね。それで、ストライクが入らないから「どうした?」って聞いたら、「分からない」という答えなんです。それは準備不足というか、情報不足というか。可哀想で申し訳ないですね。でもそれは、慣れないと多分無理なので。1部のチームは、10何試合戦ったところで、彼らも最初は四球が多かったはずなんです。あちらは慣れていたけど、我々はそこの一試合でアジャストしないといけなかった。マウンドもそうですし、ホームベース、アンツーカのところについては、スライディングしたら全てそこでユニフォームが破れるくらい固くなっていましたね。


ーー1戦目は勝利しましたが、1部昇格への確信はありましたか

全然ないですね。僕がずっと監督をやっていて、勝負は2戦目だと思うんですよ。1戦目は、勝とうが負けようがどっちでもよかったですね。


ーー2戦目は投手陣が崩壊を起こしましたが、その原因はどのようにお考えですか

「なんでだろう」と。周りの人は「緊張して、メンタル面が原因で力を出せなくなる」と言うんですけど。うちのピッチャー陣はそんな人たちじゃないんですよ。通常の彼らは、みなさんが思っている以上にすごいんです。そんな彼らがストライクがあれだけ入らなくなるというのは考えられないです。技術的なところは分からないですけど、踏み込む足が滑って、気を遣いながら、「滑るからステップを短くして投げました」と言って、そんなこと気にしていてストライクがいくわけないですし、そこは難しいと思います。


ーー3戦目では最終回に逆転負けで2部残留となりましたが、最後に島田(総1=木更津総合)投手を起用した理由は

島田が一番いいピッチャーだからですね。八、九回に河北を起用したのは、実績とか経験を買ったんですけど。総合的な部分では島田の方が上ですよ。入替戦から登場しましたが、それだけ力があるということです。だから、秋はみんながびっくりするようなボールを投げると思いますよ。


ーー監督自身が考える入替戦敗北の原因とはなんでしょう

3戦目、西舘(中大)くんのピッチングが素晴らしいというのはあったと思いますけど、審判との相性も良かったと思います。うちも細野(総3=東亜学園)は空振り三振がほとんどですけど、もちろん審判に助けられたのもあると思います。3戦目の西舘(中大)くんが良かったっていうのは、ボールの際どいところに投げれば審判の腕が上がるので。そこにずっと投げ込んだ西舘くんのコントロールの良さだと思います。


ーー羽田野投手が入替戦には間に合いましたが、本来の力を発揮できる状態にはなかったっことは監督にとっては痛手でしたか

痛いのは痛いですよ。入替戦の1戦目を投げてみて、結局滑って腕を振っても147、8㌔しか出せなくて。それで2戦目は、無理だと思って外したんですね。じゃあその代わりに、一條を使おうと思ったら、一條も同じような形で、デッドボールですっぽ抜けちゃって、あんなの怖くて投げさせられないじゃないですか。そこは計算外だったことは確かです。


ーー入替戦後、選手たちはどのような言葉を掛けたのでしょうか

「申し訳ない」と謝りました。ちゃんとしたジャッジができなかったというのと、準備については「マウンドが固い」とアナウンスできなかった。そこは私の責任なので、申し訳ない。でも私は、やっていることとか、野球部の運営には自信満々なので。入替戦については勝負事で、勝ち負けが出てくるので、仕方ない。過程とかやってることに関しては、「負けたからこれをやらなきゃいけない、変えなきゃいけない」というのはこれっぽっちも考えてなくて、負けたのは足りないところがあるからと思っています。だから夏は、チームの上乗せとして、考えていこうとはありますかね。


ーー秋はさらに厳しい戦いが予想されますが、どのようにお考えですか

今季は、勝負事なので、負けてしまいました。それは負けただけなので、自分の野球とか東洋大の野球部を変えることは考えてないです。でも、勝たなきゃいけない中で、これをやったから勝つとか、これをやれなかったから負けるということは考えてないので。そうじゃなくて、精一杯戦って、入替戦で負けてしまった。ただその事実しかないので、今度はもっともっと強い、いいチーム、本当に強いチームを作ろうと思います。


ーーそれでは秋に向けて意気込みをお願いします

もう1回、入替戦に出て、今度は相手はどこになるか分からないですけど、絶対に勝ちます。4年生はリーグ戦で神宮でプレーすることは無理ですけど、下の選手たちに神宮でプレーできる権利を残して卒業してほしいです。



◇連続インタビュー一覧◇

8月2日 宮下朝陽内野手

8月3日 加藤響内野手

8月4日 石上泰輝内野手

8月5日 後藤聖基捕手

8月6日 橋本吏功外野手

8月7日 水谷祥平外野手

8月8日 渡邊友哉投手

8月9日 細野晴希投手

8月10日 松澤海渡投手

8月11日 矢吹栄希外野手

8月12日 松本渉外野手

8月13日 河北将太投手

8月14日 小口仁太郎主将


PHOTO=宮谷美涼