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2023.06.28
硬式野球

[硬式野球] 「この春で決めなくちゃいけない」有言実行で5季ぶりの1部昇格!

東都大学野球 春季1部2部入替戦・駒大2回戦

6月24日(土) 神宮球場 

○東洋大3-0駒大


東洋大
駒大


二塁打:水谷(四回)


○野澤、島田、石上祐ー後藤


・打者成績

打順守備名前
(中)橋本吏(総4=花咲徳栄)
(遊)石上泰(営4=徳島商業)
(二)宮下(総2=北海)
(右)水谷(営4=龍谷大平安)
(左)宮本(総4=大阪桐蔭)
(三)加藤響(総3=東海大相模)
(指)花田(総2=大阪桐蔭)

打指秋元(済2=木更津総合)
(一)山地(営3=天理)

打一吉田(営2=龍谷大平安)

打一池田(営2=三重)
(捕)後藤(法4=京都学園)


32


・投手成績


名前球数四死球三振
野澤(総4=龍谷大平安)6 2/390

島田(総2=木更津総合)1 1/331

石上祐(法4=東洋大牛久)15


1部昇格を決めた東洋大の選手たち  (写真提供:東洋大学広報)

勝利に導く快投を見せた野澤

流れを呼び出す先制打を放った石上泰

好走塁を見せた水谷を迎える東洋大ベンチ

ピンチを切り抜け、吠える島田


2部に降格してから2年、「あと3アウト」に泣いた昨年春の入替戦から1年。この悔しさを抱え、必死に野球に励んできた東洋大の戦士たちが、2023年6月24日。雪辱をついに果たした。「何としても1部に上がりたい、この春で上がらないとだめだ」。全員の気持ちが一つになった瞬間だった。


入れ替え戦2戦目。先発を任されたのは、1年秋以来の神宮での先発となった野澤(総4=龍谷大平安)。初回、先頭打者に死球で出塁を許すと、1死一三塁とピンチを招く。しかし、後続を抑え、立ち上がりを無失点で切り抜ける。二回も四球で走者を背負いピンチを招くも、本塁を踏ませず。駒大応援が勢いを増すも、強気の投球で相手を静まり返らせた。


何としても先制点の欲しい打線は三回。先頭吉田(営2=龍谷大平安)が決死のヘッドスライディングを見せ、内野安打をもぎ取ると、その後2死二塁とチャンスメイク。ここで打席には石上泰(営4=徳島商業)。放った打球は三遊間を抜ける左適時打となり、先制に成功。1部昇格に向けて弾みをつけた。


1点だけでは物足りない。四回、主将・水谷(営4=龍谷大平安)が熱い思いをバットに乗せ、右二塁打を放つと、その後相手バッテリーの捕逸間にヘッドスライディングで本塁へ突入。本塁上で大きなガッツポーズを掲げた。還ってきた主将をナインがお出迎え。その先には高校時代から苦楽を共にしてきた野澤の姿が。水谷は野澤にさらなるパワーを与えた。援護をもらった野澤は、四球で走者を許す場面はあるものの得点は許さず。六回まで無安打無失点の快投を見せ、先発としてリズムを作った。


踏ん張る野澤を打線はさらに援護するように七回。表に宮下(総2=北海)の適時打で追加点を奪うも、その裏。1死から野澤がこの試合始めての安打を中前に放たれると、連打を浴びて二死満塁のピンチを招く。ここで井上監督は動いた。「彼は強心臓の持ち主、迷いはなかった」と、1年前に屈辱を味わった島田をマウンドへ。井上監督の思いに応えたい島田は、このピンチを三ゴロに仕留め、この回を無失点。島田はマウンドで吠え、神宮を沸かせた。


しかし、まだ試練は終わらない。八回も続投した島田だが、先頭に四球で出塁を許すと、安打を浴びて1死一三塁と再びピンチを招く。「昨年春の悔しい思いは常に持っている」という島田は、一呼吸置くと後続を三振と遊飛。石上泰の好守にも助けられ、駒大打線を抑え、ガッツポーズを見せた。


九回のマウンドにも上がった島田だったが、先頭に四球を与え降板。東洋大ベンチは最後を4年の石上祐(法4=東洋大牛久)に託した。今季、リリーフとして何度もチームを救ってきた左腕は緩急のある投球で二者連続三振を奪い、あとアウト1つ。そして、最後の打者を二塁ゴロに打ち取った。


2年間、待ち焦がれた歓喜の瞬間だった。当時2年生だった水谷世代は最上級生に。2年春から先発を務め、常に最前線に立っていた細野は大号泣。そして、井上監督の顔にも光るものが。「おめでとう、ありがとう」。この言葉にナインは顔をほころばせ、監督の名前コールが神宮に鳴り響いた。


「これで終わりじゃなくて、始まりになる」(水谷主将)。選手にとってはあこがれの舞台だが、今度はこの座を死守しなければならない立場となる。この戦いが続くのが「戦国東都」。「負けない気持ちをもって最後のシーズンに挑みたい」。さらなる高みを目指して、ここから出発だ。


■コメント


・井上監督

(一部昇格を果たした今の率直な気持ち)最後のミーティングでも選手に「おめでとう、ありがとう」という言葉をかけましたが、この気持ちだけです。ほかにないです。一部に上がったら上がったで、今度は落ちないように。当然、日本一を目指さなければいけないけど、まだまだそのレベルにはないと思ってますので。まずは“一部死守”ですかね。(普段の会見でも、始めに厳しい言葉が飛びますが、先ほどベンチ前で涙が見えました)そうですね。不覚にも選手に囲まれたら涙が。年のせいですかね。何十年ぶりかに泣いちゃいました(笑)

(以前二部から上がってきた青山学院大学が、一部で優勝して日本一になりましたが目指す上でどのようにみていますか)僕は青山学院さんの試合を二試合ほど見たんですけど、足元にも及びません。まず最下位を回避するとこからです。(七回のピンチで、ほかにも投手がいる中で島田投手を起用した理由)僕は試合前から順番は決めているので。そして、島田はぼくのなかで強心臓だと思っているので、迷いはなかったです。


・水谷主将(営4=龍谷大平安)

(監督を一部に上げましたがいかがですか)僕がキャプテンをやったと同時に井上さんも監督になられて、お互いのスタートだったこともあり、何としても一部に上げたいと思ってました。この春じゃないと絶対だめだと僕は思ってましたし、自分に言い聞かせて、チームにも言い聞かせてきたので、こうやって二連勝して遂げたことはチームの強みにもなります。ここが終わりじゃないし、始まりになると思うのですが、今日はみんなで喜びを分かち合いたいと思います。(ここが終わりじゃないとおっしゃいましたが、一部に向けて今思うこと)僕は同じ高校出身の同級生がいるので、青山学院の試合をよく見に行ってました。結果として日本一になって、そのような大学がいるリーグでやっていくので、一段階も二段階もレベルの高い野球になると思います。このままでは絶対勝てないので、チームスポーツですけど個人対個人がチームとしての結果につながると思うので、レベル高いところでできることに感謝しつつ、簡単に負けてはだめなので、負けない気持ちをもって最後のシーズンに挑みたいと思います。


・野澤(総4=龍谷大平安)

(大事な先発マウンドで途中まで無安打投球でしたが、いかがでしたか)今まで神宮球場で一年生どころか、高校のころから先発して全然勝つことができなかったので、今回は絶対勝とうと思ってました。入れ替え戦も、落ちるときも去年もベンチ入りできなかったので、悔しい思いがあったので、登板してこのような投球ができてよかったです。(前日の細野投手の185球の熱投は何か響いたものや感じたことはあるのか)自分自身のことなんで、一戦必勝で今日勝つことを意識して挑みました。(乾コーチの就任、存在は投手陣にどのような影響があったのか)間の取り方やフォームの悪いところを指摘してもらって、良くするのは自分自身ですけど、投手としての考えや見方を教えてもらいました。



「シーズンを通して気を付けてきたことや大事にしてきたことはありますか」


・監督

就任当初から、キャプテン含めて言ってきたのは何かにつけても厳しくですかね。野球だけでなく生活面についても厳しくやろうと。野球は失敗するスポーツなので、各個人が一生懸命やれば取り返せるんですけど、私生活は失敗するとなかなか取り返せない。人と人との信頼関係なので。そこだけは厳しく言ってきたつもりです。野球の事は怒ることもあるんですけど、それ以上ですね。


・水谷

(監督に言われた私生活の厳しい部分はどんなことがあるのか)まずは、身だしなみですかね。朝練があって、寝ぐせなどをしっかり整えてグラウンドに降りてくる、遅刻をしないなど、当たり前を徹底しましたね。(徹底したことで野球の面で何か成果はありましたか)成果というより、これをしないと土俵に立てない。野球をやる以前の問題なので。これをしたから良くなるというより、これをしないと野球ができないということだと思います。


・監督

(今の言葉を聞いて)水谷も言った通り、自分を律することだと思うんです。それが野球に出てくる。野球の個人練習なんかでも、自分に厳しくできるようになると思うんです。今年はあんまり全体練習が長くないんです。僕が練習嫌いなので。個人練習の時間が多いんですけど、彼らはずっとやってます。個人練習でも自分を律して厳しくできる子が増えてるので、それが試合にもつながったかなと思います。



TEXT=成吉葵/PHOTO=成吉葵、一ノ瀬志織、青柳そよか