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プロ・大学交流戦
8月23日(日) ジャイアンツ球場
東洋大5-3巨人
好投を続けた原。
巨人二軍を相手に堂々の投球を披露した。
バックネット裏からヤクルト・小川シニアディレクター(左上)など、多くのプロ野球関係者が視線を送った。
巨人との交流試合に先発した原(営4・東洋大姫路)が、七回1死までパーフェクト、8回を失策による出塁1つに抑える好投を見せた。九回に初安打を許しノーヒットノーラン達成とはならなかったが、つめかけたプロ野球6球団12人のスカウトを驚かせた。
あわやの快投劇だった。九回先頭、代打で登場した昨年度ドラフト1位ルーキー・岡本和真に左前打を許し、この日初めて「H」のランプが灯った。「一生に一度あるかないかのことなので、うわーっと思った」と偉業達成を逃し思わず少し肩を落としたが、八回までの投球は見事だった。低めを丁寧に打たせて取り内野ゴロ16個、二軍とはいえプロの打者を手玉に取った。「今持っている自分の力を出せた。八回までは100点に近い」と振り返った。
力投の裏で、状態は万全ではなかった。前日午後、人生初の尿管結石を発症。自力では歩けないほどの痛みに襲われたが、急きょ病院で処方を受け「かえってリラックスして臨めた」とマウンドに上がった。
最速は144㌔、それも初回の先頭打者に一度だけ。決して調子が良いわけではなかったが、「今日は悪いと自分で分かっていて、力加減をコントロールして投げていた」と話す捕手・後藤田(営4・東洋大姫路)とともに辛抱強く攻め続けた。これには日本ハム岩舘スカウトも「プロでやるにはこういう投球が大事。結果も出てプラスになった」と評価した。
父・敏行さんが「暴投はほとんど見たことない」という原のコントロール。巨人山下スカウト部長が「今日は完璧。コントロールが良いからできるピッチング」と話せば、ヤクルト小川シニアディレクターも「右打者のインコースにシュートを投げ切れるのは大きな武器」と評価を上げている。
ずっと憧れてきたプロ野球の世界。リーグ戦中はチームの勝利を最優先に考え、その感情は封印する。それでも、昨夜体調を心配して連絡をくれた母に「明日はどうしても投げたい試合」と返すなど、いつの日もその思いは原の中で強く燃えている。「やっぱりプロは意識する。ノーヒットピッチングができたことは自信になった」。夢の実現へ向かって、原がまた一歩前進した。
■コメント
・高橋監督
3回くらいまで投げる予定が最後までいっちゃった。そりゃあ代えられませんよ。スピードがなくたって打たせて取る。今日のピッチングは最高。完全試合やりたかったなあ。
・井上コーチ
球威はなかったが、コントロールが良かった。調子が悪い中でどれだけ投げられるかが本質。心強いです。
・原(営4・東洋大姫路)
リラックスしていつも通り臨めた。大学生では空振りしてしまうシュートが、プロ相手にどれだけ通用するのか、課題を持って投げた。投球内容としては八回までは100点に近い。追い込んだのが1、2回くらいしかなかったので落ちるボールを試せなかったが、今持っている自分の力は出せた。
・後藤田(営4・東洋大姫路)
今日は悪いと自分で分かっていて、力加減をコントロールして投げていた。真っ直ぐが良いと、かえって力が入ってシュートが曲がらなくなることがある。今日は悪いなりにシュートの曲がりも大きかったので良かった。
・巨人・山下スカウト部長
左右に投げ分け、タイミングを外すセンスがある。もう少しスピードが上がれば十分即戦力になる。(今秋)上位でも指名される可能性はかなり高い。
・巨人・藤本スカウト
調整も順調にきている。シュート、球の質は良い。プロに入ってすぐ活躍するために、もうワンランク上の力強さが求められる。
・ヤクルト・小川シニアディレクター
今日初めて見たが、本当にいいピッチャー。技術、精神面ともにピッチャーとしての資質は非常に高いものを持っている。
・阪神・中尾スカウト
プロ相手に立派。担当している中では、3年から4年にかけて一番伸びた選手。昔は多かったが、今はシュートを投げられる投手が少ないので重宝される。
・日本ハム・岩舘スカウト
真っ直ぐが走っていないと自分でわかって、動かしていた。プロでやるにはこういうピッチングが大事。走ってないからといってなんとか走らせようとしてゲームを壊すようでは駄目。今日結果が出たことでプラスになったのでは。
・楽天・沖原スカウト
スライダーもシュートも左右にしっかりコントロールされている。うちで言えば青山(=浩二)のようなタイプ。球の切れもスピードも、1軍でも即戦力。上位指名もあるのでは。
TEXT/PHOTO=浜浦日向