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2023年明治安田生命J2リーグ第26節
7月16日(日) JITリサイクルインクスタジアム
ヴァンフォーレ甲府0ー3ザスパクサツ群馬
〈得点者〉
9分 天笠
62分 佐藤
90+6分 長倉
〈出場メンバー〉 (※数字は年齢、田頭は学部と学年、=後は前所属チーム)
▽GK
櫛引政敏(30=モンテディオ山形)
▽DF
天笠泰輝(23=関大)
城和隼颯(24=法大)
中塩大貴(26=横浜FC)
川上エドオジョン智慧(25=徳島ヴォルティス)→80分 田頭亮太(国4=東福岡)
▽MF
高橋勇利也(24=神大)
風間宏希(32=FC琉球)→80分 内田達也(31=東京ヴェルディ)
佐藤亮(25=ギラヴァンツ北九州)→62分 北川柊斗(28=モンテディオ山形)
山中惇希(22=AC長野パルセイロ)→87分 白石智之(30=カターレ富山)
▽FW
川本梨誉(22=清水エスパルス)→62分 平松宗(30=SC相模原)
長倉幹樹(23=東京ユナイテッドFC)
関東大学サッカーリーグ第11節の東海大戦でプレーする田頭
7月16日に行われたJ2リーグ第26節・ヴァンフォーレ甲府対ザスパクサツ群馬戦に、東洋大学在学中のDF田頭亮太(国4=東福岡) が25節の大宮戦に続き途中出場。 田頭は2点リードの80分に投入されると、大槻毅監督(50)からの「ドンドン前に出て行けよ」という指示を忠実に守り、アディショナルタイムには攻撃の起点になるシーンも。試合は90+6分に追加点を挙げた群馬が3-0で連勝を飾った。
群馬に現れた右サイドのニューカマーは「ピッチの神様」からのご褒美であるJリーグの舞台に再び足を踏み入れた。前節の大宮戦でJリーグ初出場を果たした田頭は、今節もベンチ入り。23節の徳島戦からチームに合流し、この試合を含めると4試合を群馬で過ごしたことになる。最初は「一から学ぶことも多い」と群馬のサッカーに適応する難しさを語っていたが、甲府戦後のインタビューでは「チームのやり方への慣れというのは段々できている」と少しずつスタイルに慣れてきていることを明かした。
群馬にとっては大宮戦からの連勝を狙い、確実に勝ち点3がほしい中でキックオフ。前半からいつものように、最終ラインを3枚に可変させ、ボールを保持する群馬に対して、甲府はピーターウタカ(39)を狙った積極的なパスや甲府の左サイドの須貝英大(24)、品田愛斗(23)、長谷川元希(24)を中心としたトライアングルを使いながら攻めてくる構図に。
拮抗(きっこう)した展開になるかと思いきや、早い時間に試合は動いた。9分に、川上のパスをバイタルエリアで受けた天笠が、豪快に左足を振りぬき先制。ゴール右上隅、GK泣かせのコースへの一撃だった。
強烈なインパクトの先制点から試合の主導権を握りたい群馬だったが、甲府も負けじと攻め返す。15分には、ウタカの一対一、19分には品田のFKからピンチを迎えるものの、前者はウタカのシュートミス、後者はGK櫛引のスーパーセーブで難を逃れた。その後も甲府の厚い攻撃を受けつつ、フィニッシュまで持ち込ませることなくいなし、前半終了。
リードしているとはいえ、相手は攻撃陣にタレントを多く擁する甲府。後半も群馬は追加点を狙いに行く。ボールを保持しようとする甲府に対して、長倉を中心としたスピーディーなカウンターで攻める。すると69分に待望の瞬間が。
中盤でボールを持った長倉が右サイドの佐藤にパスを通すと、佐藤はペナルティーエリア内に進入。甲府の厚い守備が立ちふさがるが、後ろにいた風間にボールを落とし、風間がミドルを放つ。このシュートの弾きを川上が回収すると、川上の後ろに回り込んでいた佐藤にヒールパス、これを佐藤がきっちりと左足で仕留め、2点目を挙げた。
前節と同じ2点差で迎えた終盤、遂に東洋大の右サイドを司る男が投入される。80分に川上と交代した田頭は、いつものようにお辞儀をしてピッチイン。中学時代から「ピッチの神様」に向けて行っているというルーティーンを行うと、早速、甲府の猛攻を受けている群馬守備陣の中へ。
92分、甲府の攻撃を防ぎきり、田頭にフリーでボールが渡ったシーンで、クリアを選択。しかし、群馬の選手からするとあのような場面では、後ろからつなぐプレーがセオリーであり、大槻監督からも「慣れだね」と試合後に声を掛けられたという。あのプレーはたった一瞬の出来事かもしれない。しかし、一つ一つのプレーにおいて、チームのスタイルに合わせていくことこそ、チームメートからの信頼にもつながっていくことだろう。
逆に同じアディショナルタイムには、田頭のヘディングでのつなぎからチャンスになる場面もあった。その場面については「僕がカットした時に甲府の選手は結構前がかりになっていたし、群馬の選手はかなり前に出て行っていた」と持ち前の視野の広さを生かした結果に。
最後は、90+6分に長倉の一撃も加わり、群馬が勝利。第8節の長崎戦、9節大宮戦以来の連勝となった。今節では、積極的な攻撃参加を見せた一方で、守備時の対応の部分でクリアせずに、つなぐプレーを選択するという課題も見つかった。それでも「ボールを回せる自信になる練習を積み重ねている」と課題の克服に努める努力家は、必ず次回の出場までに自らの課題を改善して見せるだろう。
東海大戦で大学のチームメート・小野田龍剛の得点を祝う田頭
J2で早くも2試合目の出場を果たしたことについて「大槻監督に感謝」と述べる。今回の出場時、大槻監督は攻守の指示の他にも、長所である「声を出せること」を生かして「積極的に指示を出していけ」と普段通りにプレーしやすい状況を作り出した。
田頭の話を聞いていると、群馬というチーム自体が新加入の選手にとって良い環境であるように感じる。最初の練習で上手く自分自身のプレーができない際には、キャプテンを務める元日本代表のレジェンド・細貝萌(37=バンコクユナイテッドFC/タイ)から「自信持ってやれよ」と言われたことで、遠慮せずにプレーできるようになったことも明かした。
特別指定選手は、いつも所属チームで練習できるわけではなく、メインでプレーするのは大学のリーグだ。常にチームにいられないのは、連係面などでマイナスになりがちだが、それを感じさせない位、馴染みやすいチームを田頭は選んだ。群馬の地で名プレーヤーになることで、自らの選択の正しさを証明する。
■コメント
田頭亮太(国4=東福岡)
(23節の徳島戦から4試合群馬で活動を行いましたが、チームの雰囲気には慣れましたか)
そうですね。周りの人もすごく優しいので、馴染みやすかったです。
(特に親しくなれた選手はいらっしゃいますか)
同期の川本梨誉選手とか山中惇希選手は仲が良いですし、年上でも一つ上の菊地健太選手(23=専大在学中)だったり岩元ルナ選手(22=関東学大在学中)はすごく優しくしてくれますし、後輩の中田湧大選手(20=FCティアモ枚方 )や小野関虎之介選手(19=高崎健康福祉大高崎)も仲がいいです。少し年が離れるのですが、佐藤亮選手とか山田晃士選手(24=早大)も自分に優しくしてくれて、非常にチームの輪に入りやすい雰囲気を作ってくれます。
(先日のインタビューで群馬の練習が革新的だったと述べていましたが、革新的な部分にも練習を通じて慣れてきましたか)
もう特別指定選手として発表されてから、合計したら1か月位は群馬の練習の方に参加させていただいているので、そういった意味では、チームのやり方への慣れというのは段々できてきている印象です。
(前半、甲府は左サイドで長谷川選手、須貝選手、品田選手のトライアングルを上手く使って攻めていました。普段、一対一では無く、あのように複数人で攻めてくる相手にはどのように対処しようと考えていますか)
DFが1で相手が3の状況だと完璧には守れないので、味方の選手を使って守ったり、危険な中、ゴールに近い方から埋めて、サイドに追いやる守備を意識しています。
(前半ベンチの中で出番が来たら、そのように守ろうと考えていましたか)
群馬の守備の仕方的にサイドハーフの人が頑張ってくれる守備をとっている。なので、縦の連係だったり、ボランチやCBとの連係を生かして守ろうと思っていました。
(群馬の攻めの際に、3CBに可変した後、右のサイドバックと一番右のCBとの間の長い距離のパスを甲府は狙っていた印象ですが、その対策は)
一つの狙いとしては、大外レーンで高い位置を取っている選手が、相手のサイドバックを前に出てこれないようにしたい、というのがあって。そうなると自分やエド君(川上選手)のところがフリーになりやすい。(プレスが来た時は)よく練習中にスプリントターンと言われるのですが、相手のプレッシャーの勢いを利用してボールを守りながら前を向いたり、逆に前を向くふりをして、後ろに向いて相手のプレッシャーの矢印を折ったりというのを意識していますね。
(全体的に群馬の選手はスプリントターン上手いですよね)
練習中からそこは意識付けされているのでみんな上手いのかなと思います。
(田頭選手投入後のマッチアップの選手は長谷川選手でしたか)
そうですね。それか6番の小林岩魚選手(26)。
(対戦してみて抱いた感想を教えてください)
長谷川元希選手は、みんな知っているような選手で上手さもありますし、THEテクニシャンみたいな選手で、小林選手は左利きかつ、点を取らなければいけない状況で投入されたので、縦狙いなのが良く分かりました。なので、自分としては守りやすかったですね。
(相手の攻めたい方向は大体分かるもの)
自分は右サイドバックなんですけど、自分の対峙(たいじ)している選手が左利きだと、得意な足に持っていきたいと思っているので分かりやすい。ですが、右利きとなると、三笘選手などもそうですが、縦に行けたり中に行けたりというのがある。ですので、右利きの選手だと中を切りながら縦に追い込むイメージで。左利きの選手が来たら縦を切ってというイメージでプレーしています。
(今節では細貝萌選手がベンチ入りしました。やはりチームの士気も上がりましたか)
はじさん(細貝選手)がいるだけでチームが締まりますし、いろいろな経験をされているからこそできるアドバイスというのも一人一人にしてくれますし。あの人から言われる言葉だけでも自信になるというか。世界でもプレーしてきている人。その人から言われる言葉には説得力があります。
(これまで細貝選手に貰った中で一番心に残っているアドバイスはありますか)
自分が最初、特別指定選手として発表後に初めて練習に合流した際には、ちょっと遠慮しがちだった。でもはじさんに「自信持ってやれよ」と言われてから一人のチームメートとして見てもらえているんだなと思って。そこからは自信を持ってプレーできました。
(前回のインタビューでサイドバックがトップ下の位置でプレーする話をしていましたが、今節も川上選手がトップ下の位置でプレーする場面がありました。動きを見て学ぶこともありましたか)
そうですね。僕は本当に一から学ぶことだらけなので、人のいいプレーを見て、盗めるものがあったら盗んで。その中でも自分の特長を生かしてというのは意識しています。
(試合に投入される前の大槻監督の指示はどのようなものでしたか)
まずは、守備では絶対にやらせないということ。後は攻撃の部分ですかね、「ドンドン前に出て行けよ」というのと、大槻さんは自分が声を出せる選手というのを良く分かってくれているので、「しっかり声を出して指示を出していけ」とも言ってもらいました。
(実際に関東大学サッカーリーグでも指示を出すシーンは目立つ)
そうですね。僕は結構言えるタイプなので。そこは言っていった方が、チームとして良くなるかなというのはあります。
(群馬の練習でもよく声は出していますか)
はい。最初は言い方が悪くて、口が悪いと言われたこともありますが、段々一員として見てもらって。今は普通に自分の要求もみんなに聞いてもらっている感じです。
(そのような事があると認めてもらえていると実感しますよね)
本当に大槻監督に感謝なのですが、合流してすぐにメンバー入り、さらにはデビューさせてもらえたのが一番大きかったかなと思っていて。試合に絡んでないのに偉そうなことを言っていたら聞く耳を持ってもらえないと思う。でも、メンバー入りや試合の出場を通して、少しみんなからの見られ方も変わっていったのかなと思います。
(交代の際お辞儀をしていましたが、あれはルーティーンですか)
これは高校の時からですね。いや、中学の時もちょいちょいやってたかな。やっぱりピッチには神様がいるというのがあると思う。しっかりお辞儀してから入るというのはやっています。
(早くもプロで2試合出場できているのは神様からのご褒美かもしれませんね)
ご褒美(笑)。こんな早い段階で使ってもらえているのは、運もありますしご褒美ですね。
(先ほど、サイドハーフの選手がメインで守備をするとおっしゃいましたが、同サイドの北川選手との守備時の連係も良くなってきていますか)
自分ができないことをカバーしてくれて、ちゃんと指示として後から伝えてくれる。自分としては本当にプレーしやすいです。
(アディショナルタイムに甲府がボールを持ち、群馬が自軍ゴール前に密集している場面がありました、あの様な時は、ボールを外に出す(クリアする)という方針ですか)
本当に危険な時はボールをクリアしますが、群馬は結構後ろから怖がらずにパスをつなぐチーム。一本自分がクリアしちゃったシーンは、群馬の選手からしたらつなげるでしょというシーンだった。大槻さんからも「慣れだね」と言われたので、そこは自分が慣れていくしかないなと思います。
(あのような場面でつなぐのは怖さもありますよね)
取られたらピンチになってしまうので。プレッシャーがかかりますが、そこでもボールを回せる自信になる練習を積み重ねているので、僕がやらないといけないです。
(同じアディショナルタイム、田頭選手のヘディングからカウンターにつながりましたが、大槻監督の攻めに関する指示を意識したプレーでしたか)
僕がカットした時に甲府の選手は結構前がかりになっていた。あのシーンを見てもらえれば分かると思うのですが、群馬の選手はかなり前に出て行っていた。最後まで走り勝てるのが群馬の良さだと思いますし、そこは監督の指示通り、僕が前に出てチャンスを作ることを意識しました。
(最後に、2試合Jで試合をして、この間大学リーグの東海大戦でプレーをしました。違いは感じましたか)
違いはいっぱいありますが、あの大舞台を経験できたからこそ付いた自信が自分の中にはあると思っていて。甲府は結構プレッシャーが早いチーム。それよりはプレッシャーは遅かったと思います。でも大学サッカーの守備の方が走り続ける守備が多い。プロは要所、要所守備をすると思うのですが、大学サッカーは90分走り続ける守備を求められるわけで、そこの守備の仕方の違いはありました。
TEXT/PHOTO=髙橋生沙矢