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2015.09.06
硬式野球

[硬式野球]新たなグラブとともに 原、重圧乗り越え完封で秋1勝

平成27年度東都大学野球秋季2部リーグ戦・国士大1回戦

9月5日(土)東洋大グラウンド

東洋大3-0国士大

(イニングスコア)

1回戦

東洋大

国士大

(東洋大)

○原(1勝)―後藤田



打順                     

守備

名前

(遊)

阿部(営3・帝京)

(中)

安西(営3・聖光学院)

(二)

林(営4・桐生一)

(左右)

笹川(営3・浦和学院)


木村(営4・愛工大名電)

(指)

中川(法1・PL学園)

(一)

鳥居(営3・愛工大名電)

(右)

小笠原(営4・大社)


大川(営4・PL学園)


上島(営3・佐久長聖)


竹原(法1・二松学舎附)

(三)

冨澤(営4・愛工大名電)

(捕)

後藤田(東洋大姫路)






名前

○原

34


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右足をつりながら力投をみせた原。


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六回最大のピンチを切り抜け雄たけびを上げた。


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今秋より使用する新たなグラブ。中には〝負けて勝つ〟というメッセージが刺繍されている。



 秋季リーグ戦が開幕。先発・原が9回4安打完封勝利で白星スタートを飾った。途中足がつるアクシデントにも見舞われたが、エースとして抜群の安定感は秋も健在だった。


 絶対に本塁は踏ませない。気迫で勝っていた。この日最大のピンチは1点リードの六回1死一、三塁。第1打席で左翼へ大飛球を放っている4番打者を迎えた場面。「今日は勝ったら100点、負けたら0点と思って。自分のことはどうでもええから、東洋大のチームみんなのために投げた」。自信のあるシュートでするどく内角を突き、「狙い通り」の遊飛に仕留め大きく両手をたたいた。後続も打ち取り無失点。「点を取られないってところがエース、立派です」と高橋監督もたたえた。

 アクシデントにも打ち勝った。相手先発・椎野は身長194㎝の長身右腕。掘れたマウンドが原の歩幅に全く合わず、普段は6足半の歩幅を7足以上に広げざるを得なかった。その影響で、より強くプレートを蹴る力が必要となった右足が悲鳴を上げた。三回からふくらはぎがつり始めると、六回からは太ももとふくらはぎが両方つった状態に。「さすがにやばいと思った」という極限状態、それでも133球を投げ切り完封勝利。開幕前から掲げる「苦しい中で粘っていくピッチング」を体現した。

 1人の大学生が背負うには、大きな重圧だった。ただでさえプレッシャーのかかる4度目の開幕投手という大役。加えて、春に残した圧倒的な成績が注目に拍車をかけた。今秋ドラフト会議を前に、バックネット裏には過去最高の9球団ものスカウトが集結した。春の快投を知るホームの観客の大多数は、原でまず1勝を計算しただろう。誰もが原の好投を期待していた。高まる周囲の期待に、緊張もあったという昨夜は「あのバッターはどう攻めようとか考えていたらその時間になっていた」と、深夜1時頃まで眠りにつけなかった。

 そんな原の支えとなるのが、この秋から使用する新たなグラブ。7月19日に22歳の誕生日を迎えた原に、「ずっと親友みたいな感じ」という中学時代のチームメイトが贈ったものだった。いつの日もエースとしてチームの期待を一身に背負って投げる原に、周囲が掛ける言葉は決まって「頑張れ」「頼むぞ」。だが、その親友は違った。苦労がわかっているからこそ「いいよ、お前は頑張らんで」。その言葉は大きな重圧と戦う今も、心に響く。親友であり最大の理解者だった。形もデザインも全て任せたというニューアイテム。「(感触は)良いですね。ちゃんと東洋カラーで」。好みもしっかりつかんでいた。

 新たな武器に一番近くで支えられ、見事開幕白星発進だ。「スタートとしては上出来。内容よりも結果が出て、ほっとしている。状態は良いのでこのままいきたい」。大学生活最後の秋、エース・原が走り出した。



■コメント

・高橋監督

前半は打てなくて苦しんだ。相手は角度もあって、ボールも散らばっていて良かった。原はもっと間を使ってセカンドゴロやショートゴロを打たせられれば良かったけど、今日は少なかった。でも完封だからね、点を取られないってところがエース、立派ですよ。

優勝するためには、もっといい野球をやらないと。勝つときはみんながやることをきちっとやる。まだ甘い。強いなあって相手が思うようなチームにならないと。


・原(営4・東洋大姫路)

試合前から勝ったら100点、負けたら0点と思っていた。緊張はあったし、頑張らないといけないって思いと、リーグ戦始まるのかというちょっとワクワクした思いがあった。でも、試合になったらチームが勝つことだけを考える。開幕戦はけっこう足をつる。春もそうだった。やはり練習試合と公式戦では気合が違うので。とにかく勝ててほっとしている。スタートとしては上出来。内容よりも結果が出て良かった。状態は良いのでこのままいきたい


・中日・中田スカウト部長

良いシュートを持っている。意図的にシュートを多めに投げて打たせて取っていた。外の真っ直ぐで軽くストライクが取れればもっと楽になる。ただ、それは上にいってからで十分。今日はどれだけカットされても粘り強く向かっていく、どんどん右打者の懐に攻めていく、ピッチャーとして一番大事な姿勢が見られた。


・楽天・長島スカウト部長

ピッチャーとしての資質は十分。プロの1軍で投げるイメージを持てるピッチャー。自滅するタイプではないので大崩れしない。上の方(の順位)で指名されるだけの能力は十分ある。


TEXT=浜浦日向 PHOTO=伊藤拓巳