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2023.10.21
サッカー

[男子サッカー] 「僕たちは本当に勝つしかない状況」東海大にドローで足踏みも共通認識のインカレ出場へ 絶対に勝たなければいけない5連戦が始まる

第97回関東大学サッカーリーグ戦1部第17節

10月14日(土) 東洋大学朝霞キャンパスサッカー場 


東洋大2-2東海大


〈得点者〉(アシスト) 

7分 田頭

43分 高橋輝(中山)


〈出場メンバー〉

▽GK

川上康平(国4=JFAアカデミー)


▽DF

田頭亮太(国4=東福岡) 

稲村隼翔(国3=前橋育英)

徳永祟人(国2=前橋育英) 

山之内佑成(国2=JFAアカデミー)


▽MF

高橋輝 (国1=大宮U18)

中山昂大  (国3=大宮U18)

清水祐輔(国4=柏U-18) →83分 山岸楓樹 (国4=前橋育英)  

増田鈴太郎(国3=東海大相模)→66分 湯之前匡央(国2=柏U-18)


▽FW

小野田龍剛(国4=常葉大橘)→78分  渡井翔琉(国3=千葉U-18)

梅津凜太郎 (国3=鹿島Y)→74分  町田悠(国3=三菱養和SC・Y) 


得点を意識していた中での今季初Gに喜び爆発の田頭


先制点時自らの放ったシュートの行方を見守る高橋輝(左)


関東大学サッカーリーグ第17節(以下、リーグ戦)の相手は、7月に4試合ぶりの白星(〇2-1)を挙げた、相性の良さを感じさせる東海大。試合は7分に田頭のゴールで幸先よく先制し、43分には高橋輝がゴールを見ずに振り抜くゴラッソで2点差にする。しかし、後半は「東海さんのサッカーに合わせてしまった」と田頭も振り返ったように東海大の得意な展開に持ち込まれたことで2失点。インカレ出場に向け、何が何でも勝ち点3がほしい中で悔しいドローとなった。


 リーグ戦の終了まで残り6試合となった中で迎えた今節。6位までが出場できるインカレだが、現在6位の東洋大にとって7位以下の大学の突き上げも気になるところ。安全圏の5位以上に入る為にも勝ち点3がほしい中でのキックオフ。筑波大戦の終盤のような、自分たちの得意とするポゼッションサッカーを展開することに成功した東洋大は、序盤に試合を動かす。7分、ゴール前の競り合いのこぼれ球が、フリーで走りこんでいた田頭の下へ。「吹かさないように低い球を狙った」と低弾道で伸びていくようなシュートは、ゴール左下隅に突き刺さった。群馬では必ずシュートを低く打つように言われているという。その理由として「浮かすとノーチャンス。キーパーを寝かした方がセカンドチャンスもある」と群馬の大槻毅監督(50)から伝えられたことを明かした。特別指定選手として出場したJ2リーグ第35節のいわき戦後に、得点への意識が高まったことを挙げていた田頭。その経験が確実にリーグ戦にも現れだしている。この先制点で勢いに乗った東洋大は、前半終了間際にも期待の1年生が魅せた。43分、中山とのパス交換でゴール前に進入した高橋輝は、相手DFを切り返して右足一閃。ゴールを突き破るかのようなゴラッソだった。シュート時にはゴールを見ないで放った一撃。「狙いすぎて、力んだりしちゃうと逆効果」と自らの得意とするエリアでの感覚を信じた。今回の場合はカットインではないものの、サッカー界の名選手にはそれぞれ得意なゾーンが存在する。元イタリア代表FWのアレッサンドロ・デル・ピエロ(48)の代名詞「デル・ピエロゾーン」の如く「輝ゾーン」誕生となるか。今後に注目だ。


 前半の立ち上がりと終了間際という、相手からしてみれば最も嫌な時間帯に得点を奪うことに成功した東洋大。それでもハーフタイムに「2-0は怖い点差」という話がでたという。まさにそれを体現するような試合展開となった。後半開始後、東海大は、ロングボールを前線やミドルゾーンに積極的に配給。田頭が「蹴って、競らされてボールを取られて」と振り返るように、東海大の得意とするロングボール主体のサッカーで試合を支配されてしまう。そんな状況下でも、最終ラインは何とか持ちこたえる。しかし、その守りも長くは続かない。71分に右サイドで縦パスを通されると、シュートに持ち込まれ失点。まだ20分弱残り時間がある中で、嫌なムードが流れ始める。そこで井上監督はFWの町田を投入。「攻めることで守る時間帯を少なくする」ことと「相手の持っているボールに対してプレッシャーをかける」という2つの意図を持ってフレッシュな選手を投入し、現状の打開を試みた。アディショナルタイムには、その町田を含めたチーム全員が、ゴールライン際でボールをキープし1点を守り切ることを共有。しかし、笛が鳴るまで後少しというところで、残酷な結末が。90+2分、左サイドからのクロスに直接頭で合わせられて同点に。東洋大イレブンは目の前で起こる現実に、膝から崩れ落ちた。残り3分で再度突き放しを狙ったが、ゴールは遠く、2-2のドロー決着となった。


 「全勝を狙う」と話してくれた選手が多かった中でのこの引き分けは選手たちの中ではかなり悔しさの残る結果。それでも田頭は「僕たちは本当に勝つしかない状況」と決して俯かない。残り5戦の相手の中には、リーグ戦2位の流経大がいるが、そこにも勝ち点3をつかむことで、目標の「インカレ優勝」が近づく。そして「前進」する為に目指すのは、井上監督の挙げた「自分たちの得点を下回る守備」。ここからは絶対に負けられない、いや勝たなければならない戦いが始まる。


■コメント  

・井上監督

前半は本当に素晴らしい45分間だったと思います。得点を取った時間帯も立ち上がりと終了間際と。それだけじゃなくてその間も、内容的にある程度自分たちがやろうとしていたことが出せた良い45分間。それに比べて後半相手はもう追いかけるしかないという状況の中で、攻めてくるのは分かっていながらそれを受けてしまって。最後まで弾き返せればよかったんですけど、最後の最後に追いつかれてしまうというところ。選手たちにも言ったのは、2-0の中で最終的に勝ち点1しか取れなかったのは、采配も含めて監督の責任かなという話をして。彼らが手を抜いていたかというとそういうことはないと思うんですが、相手の攻撃を受けてしまった。弾き返せなかったというところは認めざるを得ないかなと思います。違う戦い方を選択というのもそうだろうし、相手の攻撃を受けるだけではなくて、自分たちも攻撃する時間をもう少し作れなかっただろうかと。同点に追いつかれてから、少しの時間帯は前にというのが出ましたけども、それが2対1の時間帯でももう少しできれば良かったかなというのはありますね。前節の筑波大戦も勝ち点1しか取れなかった。今日も何とかクリーンシートで終わりたいなという話をした中での後半の2失点。そこは悔やまれるところですかね。

(山之内選手の強度の激しさは筑波大戦から増してきていますね)

ある程度狙いを持って取りに行けているのかなとは思いますが、残念ながら1失点目のところに関わっているので、全てが良かったわけではないですけど。でも、彼の特長の攻撃の部分は出せているので、けれども後半それの回数が少なかったかなというのはありますね。

(増田選手は久しぶりの先発出場となりました。右サイドの走力のある二人が目立ちましたが、そこはストロングポイントですか)

前半はそれを上手く使えていたかなと思いますね。前半は相手が3バックと見るか5バックと見るかは見方次第かなと思うんですが、サイドで一対一を積極的に仕掛けていこうと。そこはやってくれましたけれども、後半相手は割り切って自分の背中を取られても、自分の方が前に出てくるという右サイドのウィングバックの仕事をされた時に、後ろに戻されるアクションが多かったかなと。そこで相手を引き連れてもう一回出ていけるだけのものをもう少し出せたのではないかなと思います。

(田頭選手と高橋輝選手の躍動した右サイドも輝いていた。新井選手がいない中でも両サイドに武器があるのは、これからの東洋を考えても力になる)

今日は対戦相手の守り方とか攻め方にも、両サイドバックが攻撃の起点になって、相手を前に引き出した上で、両サイドのウィングのポジションの二人を使えるように、ということはトレーニングの中でやってきたことなので。それは前半すごく良い形で出せて、得点というところまでもつなげられたのですが。やっぱり残りの20分位ですかね。

(1失点目後の交代シーン。FWの町田選手を投入したのは、守りに行くのではなく攻めに行くというメッセージか)

そうですね。梅津も前線から、特に相手の背中に飛び出すアクションと守備のところでのハードワークも、体力的に持つ間は非常に献身的にやってくれたなと。でも、ちょっと落ちてきたなというのもあったので、フレッシュな選手を入れて。町田は飛び出すこともできるし、相手を背負っても、相手を抑えてボールを収めてくれるので。相手を下げるという攻撃ができていない時間帯でもあったので、攻めることで守る時間帯を少なくするという意図もそうですし。相手の持っているボールに対してプレッシャーをかける圧力も、フレッシュな選手を入れて高めようという狙いはありました。

(交代した選手も含めてチーム全員で最後はピッチサイドでボールをキープするという意識が共有されていたのは良いことではないか)

ちょっと時間が早かったかなとは思いますけど、残り5分をどうやって時間を使おうかと。それを積極的な戦術と見るか、それとも消極的な攻めないでボールを持つだけと見るか。それは見方によると思いますが、それをやれという指示では無くて、ピッチの中で彼らが判断したことなので、それはそれで彼らの判断に任せたいなと思っていました。

(次節の拓大戦に向けて)

リーグ戦後半になってきて、残り5試合。その中で今日の試合の前にも言ったのですが「我々は前のチームを追いかけていくという状況で、ちょっとでも追いついて、追い越して、ということをしないと自分たちが目指している一番上とか、インカレの出場権というところにまだたどり着けないよね」ということで残りをそこに一生懸命にやりましょうということなので。拓大もどうしても勝ち点がほしいチームだと思うので。そう簡単な試合にはならないと思いますが、我々も失点するゲームが続いているので、今日久しぶりに複数得点取れたのは良かったんですけど。失点のところをもう少し、0で抑えられれば一番良いんですけど。自分たちの得点を下回る守備にはしたいなと思っています。


・田頭亮太(国4=東福岡) 

前半は結構自分たちのいいペースで時間を進められて、先に点も取って、追加点も取ることができた。その得点自体もいい時間帯に重ねることができて。本当に良い45分だったなという印象だったんですけど、後半の入り方、自分たちのサッカーができなくて、東海さんのサッカーに合わせてしまった部分があって。東海さんとしては競り合いの部分だったりで、弾ければ自分たちのリズムになってくるというチームだと思うので。自分たちでペースを手放して、最終的に追いつかれてしまったのかなと思いました。

(実際に東海大にペースを握られ出したのは、失点後ではなく後半開始直後)

ゲームの入りは基本的にシンプルなプレーを選択するというのは、どのチームもやっていることだと思うんですけど、それをずっとやり続けてしまったというか。自分たちの良さは、流動的に動いて下でパスをつないで行くというのがある中で、後半45分通してずっと蹴って、競らせられてボールを取られて。相手の良い形に持っていかれる、守備の時間帯が多かったなという印象で。なので、後半に入って自分たちのペースに持っていけなかったのは、自分たちの未熟な部分でもありますし。東海さんのペースになったのは、後半の入りから、やっぱり相手は失うものがないので。

(高橋輝選手が前半終了後の2-0は怖いスコアという話を意識しすぎたとおっしゃっていましたが、そこは意識していましたか)

僕も後半入る前の円陣のところで「2-0は一番危ないから」というところはみんなに言ってあって。本当に2-0って1点取られれば、相手が勢いに乗ってしまうというのもあるし、逆に自分らが1点取れれば仕留めきれるというのがあったので、本当に2-0は危ないスコアだなと思いました。

(全勝を狙っていく中でのこの引き分け。悔しさは大きい)

そうですね。上との差が開いてしまったので。自分らが目標としている、シーズン当初はリーグ戦優勝、今現実的に考えると優勝というのは少し厳しいのかなというのがあって。何がなんでもインカレは出場しようという共通認識がある中で、そこに向けてのことを考えると、少し今日の引き分けは痛いなと。

(高橋輝選手とのコンビネーションでは今日首を振る場面も見られた)

でも、基本的に輝は縦に仕掛けられる選手なので。僕は輝のストロングを出すために、動いてあげるのがベストだと思っていて。輝にボールが入った時に自分がインナーラップで抜けていくことで、輝のカットインが空くし、逆に相手を連れて行かずに、相手のCBがカバーに入り切れていなかったら、輝に一対一を仕掛けさせて、とやっていたので。試合を通してコミュニケーションが悪かったなとは思っていないんですけど、数回ちょっとお互いのイメージが共有できていない部分があったので、そこはもっとすり合わせていかないといけないなと思います。

(1点目の得点のシーン。群馬の話をしてくださった際に「得点への意識が高まっている」と話してくれました。それが現れた1点)

そうですね。群馬に行くと高い位置を取れるので、よりゴールに絡めるプレーも増えてきてて。群馬の中でシュートは絶対に低いというのは決まり事であって。浮かすとノーチャンス。キーパーを寝かした方がセカンドチャンスもあるし、というのは大槻さんからずっと言われてて。今日流れてきた時はそれを意識して、吹かさないように低い球を狙ったら、いい感じに入ったという感じでした。

(井上監督は選手に考えさせることを大事にしているという話をよく聞きますが、田頭選手は井上監督に「考えさせられたな」と感じるエピソードはありますか)

卓さんは正解を言うというよりかは、ヒントを与えて考えさせるタイプだと思っていて。僕もポジション取りのところなんかは「ここを取れ」じゃなくて「ここを取ってみたら?」とか「ここにしてみると良いよ」という言われ方をして。そのような言われ方をすると自分の中で「ここをなんで取るんだろう」と考えたりもする。そこをいざ取ってみると、相手が出てきたり、出てこないで自分がフリーになったりという、ある意味成功体験をすると自分の中でも一つ選択肢が増える。そう言った意味では本当に卓さんは全部が全部決めごとじゃなくて、選手に選択肢を与えてくれる感じなので。本当に良い監督だと思います。

(拓大戦に向けて)

僕たちは本当に勝つしかない状況なので。ここから5連勝して勝ち点15を積むことだけを意識して頑張ります。


・高橋輝 (国1=大宮U18)

前半早い時間帯と終了間際に、良い時間帯で2点取ることができて、自分たちのペースで進めたんですけど。ハーフタイムに「2-0は危ない」という話が出て。それ(を意識しすぎたこと)が逆に自分たちがやりずらくなっちゃったのかなと。2-0でリードしていたので、もうちょっとポジティブに行けたかなと思っていて。後半1点取られて、雰囲気が相手の押せ押せムードになっちゃったので、本当に勝ちたい試合だったんですけど、引き分けに終わってしまってすごいもったいなかったなと思います。

(流経大戦を思い出すような展開だったが、頭でよぎったのはあるか)

試合中はそんなに流経大戦のことは考えていなかったんですけど、点差的に2-0はサッカーでは危ないと言われているので。2-0に縛られちゃったかなというのがありました。

(2-0だからガンガン攻めていこうという思考の方があっている)

ガンガン行こうというよりも、リスク管理はしっかりして。やっぱり2-0から次の1点どっちが取るかというのは、すごい大事なので。3点目を取りにいくだったり、しっかり0で抑えることを共有して。1点取られても2-1でリードはしている。なので、もっと余裕を持ってできたのかなと思います。

(得点シーンでは、切り返してサイドから見事なシュートを放ちました。どのようなイメージを描いていましたか)

亮太君(田頭)からボールを受けて、仕掛けようと思ったんですけど、縦を塞がれているなと。顔を上げたら間のところに昂大君(中山)がいたので、そこに付けて潜って行って。最初は付けて落としてもらって左足で打とうと思っていたんですけど、ちょっとずれちゃったので。でも、結果的に自分のところにこぼれてきて、ゴールは見ずに感覚で思いっきり。ミートを心がけて打ったらいいコースに行ったので良かったです。

(狙いすぎも良くない)

狙いすぎて、力んだりしちゃうと逆効果だと思って。あの時は無心で打てましたね。

(練習でもあのようなシーンではミートを意識している)

そうですね。ミートを意識して。あとはコースもキーパーが取れないところに。

(あそこ(右サイド45度)のゾーンは得意ですか)

右サイドで最近出ることが多いので、一つ自分の形にはしたいなと思っている。自分は右利きなので、右ででるとああいう感じの、ゴールを見ずにシュートだったり、体勢が悪くてもシュートだったりが打てると思うので。一つ自分の形にはなってきているのかなと思いますね。

(理不尽なシュートが打てる選手は相手にとっても怖い)

キーパーとか、タイミングを取る前に(シュートを)打つと絶対に取れないと思うので。理不尽なシュートも意識して。しっかり落ち着いても決めたいし。決定力の部分は上げていきたいなと思います。

(試合の終盤、全員がボールをキープする姿勢を見せましたが、話し合いはせずに全員がやることを共有していた形)

時間帯も時間帯だったし、リードしている状態で終盤だったので、角っこのコーナー付近でキープというのは、ピッチ内で共有をしっかりしてやっていました。

(アディショナル長かったですよね)

思ったより長かったですね。正直アディショナルタイムの表示も見れなかったので、いつ終わるのかなと。本当に最後の失点だけが悔やまれる試合でした。

(そこまでの進め方は理想形)

前半の進め方は理想に近い形で進められて。後半の早い時間で3点目を取れればベストだったなとは思うんですけど。そこで取るか取らないかという部分が、負けては無いんですけど、今日の明暗を分けたかなと。

(前の拓大戦は打ち合いだった。また同じ形になった際には高橋選手のようなゴールが大事になってくる。自分が点をまた取ってやろうという意識は)自分はアタッカーの選手なので結果を残さないといけないし。別に打ち合いしようとは思っていないので、しっかり0で抑えて。守備のところも欠かさずに無失点で、1点を決めて勝てればいいなと思います。


TEXT/PHOTO=髙橋生沙矢