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2023.10.19
サッカー

[男子サッカー] 「人は責任を持って成功体験をすることで初めて成長する」大槻監督の金言を胸にプレーした田頭がいわき戦で初のフル出場&山口戦でJリーグ4試合目の出場!

2023年明治安田生命J2リーグ第35節

9月17日(日) 正田醤油スタジアム群馬


ザスパクサツ群馬1ー0いわきFC


〈得点者〉

30分 中塩


〈出場メンバー〉 (※数字は年齢、田頭は学部と学年、=後は前所属チーム) 

▽GK

櫛引政敏(30=モンテディオ山形)


▽DF

城和隼颯(25=法大)

酒井崇一(27=ロアッソ熊本)

中塩大貴(26=横浜FC)

田頭亮太(国4=東福岡)


▽MF

杉本竜士(30=東京ヴェルディ)→62分 白石智之(30=カターレ富山)

風間宏希(32=FC琉球)→73分 内田達也(31=東京ヴェルディ)

天笠泰輝(23=関大)

佐藤亮(25=ギラヴァンツ北九州)→62分 北川柊斗(28=モンテディオ山形) 


▽FW

川本梨誉(22=清水エスパルス)→73分 武颯(28=ブラウブリッツ秋田)

平松宗(30=SC相模原)→83分 畑尾大翔 (33=大宮アルディージャ)


田頭はいわき戦で初のJリーグフル出場を果たした


9月17日に行われたJ2リーグ第35節・いわきFC戦と9月23日に行われた第36節・レノファ山口戦に、東洋大学在学中のDF田頭亮太(国4=東福岡)がいわき戦はフル、山口戦は途中出場を果たした。いわき戦で初の先発出場となった田頭は、大槻監督に「人は責任を持って成功体験をすることで初めて成長する」。杉本には「20分経てば慣れるよ」との言葉をもらい強度の高いプロの舞台で90分間奮闘。マッチアップの永井颯太(24)や加藤悠馬(21)を抑え込み、クリーンシートでの勝利に貢献した。


 Jの舞台で初の先発という大役を成功させた田頭は「群馬の男」としての階段をまた一つ上って見せた。群馬への合流前に関東大学サッカーリーグ(以下、大学リーグ)が中断期間に入っていたこと。そして群馬合流後にも試合に絡むことができていなかったことで、前日に正式な先発出場が決まった際には「大丈夫かな」と一抹の不安も。そんな田頭に力を与えたのは、熱い群馬サポーターの声援。「もうやってやろうという気持ちになりました」と完全に吹っ切れた。


 気合十分の田頭は、早速守備で見せ場を作る。15分、この試合でのマッチアップ相手となったいわきの永井が、シザースでタイミングをずらし、クロスを上げる体勢に。このピンチを群馬の右サイドの門番は、クリーンにボールを刈り取るタックルで阻止。本人が試合前に気にしていたという「試合勘」の問題を感じさせないプレーで流れ良く試合に入ることに成功する。


 その後も、いわきが永井にボールを入れるたびに体を投げ出し続け、相手に自由を与えない。特にワンツー対応での安定感が目立ったが、それには過去の失敗から取り入れた技があった。東福岡高校時代の試合でのワンツー対応の際に、ワンツーの最初のパスが出された時、折り返しのパスを貰う選手(いわき戦でいえば永井)ではなく、出されたボールを見てしまい、何回もワンツーを成功させられてしまった試合があったという。それから田頭は「パスを出されても目の前の敵をしっかりと見ること」を頭に入れてプレーし、それがいわき戦での安定した対応につながった。


 若手の躍動に呼応し、群馬もアクセルをかける。30分、佐藤のCKが相手ゴール前でこぼれ、ワンバウンド。そこで、すかさず中塩が左足を振り抜き、ゴール左隅を射抜くゴラッソで先制。「ゲームの流れと変わらない位、緻密に作戦は練られている」と田頭も明かしたストロングポイントであるセットプレーで先手を取る。


 得点後もボールを握り、自らの得意な形でゲームを進める群馬。前半も終わるかというところでこんな指示が飛ぶ。「田頭!もう2つ右!」。あの意味を指示を出された本人に尋ねると「竜士君を落として5バックにするのは一つの決まりごととしてあって。でも僕と酒井選手との連係があまり取れてなくて、佐藤選手を降ろしてしまい、一時的に6枚になってしまうシーンが何回かあった。それだと意味がなくなってしまうよねということで、もう少しサイドに出してこいという指示はありました」と明かした。そこから田頭も永井に積極的に付き、佐藤が最終ラインに吸収されてしまわないようにプレー。的確な指示の下無失点で前半を終える。


 前半終了後、大槻監督から先ほどの佐藤との連係面の確認に加えて「もっとやれ、攻撃でも自分を出していけ」との言葉をもらった田頭は「クロスに僕が入っていくことによって、大外が空く」という狙いと「点も取りたかった」との思いで、攻撃にも顔を出す。後半開始後、味方が逆サイドからクロスを上げる際には、大体の場面で内側に入り込んでいた。群馬に加入後は、右サイドバックながらも「大外を取る時はウィングになりますし、中を取る時はトップ下を取りますし」と高い位置にいることも多い。それにより得点も以前より強く意識するようになった。


 攻撃にも加わり始めた事により運動量は増えたが、守備もおざなりにはしない。永井が交代したことで、対人の相手が同学年かつ、拓大の特別指定選手である、加藤悠馬に代わった。果敢にドリブル突破をしてきた永井とは違い、少しボールをずらして中にドンドンクロスを放り込んでくる加藤。さらにいわきは逆サイドからもロングボールを入れてきたが「一番は自分が触って弾くこと。それが無理だったら、相手に触らせない。仮に相手に触られても、体をくっつけて自由には打たせない」との意識の下で守備を徹底する。


 アディショナルタイムには、それまでクロスを浅い位置から入れていた加藤が、ドリブルから切れ込みクロスを上げようとする。しかし、自分の間合いに相手が入れば田頭は負けない。最後まで食らいつき、クロスを阻止。「悠馬がドリブルしてきてくれたおかげで、徐々に間合いが詰まったので守れた」と語り、終盤疲れはあったと明かしたものの、最後まで自分の仕事を全うした。


 プロの舞台という、大学リーグとはまた一段階違う強度が求められる世界で、90分タスクをこなした田頭。しかも相手は、強度の面で「J2でもトップクラス」と本人も振り返るいわきだ。「第一にまずあの日はきつかった」との感想通り、試合勘の無い中で守備に攻撃に奔走した疲労はかなりのものだろう。それでも「楽しかったし、自分の中でも大きな財産になりました」と充実感を見せる。


 「人は責任を持って成功体験をすることで初めて成長する」これは試合前に田頭が大槻監督からかけられた言葉だ。金言を胸に刻み、チームに貢献した田頭。9月17日は彼にとって忘れられない大切な一日になるのかもしれない。


・田頭亮太(国4=東福岡)

(いわき戦で自身初のスタメン出場を果たしました。選ばれた際の心境を教えてください)

まずは素直にうれしいという気持ちもありましたが、前日位までは、大丈夫かなという気持ちが強くて。アップが始まった時にも大槻さんに声を掛けてもらいましたし、みんなにも声を掛けてもらったので、一番はやってやろうという気持ちでした。

(先発を告げられたのは前日)

その週の練習で大体は分かるんですけど、正式に分かったのは前日でした。

(その時はまだ心配の気持ちの方が強かったですか)

そうですね。本当に大丈夫かなという気持ちがあって。特別指定選手で、なかなか練習にも来れてないですし、その前もあんまり試合に絡んでいなかったし。練習試合もあまり無かったので、試合勘がありませんでした。なので、大丈夫かなという気持ちが前日まではありました。

(でも、当日は腹をくくって)

当日は会場入りした時からサポーターからの声援とかもあって、段々自分の中で実感が湧いてきて。もうやってやろうという気持ちになりました。

(サポーターの方からしても待望の瞬間なのでは)

そうなんですかね(笑)。すごい声を掛けてもらって、力になりました。

(先発の選手に選ばれるとエスコートキッズを引き連れますが、経験はありますか)

大学リーグでも(エスコートキッズを引き連れることは)あるので、引き連れた経験はありました。

(そこはいつもと変わらず)

でも、大学リーグはあんまり(エスコートキッズを引き連れることは)無いんですけど、Jリーグは毎回あるので。でも、雰囲気が全然違って、すごい緊張感はありました。

(引き連れたお子さんとはどんな話をしましたか)

子供たちにも自分のことを分かってくれている子もいて、話すというよりかは「頑張るね」と伝えました。

(群馬の選手として初めての選手入場を経験しました、感想を教えてください)

まずは、Jリーグという舞台の緊張感もありますし、サポーターの声援の量が段違いで。気持ちが昂るばっかりでした。

(途中出場で入る時とも違う)

途中出場で入る時は、自分は後半から出ることが多いこともあって、オープンな展開になっていることも多い。なので、大体やることはハッキリしているんですけど、先発となると1試合通してのゲームの入り方をしなければいけない。ですので、そこは少し難しさもありました。だけど、杉本竜士選手に「20分経てば慣れるよ」と言われて。本当にその通りで、20分経った位から普通になりましたね。

(先ほど久しぶりの群馬での実戦とおっしゃっていましたが、群馬のSBが大事にしているハーフラインへの入り込みや、相手を引き連れるプレーなどもできていた。大槻監督も田頭選手が90分群馬らしいプレーができると踏んでの先発だったのか)

だと思いたいですね(笑)。自分が練習参加をした時から大槻さんは結構声を掛けてくれて、要求も日に日にレベルが上がってきていました。それなりに期待は持ってくれているのかなというのはあって。そこは自分が期待に応えるように。これからも頑張っていくしかないです。

(要求のレベルが上がってきているとのことでしたが、今大槻監督に求められているのは、普段から群馬で活動をしている選手と変わらない位のもの)

でも、大槻さんは自分が特別指定選手だから甘くみるという事は絶対しない人なので。元々の要求のレベルも(普段からプレーしている)群馬の選手と一緒だと思うんですけど、(チームに)参加した日数が経っていけば経っていくほど、より緻密に、もっと細かいところまで要求してもらえるので。自分は本当に成長できているなと実感できています。

(新井悠太選手(国3=前橋育英)がヴェルディでの練習参加で、城福監督から「戦力として見ている」と言われた話をしていましたが、それと似たようなもの)

自分が(群馬に)来たら、大槻さんは最初のミーティングで「田頭が戻ってきたぞ」と絶対言ってくれて。一戦力として見ているのを伝えてくれているので、そこは一緒だと思います。

(そう言ってもらえたら絶対にうれしいですよね)

そうですね。選手からしたら、いくら大学生でも一緒にやる分には同じプレーヤーだと思っているので、対等に見てくれているというのはうれしいです。

(では、試合の話に入らせていただきます。序盤からいわきは田頭選手のマッチアップする永井選手に逆サイドからロングボールを入れてきました。そこに対する対応も上手く行っていましたが、永井選手の癖は分かっていましたか)

いや、癖を分かっているというか、前日にコーチの人から自分のサイドで出てきそうな選手の動画を送ってもらって。特に永井選手はドリブラーだということが分かっていたので、自分は対人守備のところに自信を持っている。そこはやらせないようにというのはありました。

(ちなみに競り合いは得意)

いや、競り合いはサイズもサイズなんであんまり得意ではないと思うんですけど、そこは守備のテンションで。やるべきところはしっかりやらないとダメなので。

(いわきはJ3でもフィジカルにかなり定評のあるチームでした。これまで対戦したJ2のチームの中でもフィジカルの強さは際立っていたか)

体付きも平均的に見たらいわきは、ずば抜けていると思いますし。最後まで走り切れる力というのが、いわきの選手にはすごくあると思います。フィジカル面ではJ2でもトップだと思います。

(J2でもトップですか)

僕は全然トップだと思います。

(そんなチームに90分対応しきって無失点。かなり今後の自信になるのでは)

そうですね。本当に自信になりました。

(新井選手の所属するヴェルディもいわきと対戦していましたが、自分以外の特別指定選手のチームメートの試合は見ますか)

いや、僕はあんまり自分の出ていない試合は見ないですね。

(では、対戦相手の対策はコーチの方から送られてきた映像がメイン)

とか、ミーティングとかの映像で対策しています。

(いわきの山下優人選手(27)について。彼はDFからして嫌なところにパスを出してくる、それこそ田頭選手が語った大宮の高柳郁弥 (R4年度国卒)選手と選手像が似ていると思われますが、対戦しての感想は)

山下選手は本当に上手かったですね。体の向きでだまされるというか。でも、あの人がボールを持った時にどう対応するかの共通認識は、チームであったのでその通りにやれました。でも、仮に一人で(山下選手を含む)相手二人を見て守るとなると、絶対に逆を突かれるシーンは出てくると思います。それ程上手かったです。

(そこはいつも群馬でやっているように、しっかり味方と2対1で相手を見れていたから上手く守備ができた)

今回のいわき戦は5バックにしようというのがあって、杉本選手が結構引いて5枚になっていたと思うんですけど。なので自分はサイドの永井選手とか、途中から出てきた加藤悠馬選手にガッツリといけて、その間の選手は酒井崇一選手が埋める、というのはチームの共通認識であって。そういった面ではやりやすかったですが、仮に4バックで守るとなった時には、自分が真ん中に入ってくる(いわきの)有田稜選手(24)だったりを見ながらサイドに行かなければいけない。そうなった時に山下選手のようなパサーだと、逆を突かれるシーンが出てきてしまうのかなと思います。

(山下選手のような人はJ2でも特別)

相手を最後まで見てプレーできる選手というのは、群馬にも風間宏希という選手がいるんですけど。そういったプレーヤーは自分にはない才能なので、本当にすごいなと思っています。

(前半12分頃に川本選手に上手くサイドでのパスが通ったシーン。あの試合は左サイドの佐藤選手と川本選手のポジションは入れ替わりながらという形でしたか)

いや、でも自分がボールを持った時には、亮君(佐藤)はサイドに張ってパスコースを作ってくれるというのは共通認識であって。川本梨誉選手が裏に抜けていくというのも、群馬のサッカーとして共通認識があるので。そこはボールを貰う前からちょっと見てて、貰った時に顔を上げたら梨誉が走ってくれていたので出した形ですね。

(永井選手とのマッチアップでは、相手にやりたいプレーをさせませんでしたが、満足の行くプレーでしたか)

一対一の守備だったり、ワンツー対応といったところはやらせていなかったと思うんですが、自分が上がった後の空いたスペースを使われてしまうことが何回かあったので。そこで自分は早く戻るべきだし、戻れないんだったら他の選手に戻らせるべきだったかなと。でも、僕と永井選手の局面だけを見たら自由にはやらせなかったので、いい方なのかなとは思うんですけど、もっと高いレベルでやっていくには、完全に。クロスも上げさせない位の選手にならなければいけない。満足はしていないです。

(ワンツー対応をやらせなかったとおっしゃっていましたが、かなり予測はできていましたか)

永井選手を見ててパスを出された瞬間に、守備が上手い選手だったら、ちゃんと永井選手を見ながら(守備に)いけると思うんですけど、多くのプレーヤーはボールが出された方を見てしまう。それで何回もワンツーをされたという過去があったので。そこからはパスを出されても目の前の敵をしっかりと見ることを意識してたら、上手くワンツー対応ができたという形ですね。

(自分が突破されてしまった試合はやはり覚えているもの)

詳しくは...いや、でも結構覚えていますね。

(二度と同じことが起こらないように覚える)

負けから学ぶこともあるので。成功からはもちろんたくさん学べることは多いと思うんですけど、失敗からも学べることが多くある。自分は絶対に試合が終わったら、試合を見直していて、そこで自分の中で良かった点と悪かった点をピックアップして、頭の中で毎試合まとめています。

(サッカーノート的な物にも書きますか)

ノートには書かないですね(笑)。一時期ノートはやっていたんですけど。ノートに書いた方が整理は付くとは思うんです。でも、自分はその場、試合が終わったら帰りの移動とかで(試合を)見て、忘れないうちに「ここはこうだったな」というのを頭の中でまとめるタイプなので。ノートには書かないです。

(頭の中で処理して覚えていく)

そうです。頭の中で処理して体に覚え込ませています。

(次の練習ではすぐにその場面を練習して)

次練習でそのような場面が出てきたら「ここは試合でできなかった部分を改善できている」ということを実感できるので。

(勉強と変わらないですね)

本当にそうだと思います。勉強も結構ノートに書くよりも、授業中に見て暗記っていうか。見てまとめるタイプだったので、それが自分に合っているのかなと。

(それこそサッカーの練習をしていたら勉強の時間も取れない)

時間は作ろうと思えば作れるとは思うんですけど、僕はサッカー以外の時間は体づくりだったり、ケアだったりに当てたり。オフの日は完全にサッカーから離れてリフレッシュするというのが、自分のスタイルなので、そこは崩さないようにしています。

(リフレッシュする際の趣味などは)

YouTubeとか映画を見るのが好きで。何処かに出かけるよりかは家にいることも多いし、予定が無いときは家でずっと映画を見てたりする時もあります。

(再び試合の話題に戻りますが、先制点は中塩選手のセットプレーからの綺麗なボレーでした。群馬はセットプレーが得意な印象もありますが、練習は重点的に行っていますか)

いや、重点的に行おうというのは特には無いと思うんですけど、群馬はセットプレー練習で守備と攻撃で分析する人が分かれていて。本当にセットプレーもゲームの流れと変わらない位、緻密に作戦は練られていると思います。

(ちなみに田頭選手はセットプレーの際どのような指示を受けていますか)

僕はあんまりサイズが大きくないので、中に入ることは少ないです。いわき戦も山口戦もこぼれも拾う役目を任されることが多くて、拾ったらシンプルに上げてもいいし「ゴールも近いから自信を持ってやって」という話は伝えられました。

(ワンタッチあった後のこぼれを拾ってくれという形)

はじき返された後とか、こぼれた後に居れるように予測したり、そこからチャンスを作るプレーというのは求められていると思います。

(前半中、田頭選手の名前が呼ばれた後に「もう2つ右」という指示がありましたが、あれはレーンの事ですか)

守備で、さっきも言った通り竜士君を落として5バックにするのは一つの決まりごととしてあって。でも僕と酒井選手との連係があまり取れてなくて、佐藤選手を降ろしてしまって、一時的に6枚になってしまうシーンが何回かあった。それだと意味がなくなってしまうよねということで、もう少しサイドに出してこいという指示はありました。

(サイドに出すというのは)

サイドに張っている永井選手に対しては僕(田頭)が行くんだよという指示をされました。


スローインでも数多くの工夫を実践している

(試合を通して、田頭選手がスローインを投げる回数も多かった。決めごとはありましたか)

スローインはサイドラインを意識するというのがあって。僕は何回か(スローインを)中に入れてしまって、相手ボールになったんですけど、サイド付近に投げれば味方もキープしやすいし、相手が触っても処理が難しく、マイボールになる可能性がある。なのでサイドラインにスローインを投げるということは一応意識しています。

(佐藤選手と投げるのを交代しているシーンもありましたが、あれはどのような意図で)

練習で一人が(スローインを)やめてハンドパスをした時に、多分相手は気が緩むからということをどのチームもやっていると思うんですけど、それを佐藤選手が最初にボールを拾ってやっていれば(佐藤選手に)カードは出なかったと思います。でも、僕が拾って渡して、渡しちゃったので、それが(審判の方に)印象が悪くてカードが出てしまったんですけど。一応相手の隙を突きたいというのはありました。

(ロングスローを狙うように見せかけた場面もありました。あれも工夫の一つ)

そうですね。(ロングスローを)見せることで相手も引くので。そしたら近くが空いてくる。

(スローイン一つでもかなり深いですね)

本当に深いです。

(群馬に行ってからスローインへの意識が高まった部分はありますか)

大学でも考えてないわけではないんですけど、群馬に行ってからサッカーが楽しいというか。自分の知らないことや新しいことがドンドン自分に入ってくる。本当に成長できている気しかしないので、本当に楽しいです。

(ハーフタイム前の大槻監督との会話はどのような内容でしたか)

亮君を前にやってもっとサイドに出てこいという話と、「もっとやれ、攻撃でも自分を出していけ」というのは伝えられました。

(後半開始直後には逆サイドからの味方のクロスに詰めるシーンもありましたが、指示を忠実に体現した形)

これまでも何回か話しましたが、群馬の右サイドバックがシャドーの位置に入るというのは言われてて、クロスに僕が入っていくことによって、大外が空くというか。絶対に相手は中から埋めるので。そこで(相手が)迷ってしまえば、自分のところで触れたら一点だしという狙いもあって。ずっとあそこに入って行けというのは言われていることなので、忠実にやったというよりかは、自分も点を取りたかったというのもあります。

(得点は結構狙っている)

群馬に行って、より高い位置が取れるようになって意識するようになりました。

(それこそウィングの要素もありますかね)

大外を取る時はウィングになりますし、中を取る時はトップ下を取りますし。

(後半、いわきはサイドから高いボールを放り込んできた。逆サイドからの高いクロスへの対応で意識していることは)

まず僕はサイズが大きくないという事もあるので、一番は自分が触って弾くこと。それが無理だったら、相手に触らせない。仮に相手に触られても、体をくっつけて自由には打たせないということを意識していて。後半自分たちが先制したこともあって、相手はイケイケでクロスを放り込んできたところもあるのですが、クロス対応はしっかり練習からやっているので、そこを0にできたのは、練習でやってきたことができたのかなと思います。

(後半の途中からいわきは少しボールをずらしてクロスを上げていた。あれは想定済みだったのか)

一番はサイドの僕とか左サイドの選手がクロスを上げさせないことなんですけど、仮に上げられても、それに対応するための対策は練っていたので。みんなに助けられたといえばそれまでなんですけど、みんなで上手く守ることができたのかなと思います。

(GKの櫛引選手のロングボールへの対応は安定感がある)

本当に櫛君(櫛引選手)はあんまり頑張って止めているシーンを見ないというか。軽く止めているシーンが僕は多いなと思いうんです。そこは櫛君の予測だったりというのがあると思います。

(コーチングの上手さもある)

そうですね。特に僕が初スタメンだったというのもあって、みんな声を掛けてくれたというのもあるんですけど。一番は距離の近いDFのパートナーでもある酒井崇一君が声を掛けてくれたし、セットプレーだったりというのは櫛君だったり、塩君(中塩選手)だったり。DFラインが特にみんな声を掛けてくれました。

(今回のような体験をするとコミュニケーションの大切さも感じますか)

コミュニケーションを取らないと味方を動かすことができないし、自分もどこへ動けばいいのかがわからないというのがあるので。結構大事ですね。

(田頭選手も声を出すタイプである、とよくおっしゃっていますが、声を出すこととコミュニケーションを取ることは少し違いはありますか)

僕は声を出せる選手の方が、試合中にコミュニケーションを取りやすいと思いますね。声を出さないと伝わらないし、伝えてもらえない。伝えてもらって自分がこう思ったというのが言えないし、いいコミュニケーションが取れないと思うので。僕は声を出せる分人に要求することもできるし、要求に対して答えることもできる。「僕はこう思った」というのを伝えられるという部分もあります。

(昔特別指定選手として参加した時よりも、試合に参加した方が意見は伝えやすくなるという話をしていただきました。スタメンで出た、というのは一歩先のステージに進めたということですか)

長く試合に出れば出るほど、自分のプレーを周りから評価してもらえる時間が長いので。みんなもそれなりに認めてくれているとは思いますし、プレーが長い分、絶対良いところや悪いところが今までより多く出てくる。悪いところは要求してもらえるし、良いところは褒めてもらえるしというのはありますね。

(Jの試合での疲労は普段の大学リーグよりも大きいと思いますが、90分試合に出てみて、普段できていたことができなくなる場面はありましたか)

(この試合の前まで)試合にあんまり絡めていなかったという事もありますし。本当にきつかったですね、強度が段違いだったので。天然芝で足が疲れやすいというのもあるとは思うんですけど、最後は大学リーグだと考えられないくらい全然走れなくて。ちょっとヤバいなと思いました。

(それは大学リーグが中断期間に入ってしまったのも大きかった)

いや、それまで僕は大学の方に居て、毎週試合をやってという積み重ねがあったんですけど。群馬に行ったらそう簡単に試合に絡めるわけではないので、試合をやらない週というのが出てきて。そうなるとコンディション維持の面で、試合をやっている人とやっていない人とでは絶対に差が生まれてくる。その中でのフル出場だったので、最後全然走れてなかったと思います。

(でも、山口戦もいわき戦も田頭選手の上下動の動きは目立っていた)

そこは求められている部分で、自分は運動量にも自信がある方なので。もうやるだけです。

(いわきの加藤選手は永井選手とも違ったリズミカルなドリブルをする選手でした。対応を変えようという考えはありましたか)

永井選手はどちらかというと、ボールにタッチを何回かして、自分のリズムを作ってスピードを一気に上げてくるタイプ。そういった意味だと自分もタイミングが取りやすくて、体を入れたりができるんですけど、悠馬は大学リーグでも選抜でも一緒にやってみて、独特なリズムがあるというか。タッチも細かいし。あの試合悠馬はドリブルをしてくるというよりも、すぐにクロスを上げてきたので、永井選手の時よりも寄せることを意識しました。

(細かくタッチをされた方が守備の際は嫌ですか)

細かいタッチをされる方がDFは足を出しにくいので、嫌ですね。

(73分に櫛引選手のパスが田頭選手に渡り、そこからチャンスを作るシーンがありました。あれは群馬としても理想の攻めでしたか)

あれはミスです。群馬のサッカーとしてもポケットを取りにいくというのは絶対にあって。ハーフスペースを取りに行く。僕はウッチー君(内田選手)が走ってクロスを上げられるように(パスを)少し中めに出したんですけど、ウッチー君のスピードを考えたら、もう少し外に出して、キープさせるというのがあの時の正解で。ウッチー君も多分それを求めていたんですが、僕とそこは共有できていなくて。ミスになってしまいました。

(アディショナルタイム、加藤選手にクロスを上げさせなかったシーンがありましたが、対応できてきたなという感触はありましたか)

アディショナルのシーンは悠馬がドリブルしてきたので。僕は最後らへん走れていなかったので、寄せ切れてなくて。悠馬がドリブルしてきてくれたおかげで、徐々に間合いが詰まったので守れたという形ですね。

(何回も話の中で出てきましたが、プロの中で90分プレーした感想は疲れの部分が大きいですか)

第一にまずあの日はきつかったというのがあって。後はみんなに助けられてばっかだったなというのがありますし。でも、楽しかったし、自分の中でも大きな財産になりました。大槻さんにも試合前に言われたんですけど「人は責任を持って成功体験をすることで初めて成長する」というのを伝えられて。本当にその通りだなと。自分はあの試合絶対に負けちゃいけないし、やらせちゃいけないという中でクリーンシートで抑えられて勝てたというのは、自分の中で大きな成長につながったなというのはあります。

(試合後には大槻監督から何か言葉はかけてもらいましたか)

試合後には「とりあえずフル出場できておめでとう」というのと「もっとやれる」というのを伝えられました。

(求めるラインはもっと上)

もっと上です。


TEXT/PHOTO=髙橋生沙矢