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2023.11.16
硬式野球

[硬式野球]「1部にいてはいけなかった」サヨナラ負けを喫し無念の2部降格 来年の逆襲を誓い2023年を終える

[硬式野球]東都大学野球 秋季1部2部入替戦・駒大4回戦

11月14(火) 神宮球場


●東洋大5-6x駒大


10
東洋大
駒大2x


二塁打:石上(7回)


岩崎、石上祐、向高、柿本、一條ー後藤、鈴木


・打者成績

打順守備名前
(右)水谷(営4=龍谷大平安)
(左)秋元(済2=木更津総合)


打左斎藤(営3=九州国際大付)

(遊)石上泰(営4=徳島商)
(二)三宮下(総2=北海)
(中)橋本吏(総4=花咲徳栄)


打中宮本(総4=大阪桐蔭)


(指)里(総3=浦和学院)


打指嶋村(法3=栄北)
(三)加藤響(総3=東海大相模)


打二馬場(総1=九州学院)
(捕)後藤(法4=京都学園)


富安(営1=履正社)



鈴木(済2=長崎日大)


(一)吉田(営2=龍谷大平安)


33


・投手成績

勝敗名前球数四死球三振

岩崎(総3=履正社)52/367

石上祐(法4=東洋大牛久)1/3

向高(営2=報徳学園)16

柿本(営3=東洋大姫路)14
一條(総3=常総学院)12/319


礼に始まり礼に終わる

悔しさを抑えて最後まで主将として先頭に立ち続けた水谷


最終回嶋村の安打がチームを勢いづけた


タイブレークでも一條は落ち着いた投球を見せた


グラウンドの選手たちへ声援を送り続けたスタンド


2部降格を喫し、立ち上がれない岩崎

この悔しさがきっと彼をエースへと成長させる


前日、タイブレークまでもつれる白熱の投手戦の末に敗戦し1勝1分1敗で異例の4回戦に突入した東都大学野球秋季1部・2部入れ替え戦。来季を1部で戦うために残された最後の切符を掴むべく、チームを支えた4年生を笑顔で送り出すべく、”一戦必勝”・”執念”というスローガンのもと戦ってきた東洋大の戦士たちの最終決戦が幕を開けた。


勝てば残留。負ければ降格。そんな1戦の先発のマウンドに上がったのは初戦に8回まで無安打投球を披露するなど、右のエースとしてチームを引っ張ってきた岩崎(総3=履正社)。


初回、東洋の攻撃は三者凡退に終わり、流れを渡さないために守備でも無失点で切り抜けたかったが四球で走者を溜めると内野ゴロの間に失点。先制点を許してしまう。

二回、今試合4番に抜擢された宮下(総2=北海)のバットから中前へチーム初安打が生まれるも後続は続かず。前日同様、厳しい攻撃が続く。しかし、初回に失点を喫した岩崎が立ち直り、二回から五回まで三者凡退。駒大に流れを渡さずに試合を作り、1点差の緊迫した展開のまま試合は中盤へ。


試合が動いたのは五回だった。岩崎は先頭に初回以来のヒットを許すと、2死一、三塁のピンチを招く。あと1死の場面で、次打者が放った打球は高く打ち上がりライトの方向へ。右翼手水谷(営4=龍谷大平安)がフェンスギリギリにたどり着くも、打球はそのフェンスを越えた。まさかの3ラン本塁打。一気に4点差となり岩崎は呆然、ナインもライトスタンドを見つめるしかなかった。井上監督はここで岩崎から石上祐(法4=東洋大牛久)に継投。日曜日の試合でも本塁打を被弾した直後に登板し、相手に流れを渡さなかった左腕は今試合でも重要な役を任されると、低めに球を集め二ゴロ。1人で後続を断ち切った。


4点が重くのしかかる雰囲気に思えたが、東洋大の戦士たちはベンチもスタンドも誰も勝利を諦めていなかった。「まだ行ける、まだ行ける」「三回も(攻撃の回)あるやん」そんな前向きな言葉がスタンドから聞こえた。ナインは七回攻撃の前に円陣を組むと、直後に先頭の石上泰(営4=徳島商)が左フェンス直撃の二塁打を放ち、次打者の宮下も四球。続く橋本吏(総4=花咲徳栄)の犠打で、1死二、三塁と大きなチャンスを作る。ベンチから岩崎が祈るように見つめる中、井上監督は代打策に出る。里(総3=浦和学院)の打順で代わって打席に入った嶋村(法3=栄北)の遊ゴロの間に石上が生還。反撃の口火を切る1点が東洋大に入る。続く加藤響(総3=東海大相模)に代打馬場(総1=九州学院)を選択。リーグ戦、入れ替え戦通じて初出場の馬場は、積極的に振り抜き打球は右前へ。この回2点目が入り、駒大に傾いていた流れを1年生のバットが東洋大側へと呼び寄せた。


逆転のためにこれ以上の追加点を許せない東洋大は、七回に向高(営2=報徳学園)、8回に柿本(営3=東洋大姫路)をマウンドへ送る。両選手とも1人の出塁も許さない完璧なリリーフで、九回の攻撃に希望を繋ぐ。

九回、何としても2点以上欲しい東洋大は先頭嶋村が粘った末に左前を放ち出塁。拳を突き上げると3塁側スタンドから大きな嶋村コールが飛び交う。その後、四死球が絡み無死満塁となり、今試合最大のチャンスを作る。続く吉田(営2=龍谷大平安)、水谷が三ゴロに打ち取られるも、それぞれのゴロの間に走者が本塁へ生還し2得点。ベンチからナインが飛び出し、笑顔で本塁へ生還した嶋村と馬場を迎えた。最大4点差あったビハインドを追いついた東洋大。後続は打ち取られ、逆転とはならなかったが1部残留へ望みをつなぐ大きなイニングとなった。


裏の駒大の攻撃を三者凡退に抑え、試合は2試合連続のタイブレークへ。石上、宮下が打ち取られるも宮本(総4=大阪桐蔭)が四球で出塁し、2死ながら再び満塁のチャンス。ここで、相手バッテリーに暴投が生まれ三塁走者の水谷が生還。今試合初めてリードを奪い、あとはこの一点を守りきるのみ。運命の十回裏へ。


十回裏、九回に続いて登板した一條(総3=常総学院)は二者連続三振を奪い2死一、二塁。必死に戦い、粘り強く攻撃し、逆転の末にたどり着いた1点リードの十回裏2死。あとアウト1つで1部残留が決まる。しかし、そのアウトが東洋大に宣告されることはなかった。

次打者が二遊間を抜ける打球を放つと二塁走者が本塁へ。同点に追いつかれる。ここで中堅手が打球を後ろに逸らしており、その間に一塁走者も三塁へ。すぐ拾い直し本塁へ送球も、捕手が後逸。三塁へ進んでいた走者が本塁へとヘッドスライディング。2死から逆転サヨナラを決められ敗戦。2部降格という結果で4日間にわたる激闘の入れ替え戦は幕を閉じた。


試合後、ナインは喜ぶ駒大ベンチを静かに見つめた。見つめるしかなかった。

会見で井上監督は「勝ち点3を取る力がなかったってことは1部にいちゃいけないってことかなと。この入れ替え戦も負けたってことは1部にいてはいけない実力なんで。」と、厳しい現実を静かに振り返った。春季入れ替え戦で勝利し5季ぶりの1部復帰を果たすと、開幕から2カード連続勝ち点を獲得。一時は首位に立つなど躍進を見せた東洋大。その躍進を支えたのは4年生、水谷世代だった。井上監督は春から「今年は4年生のチーム」と常に語っており、彼らについて「頼もしい4年生でした。ガッツのある主将を筆頭に。本当に4年生は良くやってくれました。」と口にした。来年からは頼もしかった4年生が抜け、新たなチームで再び1部復帰を目指すこととなる。チームを支えた岩崎や加藤慶(営3=龍谷大平安)、一條ら投手陣、宮下や花田(総2=大阪桐蔭)、池田(営2=三重)ら野手陣。彼らの活躍は欠かせないが、彼らだけでなくチーム一人一人がレベルアップし、全員野球で戦うことが求められる。「来年0からやり直します。」この悔しい経験をどのように生かすのか、この冬どのように変わるのか。再び聖地神宮で戦うため、来季1部昇格を果たすため、0から新たな気持ちで勝負の冬を迎える。


■コメント

・井上監督

(想像もできないような幕切れ)最後はもうね、しらけた終わり方になっちゃいました。そこまでいい試合だったんですけどね。(9回に執念で2点を追いつく粘りは素晴らしかった)そうですね。選手はよく頑張ったんじゃないですか。ただ、力及ばずというか。最後はつまらないミスで負けちゃったというとこですかね。(9回、水谷主将を2ストライクから呼んで声をかけていた。なんて声かけしたんですか)いや、あれは一塁走者がサイン見てなかったので。一球待とうかって話をして、エンドランをかけたんです。(春に1部復帰を決めて激闘の一年、今年の戦いはどうでしたか)1部で秋1シーズンやらせてもらって、前も言ったように勝ち点3を取る力がなかったってことは1部にいちゃいけないってことかなと。この入れ替え戦も負けたってことは1部にいてはいけない実力なんで。来年、0からやり直します。(4回戦までもつれる珍しい展開)お互い必死なんで。こういう接戦の試合が続いて、引き分けもあり、2試合タイブレーク。これからどんどん4試合とかあるんじゃないですか。お互い、みんな必死なんでね。(今日先発の岩崎や一條が残る中で、来年どんな奮起を期待したいですか)彼らがこの負けをどう来年に活かすか。1部でまたやりたかったら頑張るだろうし。(監督就任一年目、4年生はどんな選手でしたか)頼もしい4年生でした。ガッツのある主将を筆頭に。本当に4年生は良くやってくれました。逆に最後は申し訳ないという気持ちです。(4年生が卒業して、3年生以下にはどのような部分を糧にしてほしいですか)今日の試合見てても、3年がダメなんです。うちの3年はダメ。最初に2人使ってたと思うんですけどハートが弱いんです。後から出た1年生の方が簡単に打っちゃうんですから。気持ちが弱い子は勝負事はできない。戦えない。今の子供たち優しいですから、、、。優しいっちゃ優しいですけど、戦ですから。やるかやられるか、でないと生き残っていけないでしょ。(来年に向けての大きい課題は精神面を鍛えていく)もうそこしかないと思います。技術の練習は無駄にならないですけど、僕の考えはいくらいい技術を持ってても、その気がないやつは使いこなせないので。



TEXT=成吉葵/PHOTO=成吉葵・一ノ瀬志織