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第108回日本陸上競技選手権大会・第40回U20日本陸上競技選手権
2024年6月27日(木)〜30日(日)
新潟・デンカビッグスワンスタジアム
日本選手権男子400mH予選
3組 2着+2
1組 2着 小川 大輝 49"02 Q 決勝進出
2組 8着 栁田 聖人 51"54
日本選手権男子400mH決勝
2着 小川 大輝 48"70 OS PB パリ五輪標準記録突破
パリ五輪代表、日本一を懸けて行われた日本選手権。資格記録48秒台の選手が7人も揃ったハイレベルな男子400mHに東洋大からは小川大輝(ラ3=豊橋南)、栁田聖人(法2=東農大二)の2名が出場した。昨年の挑戦者としての立場から、ディフェンディングチャンピオンとして今大会に挑んだ小川。昨年は予選をタイムでのプラス通過だったが、今大会は進化を見せ、着順で通過すると、決勝では自己新記録でパリ五輪参加標準記録を突破し、準優勝。見事に初のシニア日本代表であるパリ五輪代表の座をつかんだ。
大会初日に行われた予選。小川は1組目に出場した。同組には今季日本ランキングトップの豊田兼(慶大)、今年の関東学生対校選手権大会チャンピオンで(当時の)小川と同じ自己記録を持つ井之上駿太(法大)が入っていた。着順で確実に決勝に進むにはどちらかに勝たなければならない。そんな中、持ち前の勝負強さを見せた小川は最終ハードルまで並んでいた井之上に競り勝ち(当時の)自己記録48秒91に迫る49秒02をマークし、着順での決勝進出を決めた。レース後には「標準記録を目指してたが歩数を変えたところがしっくりきてないという感じ」と振り返りつつ、「試合感を信じて攻めていこう、2連覇を目指して強気な気持ちで頑張ります。」と翌日の決勝へ意気込みを語った。
2組目には今年初の49秒台を記録した栁田が出場。初のシニアの日本選手権で、他選手全員が自身よりも早い自己記録を持つ状況だったが、怯むことなく前半から積極的レースを展開し、9台目まで2位争いを演じた。結果は決勝には進めなかったが、初の日本選手権でのこの経験は今後の栁田の成長の礎となるだろう。
迎えた決勝では、小川の強みが最大限発揮されたレースだった。400mHのトップ選手では前半のハードル間を13歩で行くのがセオリーの中、小川が採用しているのは最初から14歩。前半が13歩の選手よりも遅れる分、後半の減速が少ないのが特徴。実際に前半の5台目までは多くの選手に先行されたが、徐々に追いつき9台目で豊田に次ぐ2位争いに並ぶと、強力なスパートで抜け出し、そのままゴールを決めた。昨年のこの大会では学生の大会と違い、後半で行ける自信はなかったと語っていたが、今年は「とにかく300(㍍)で周りの選手から体半分前とかそのぐらいなら絶対差せるという自信があった」と語り、昨年から日本男子400mHのトップ選手として戦ってきた小川の確かな進化が現れていた。そして迎えた緊迫の結果発表、小川の名前の横にはパリ五輪参加標準記録ぴったりの48.70の表示が。この時点でパリ五輪代表内定はほぼ確実になり、電光掲示板を祈りながら見つめていた小川は、一気に喜びを爆発させた。
レース後、小川は「周りの選手が13歩でやっていく中、自分だけ14歩を押し切るっていう中で、どうしても14歩は前半が遅れるんですけど、そこを自分なりにスピードを上げて、でも楽に行くっていう練習をやってきて、そこが上手く噛み合いました。」と振り返り、見事に予選からの修正を大舞台で決めてみせた。また、パリ五輪については「もう考えられない、嬉しい、まさか自分がっていう感じ」と驚きと喜びを表すと同時に「来年の東京世界陸上で決勝へ行くために、今年はとにかく準決勝は必ずいきたい」と語り、初の五輪へ向けて強い気持ちを表した。
昨年の凄まじい躍進からついに五輪の代表まで登りつめた小川。昨年から大きな舞台で結果を残し続けてきたここ一番での勝負強さをパリの舞台でも見せてくれることをぜひ期待したい。
前年チャンピオンとしてゴールドの名前ゼッケンをつける小川
表彰式での小川
初の日本選手権で積極的なレースをした栁田
◼️コメント
小川大輝
ーーー今日は前半から行くと言っていましたが、その辺りレース振り返って
周りの選手が13歩やっていく中で自分だけ14歩を押し切るっていう中で、どうしても14歩って前半が遅れるんですけど、そこを自分なりにスピードを上げてでも楽に行くっていう練習をやってきてそこが上手く噛み合いました。
とにかく300で周りの選手から体半分前とかそのぐらいなら絶対させるという自信があったのでそれが今日重なったかなって思います。
ーーー豊田選手が先行していく中で意識しないで走れたか
明らかに段違いってわかってたんですけど、なるべくついていこうって思ってました。
ーーー標準なかなか切れずもどかしい気持ちもあったと思いますが
もう考えられない、嬉しい、(見た瞬間はどうでしたか)まさか自分がっていう感じでした
ーーーパリに向けての実感は
オリンピックは本当に夢の舞台で、いつか行けたらいいなって感じだったんですけど、ここ逃したら4年間後悔するなって思ってこのシーズン初めからパリオリンピックだけを意識して普段の生活から学校とかもなるべく体力使わないようにとかそういうことばっか考えてそれがやっと繋がったていうか、やってきてよかったです本当に。
ーーー去年まではなかなかオリンピックとか考えることはできなかったか
自分自身が去年の静岡国際で49秒6出してからそこからグランプリとか色々出れるようになってきてまだこうやって出てきて1、2年やっと常連選手になれたかなってぐらいだったんですけど、ここで一気にまたジャンプアップできたかなっていうふうに思います。
ーーーパリを本格的に意識したのはいつぐらいですか
去年の世界選手権でワールドランキングが足りなくて、日本選手権優勝したんですけどアジア大会、アジア選手権、ユニバーシアード、ブダペスト世界選手権とか全部代表逃してきて自分の中ではかなり悔しくて。でもコーチ陣には今出ても何も戦えないよってことばっか言われてて、それがもう本当に悔しくて去年の冬からこのパリを目指してました。
ーーーご自身の中では何が一番変わって今日の結果に結びついたと思いますか
ハードル技術もそうなんですけど、やっぱり監督の指示というかそういうのが的確で、一回一回の練習で自分で成長できてるなって実感してて。ハードル技術じゃなくて走力とかもしっかり自分のいいところを監督が的確にアドバイスしてくれてたのでそこを伸ばそうというのが監督と一致しててそういうところが良かったなって思います。
ーーー世界での勝負になりますけどどういうイメージで挑みますか
今世界ランキングの中で標準切ってるのが35、6人いて出場できるのは四十人ていう中でほとんどの選手が標準記録を突破していてそういう中なんですけど、来年の東京世界陸上で決勝に行くために今年はとにかく準決勝は必ずいきたいなと思います。
栁田聖人
ーーー走りを振り返ってどうでしたか
前半置いて行かれて勝負にならなくなるよりかは、前半流れに乗って進めたいなと思ったのですが、後半自分の持ち味の7、8(台目)からのスピードの維持のところがうまく行かなくて、後半までもたなかったのでこのタイムになったと思います。
ーーー練習から日本選手権を見据えて前半を早く入る取り組みはしていましたか
力を入れてスピードを上げるというよりか、楽に走った中でいかに早いタイムで入れるかっていうことを意識してやってたんですけど、前半は良かったんですけど後半に繋がらなかったので残念です。
ーーーシニアの日本選手権はどうでしたか
なんとか勝負したかったんですけど、今の実力じゃ勝負にならなかったかなって印象です。
ーーー小川選手とは練習の段階から競い合いなどはありますか
最近は一緒にハードルを跳ばしてもらったりして、日本のトップの先輩なので色々吸収できるところはあると思うんですけど、まだまだ追いつけないなと思ったのでこれからも頑張りたいです。
TEXT、PHOTO=佐々木朋弥