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2015.10.07
ボクシング

[ボクシング]原田が国体で優勝!村田以来の快挙

第70回国民体育大会 ボクシング競技会

10月1日(木)~5日(月)田辺スポーツパーク体育館

 

◆フライ級

3位 馬場(奈良=文2=王寺工)

3位 星(岩手=済3=黒沢尻工)

2回戦敗退 工藤(栃木=済3=作新学院)

1回戦敗退 福井(東京=営1=駿台学園)

 

◆ライト級

3位 秋山(大阪=営3=淀川工科)

1回戦敗退 齋藤(千葉=営3=習志野)

 

◆ライトウェルター級

1回戦敗退 高橋(京都=ラ4=南京都)

2回戦敗退 萱津(大分=営2=大分工)

 

◆ウェルター級

優勝 原田(広島=営1=崇徳)

2回戦敗退 金城(沖縄=営4=那覇)

1回戦敗退 小林(福島=法3=会津工)

 

◆ミドル級

準優勝 高江洲(沖縄=営4=沖縄尚学)

2回戦敗退 松野(熊本=営2=開新)

 

◆ライトヘビー級

3位 宮内(千葉=済2=習志野)

1回戦敗退 中村(長崎=ラ2=小浜)

 

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金城㊨を下し、優勝をつかんだ原田

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 2位に輝いた高江洲

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星にとって収穫の多い大会となった


 5日間にわたり和歌山で国民体育大会(以下、国体)が行われ、ウェルター級原田(営1=崇徳)が1年生ながら優勝、ミドル級高江洲(営4=沖縄尚学)が準優勝を果たした。他にも4人がベスト4に進出し健闘を見せた。


 まさに番狂わせだった。東洋大から14人もの出場者を出した今大会は初戦から同学がぶつかり合う波乱の幕開けとなる。ウェルター級2回戦目の金城(営4=那覇)と原田の一戦も例外ではなかった。「失うものは何もなかったので全部ぶつける気持ちでいった」。原田にとって金城は強い先輩であり同じ階級の強敵でもある。1ラウンド目から金城の重く鋭い拳が原田のボディをとらえたが、ひるむことなく軽いフットワークを生かして手数を稼ぐ。「金城さんの連打に捕まると疲れてしまうので、大振りだったら外して崩していこう」という原田の作戦通り、次第に金城の空振りが増えていきその隙を突く攻撃を展開。最後は互いの意地がぶつかり合った乱打戦となった。レフェリーが原田の手を挙げた瞬間、会場の誰よりも驚いていたのは「正直負けたかなと思った」と素直にこぼしていた原田自身だった。対する金城は「(印象の)見栄えが悪くなってしまった」と反省を口にし、「頑張って」と後輩に励ましの言葉を送った。大勝負を制し、迎えた決勝。相手のガードの固い守備に苦戦を強いられるも、「(勝因は)自分から積極的に攻めていったこと」と語ったように距離を取りながら常に攻めの姿勢を見せる。「全部出し切ったという気持ちに結果がついてきた」と接戦を制し大学初優勝を飾った。 

 「また2位か」。高江洲はインターハイ以来の準優勝という結果に満足はしていない様子だった。ミドル級ランキング1位の濱崎(自衛隊体育学校)が相手となった決勝は1ラウンド目からカウントを取られてしまう。焦りを感じながらも「セコンドから「どんどん手を出していけよ」と言われて、その通りに出していった」と、強みである攻撃力を押し出していく。すると3ラウンド目に相手に疲れが見え始め、応援席からも「高江洲!相手疲れてるぞ!!いけ!!!」という声援が飛ぶ。その声に反応し畳み掛けるようにリングの端まで追い込み、連打を浴びせるも、判定負けを喫した。試合後は悔しさをにじませていたが「身内が来ていて喜んでくれたので、決勝までいけたことは良かった」と笑顔を見せた高江洲は、高校時代からの最高位を更新すべく全日本でのリベンジを誓った。 

 「国体はいつも初戦敗退だった」という星(済3=黒沢尻)こそ今大会一番の成長株だろう。準決勝はアジア大会メダリストを相手に奮闘するも敗戦してしまったが、格上の選手と戦ったことで「精神面での収穫は大きい」と手応えを口にした。そして他にも、秋山(営3=淀川工科)、馬場(文2=王寺工)、宮内(済2=習志野)の4人が3位に輝いた。


 東洋大で国体優勝者はミドル級の村田(ロンドンオリンピックメダリスト、現帝拳ジム)以来5年ぶりであり、6人が準決勝に進出したことは歴代でも類を見ないほどの好成績だ。だが、選手は皆結果に納得しておらず口をそろえて「全日本では優勝」と闘志を燃やしており、三浦監督も「入賞者が多いことに喜ぶのではなく、チャンピオンが多いことで喜ぶところを目指したい」とさらに上を見据えている。1カ月後に控えている全日本は国内ランキングへの影響が一番大きい重要な大会だ。全日本で何人の東洋大の選手が頂に立つのか。今まで以上に期待がかかる。


■コメント

・三浦監督

(原田の優勝は)まだ大人の体になりきれていない1年生でとるのはすごい。テクニックがうまく使えた。懐深く、打たせずに打つというボクシングができたことと、ディフェンスがうまく、しっかりとしたジャブとワンツーを当てることができたのが勝因。(金城との対戦は)金城の粘度と体のパワーを原田がうまくかわしながらパンチをあてたので、金城は空振りが多くなり見栄えが悪くなってしまった。原田は比較的精度よく当てていったので、空振りも少なく見栄えが良くなった。そういうところが評価されたと思う。(結果は)優勝するなら金城はあるかなと思っていたが、1年生の原田が優勝したのは想定外だった。春のリーグ戦はあまり活躍できず、まだ成年の体になりきれていないかなと不安があった中こういう結果を出して、改めて力がある選手だなと思った。(高江洲は)持ち味の前に出る打ち合いだけではなく、左もちゃんと打ったということが勝因だと思う。ただ決勝で負けてしまったので、このリベンジは全日本選手権でしてほしい。(全体として好成績の要因は)リーグ戦も3位まで上がってきているので3位なりの力が少しずつ表現できてきている。ただ全然満足はしていない。ボクシングの世界というのは2位でも3位でもだめ。チャンピオンという称号は一人しかいないから、3位が多いとか入賞者が多いとかで喜ぶのではなく、チャンピオンが多いことで喜ぶというところを目指していきたい。今回チャンピオンが一人出たのも当然すごいことだけれど、来年は二人、3人と増やしていきたいと考えている。


・金城(営4=那覇)

勝ったと思ったけど、最初からもっと圧倒的に勝たないといけなかった。パンチもらった時にふらついたのが印象悪かった。(対原田と前日にわかったとき)絶対勝たないといけない。練習の時は自分のペースでできたので、勝てるイメージはあった。でも、3ラウンド目以外は普段の練習通りにできなかった。(実際戦ってみて)大振りでもあったし、それが振らされたと見られたのかな。見栄えが悪くなってしまったと思う。避けるのが上手いのは分かっていたので、当てて当てて最後強いのを打てば良かったが、最初から強いのを当てに行ってしまった。(原田選手に向けて)頑張ってとしか。自分から言えることはない。(全日本に向けて)今回、当てたのは自分が多かったが、見栄えが悪かったのでそこを直す。最初から煮詰めて普段通りにできるようにしていきたい。


・高江洲(営4=沖縄尚学)

(今大会を振り返って)正直に言って4回の試合は疲れた。(4回戦では)相手はパンチが強いのでパンチをもらわないように気を付けた。(1ラウンドでカウントを取られてからは)「やばい」と思った。1ラウンドが終わってセコンドから「どんどん手数を出していけよ」と言われて、その通り出していった。1回戦はスタミナ的にも余裕があった。(2回戦は)相手にうまさが無かったので、自分のうまさを出して落ち着いてやれば勝てると思っていた。3回戦もガンガン前に出れば勝てると思って、その通りに試合を進められたので勝てた。(2位という成績は)インターハイ以来。「またか、また2位か」と思った。うれしくはない。ただ沖縄から身内が8人くらい来ていて喜んでくれたので、優勝はしたかったが決勝までいけたのは良かった。全日本でもっと調子を上げられるように頑張ります。

 

・秋山(営3=淀川工科)

(2回戦は)相手が絶対前に出てくると思っていたので、打って動いて、打って動いて、ということを意識していた。2ラウンド目まで全力でいって3ラウンドは気持ちでいくという作戦だったが、その通りできたと思う。足がよく動いた。(初日と比べて)すごく良くなった。1日目は試合をしばらくしていなかったので、やはり調整が難しくて体重の落とし具合などで動きがめちゃくちゃ悪く、全然だめだった。(3回戦は)「負けた」の一言。仲のいい子だったが、やはり強かった。回転力や手数が多かったのでそこがやりにくかった。自分の調子は良かった。(接戦だったが)判定はどっちだろうという感じ。結果出るまでわからなかった。どっちに転んでもおかしくなかったと思う。(収穫は)強い選手に2回戦で当たって勝てたことは自信になった。(課題は)もっと手数を出せたらいいなと思う。あとはスタミナ不足。(全日本に向けて)国体はベスト4で負けてしまったので全日は優勝したい。

 

・星(済3=黒沢尻工)

相手の試合を見てイメージはあったが、実際戦ってみると距離が遠くて踏み込んでも届かなくて苦戦した。初戦、2回戦と勝てたのはうれしかった。国体はいつも初戦敗退だったので初めてベスト4に進出できて、うれしいという気持ちと相手がアジア大会3位に残った選手だったので、喜ぶ余裕がなかった。格上の相手との公式戦は初めてだった。自分の一番苦手なスタイルで、自分の気持ちが前にいってしまってぐちゃぐちゃなボクシングになってしまった。だが、今回戦えたという経験は大きいし、それだけの選手と戦えたということで気持ちに余裕もできると思うので、自分のボクシングが出せるかなと思う。精神面での収穫は大きい。(地元で行われる全日本に向けて)そう言われてしまうとプレッシャーになってしまうが、そこまでの気負いはしないで、出てくる相手も強い相手ばかりなのでそこも見越して。でも本番は来年の岩手国体なので、そこにつなげられるようにしたい。もちろん目指すのは優勝。頑張りたい。

 

・馬場(文2=王寺工)

(2回戦は)反省点が多い試合だった。(具体的には)頭が低くなってしまったこと、距離が近くなってしまったこと。もっと距離をとって戦わなきゃいけなかった。同じ東洋大の先輩ということですごく意識をした。強いということもわかっていた。でも、それでも先輩後輩関係なく倒す気持ちで臨んだ。(対策は)パンチが強いので足を使ってまともにもらわないようにしようと意識した。(勝因は)足は使えなかったが気持ちで頑張った。(収穫は)まだまだガードが甘いなということと、もっと駆け引きをして攻撃をしていかないといけないなということ。(3回戦の)相手はリーチが長くてやりにくいとわかっていた。思ったよりは攻めることができたがポイントが全然入っていないという印象で、それが敗因だと思う。相手も途中から距離感がわかってきて、結構打たれる雰囲気もあった。パンチをもらうことがあまり無かったのは良かった。(今大会を振り返って)初戦から相手が強くカッティングがあったりしたが、なんとか勝って経験を積めた。結果はこれまでで一番いいが内容には全然満足していないので、もっと頑張らなきゃと思う。(全日本に向けて)今回の反省点を生かして優勝を狙います。

 

・宮内(済2=習志野)

(今大会を振り返って)全然だめだった。このトーナメントだったらベスト4には入らないとと思っていた。(良かった点は)いつもより力が抜けていたこと。動きが良かった。いつもは力がガチガチに入って相手を倒しにいこうとなるが、今回はスピードでいけた。(1回戦は同じ大学の中村が相手で)精神的にやりづらかったが同い年なので「絶対負けられない」と思っていた。(勝因は)気持ちで勝てたことだと思う。(2回戦で意識したことは)力を抜くこと。ちょっと抜き過ぎてしまったが相手のおかげで勝てた。(3回戦は)相手がガンガンきたので入る気持ちも削られ自分の動きができなかった。(今後は)今年の試合はもう無いが、もう少しライトヘビー級にあった体づくりをしてもっとパワーをつけていきたい。

 

・原田(営1=崇徳)

(2回戦は)正直負けたかなと思った。挑む気持ちで臨んで、気持ちで負けなかったことが勝ちにつながった。金城さんの方が実績もあるし、自分は失うものは何も無かったので、全部ぶつける気持ちでいった。やはり力もあるし、フィジカル面では全然負けているなと感じた。そこを自分が強化すればもっと戦えるようになる。連打につかまると疲れてしまうので、自分の距離をキープして、大振りだったらそれを外して崩していこうと、見せて勝とうとした。ぶつかり合ったら負けてしまうので、大きいパンチは外してディフェンスで勝つようにした。(判定の時驚いた表情だったが)素直にびっくり。わ!という感じ。金城さんにまさか勝つなんて。(収穫は)国際大会で活躍している金城さんと自分のレベルを確認できた。ただ、自分が国際大会に出たからといって活躍できるわけではなく金城さんだからこそ勝てたと思うので、足りないところは吸収していきたい。(決勝は)勝てて良かった。積極的に攻めていったことと全部出し切ったという気持ちに結果が付いてきたと思う。リーグ戦で全く活躍できなかったので、課題をずっとやってきて結果はすぐ出るとは思ってなかったが良かった。だけど油断はせずに、マークもされるだろうから、それでも負けないような選手になろうと思う。試合前に先輩やコーチが「頑張れよ」と声を掛けてくれたのは力になった。自分の勝ち方には安定感がなくて波が出てくると思うので、もっともっと強くならなきゃいけない。まだ少年のフィジカルなので、体をしっかりつくって自分のボクシングを3分3ラウンドフルで戦えるようにしたい。
 

TEXT=高橋雪乃 PHOTO=野原成華、高橋雪乃