記事
2024年夏、4年に1度の祭典五輪がパリで開かれた。無観客での開催となった前回大会・東京五輪から3年。熱い声援であふれるこの大舞台に数々のオリンピアンを育て上げた平井伯昌監督率いる東洋大水泳部から竹原秀一(スポ2=東福岡)、松下知之(国1=宇都宮南)が挑戦。日の丸を背負い、世界と戦った彼らに五輪を振り返っての今の思い、そして今後の展望を聞いた。
男子200m背泳ぎに出場した2年・竹原秀一選手のインタビューをお届けする。五輪では全体8位で予選を突破し、準決勝進出を果たした竹原。迎えた準決勝では感覚とのズレもあり、15位でレースを終えた。彼は代表内定からレース当日までの約4か月間をどんな思いで過ごしたのか。
【プロフィール】
竹原秀一(たけはら・ひでかず)▷スポ2=東福岡▷172㌢・64㌔▷H16・4・27/A型
(写真提供=東洋大学スポーツセンター)
ーー昨年には世界水泳も経験されていますが、五輪と他の世界大会との違いありましたか
世界水泳のときは緊張で全く自分のレースができなかったし、周りの選手の人たちに圧倒されていたところがあった。 オリンピックでは全世界の選手がその一瞬に調子を合わせてくる全員が本気で望んでくる試合という挑戦者としてその会場の雰囲気、レースを楽しめた。
ーー5月のミズノとの合同取材では、平井監督含め、自他共に「調子がいい」とおっしゃっていましたが、そこからの2ヶ月間で何か変化はありましたか
特になく、普段平井先生から指導されていることだけを意識して泳ぎ、タイムを安定させることだけを考えていた。
ーーパリ五輪までの準備期間で、苦しかった時期はありましたか
パリ前最後の大会であったヨーロッパグランプリの3大会で泳ぎが崩れてしまいそのあと山に上がった少しの期間も納得いく練習が積めなかった。 最後の試合、3大会もあったので勝つことよりもいい結果で山に上がってオリンピックにつなげたいという思いがあったので泳ぎよりもタイム、タイムとなってしまっていたと思う。
ーー会場で実際に世界の実力者を目の前にして、感じたことや考えたことはありますか
ウォーミングアップの際にどんなことを話しているのかは全くわからなかったけれど、頻繁にコミュニケーションをコーチと選手で取っていたので、コミュニケーションはとても大切だなと改めて感じた。
ーーレース前の心境としてはどんな気持ちが最も強かったですか
楽しみでした。
ーー400m個人メドレーでは、後輩である松下知之選手が銀メダルを獲得されました。一緒に練習してきた仲間として、その出来事は当時の竹原選手にとってプレッシャー、またはエネルギーのどちらの方が強かったですか
プレッシャーとかは全くなく早く泳ぎたいという気持ちになった。
ーーレース前に平井監督や松下選手とはどんなことを話されましたか
平井先生とはレースプランの確認をしました。 松下とは特になかったですけど、 たけちゃんのあの予選の泳ぎなら絶対いける!って声かけてもらいました。
ーー五輪前にかけられた言葉で、印象的なものがあれば教えてください
平井先生から「頑張っても本番でダメだったら後4年後だからな」という言葉です。 何がなんでもやらないと、という気持ちが奮い立たされました。
(左から)松下、平井監督、竹原
ーー今大会(パリ五輪)では200m背泳ぎで出場されましたが、4年後のロス五輪を見据えて、100m背泳ぎなどにおいても代表入り目指しますか
目指します。
ーーパリ五輪が終わり、すぐに日本インカレに出場されましたが、疲労は取れていましたか
インカレのときは東洋大チーム全体がのっていたので、疲労困憊とかそう言う感じではなくとにかく楽しかったです。
ーー9月のインカレでは、自己ベストを更新されました。その要因はどんなところにあると思われますか
同期の牧野、福田の活躍が東洋大学としても自分の中でも1番大きいと思います。
ーーインカレでは200m背泳ぎで二冠がかかっていましたが、レース前にはパリ五輪代表としてのプレッシャーなどは感じましたか
オリンピック選ばれたからというようなプレッシャーは感じていなかったです。 それよりも松下、牧野、福田が作った波を1番エントリーのやつが崩せないというプレッシャーの方があったと思います。
ーーパリでの1番の思い出は
レース最終日に中国の徐嘉余選手とアメリカのライアン・マーフィー選手とキャップ交換したことです。
ーー竹原選手の考える、背泳ぎの魅力とは
自分は苦手ですが背泳ぎはターン後のバサロキックで順位が変わることがあるので150メートルまで下の方だった人とかが上位に一気に上がってきたりするので、そこが面白いところだと思います。
ーーレース前に必ずすること、ルーティンはありますか
特にないです。その日の流れのままレースに向かいますが、プールに飛び込む前に天井を見て深呼吸をしています。
ーー水泳パリ五輪において、印象的なレースや選手は
それは絶対松下選手だと思います。
ーー水泳において技術面や性格面でのご自身の強みとは
練習中でもほんとにすぐ飽きちゃう性格なんですけど、やり出したら最低限の制限タイムなどは絶対に守れます。
ーー練習と大学生活の両立で大変だと感じることは
遠征などはメールでのやり取りになるので練習ばかりになると先生からのメールを見忘れていたりしてしまう。
ーー最後に、直近の目標と長期的な目標があれば教えてください
直近の目標はジャパンオープン、選考会があるのでそこで1分54秒台に近づけて行きたい。 長期的な目標は入江陵介選手の記録を超えたい。
TEXT=望月桜/PHOTO=鈴木真央