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9日に東洋大では史上初となるJリーグ内定者記者会見が行われた。
そこでスポトウではJ1・アルビレックス新潟内定のDF稲村隼翔(国4=前橋育英)にインタビューを実施。ルヴァン杯決勝でも堂々たるプレーを見せた東洋の壁が、特別指定選手として過ごす新潟での日々や初の内定者会見が開かれる事になった経緯を語った。第2回は新潟の練習に参加する中で感じたプレーの言語化の重要性や高校時代に自身のターニングポイントにもなった、CBへのコンバートについて振り返り、前橋育英高の監督である山田耕介氏(65)への感謝を語った。 (取材日12月5日=聞き手・髙橋生沙矢)
内定者会見で笑みを見せる稲村
ーー去年の夏のインタビューで「A代表が目標」という話をしていただきました。夢に近づいているなという実感はありますか
プロに決まる前からそこ(A代表)は意識してやっていましたし、一歩一歩というところを意識していますが、プロに入ってからよりA代表のすごさを感じます。でも、自分でも試合に出て通用するという思いも出てきました。来年はスタートから代表に向けてやりたいなと思っていますし、来年の夏にはEー1選手権があるので、そこには必ず入りたいなと考えています。
ーー大卒1年目からそこまで見据えている
最近はそういう選手が多いのかなと。同期と話していても海外に行きたいという選手も多いですし、本当に目標設定が高くなっているので、それに追い越されないようにしたいと思っています。
ーー選手としての目標は「プロで活躍する」というものや「A代表になる」などがあると思いますが、サッカーを通じて夢を与えるというのも稲村選手自身の夢としてありますか
自分自身も小さい頃に見ていたサッカー選手から、こういう選手になりたいという思いを持ったので、自分もそのような(憧れられる)選手になれれば良いなと思いましたし、本当にいろんな人から愛される選手になりたいなと思います。
ーー先ほどJリーグに出てみて、代表のすごさを実感したとおっしゃっていましたが、一番すごかったと感じる選手がいれば教えてください
結構試合出てるからもう分からなくなってきちゃったな(笑)。直近だとガンバの中谷(進之介)選手(28)。センターバックでポジションが一緒なのもあるんですけど、オールラウンダーな選手で、自分たちがボールを奪いにいっても何回もはがされたり、逆に自分たちがシュートを打つシーンでは、絶対に正面に立ってブロックしているなという印象があったので、本当にすごいなと思いました。
ーー稲村選手が目指すのは中谷選手のようなオールラウンドなディフェンダー
今は攻撃が評価されがちなんですけど、センターバックとしては、守備にフォーカスしてもらえる選手になりたいなというのが今の思いです。
ーー特別指定選手として多くの試合(19試合)に出場していますが、松橋監督から稲村選手の強みについては、どのような部分だと伝えられていますか
まず左足でのビルドアップのところで、ロングキックもそうだし、縦パスだったりで相手のファースト、セカンドラインを越えていくパスは評価してもらっています。守備でも、ハイラインの中で相手に付いていき、やられないところは評価してもらっているかなと。
ーー守備にフォーカスという流れからこの話をするのも申し訳ないのですが、縦パスや味方に前を向いてほしい時にパスで意識していることがあれば教えてください
言語化するのは少し難しいのですが、簡単に言えば、少し緩いボールを出せば受ける選手はワンタッチではたきやすかったり、ターンしやすかったり。逆に早いボールであれば一気に前を向いてほしいんだなとメッセージが伝わるかなと思いますし、強弱とタイミングは意識して出しています。
ーーそこのうまさが秀でているということ
でも、新潟の選手はそれ(パスにメッセージを込めること)がみんなできるので。そこは自分も今年ですごく成長したと思うし、左利きってところと(パスを出す)強弱が自分の特長かなと思います。
ーーセンターバックでコンビを組むことも多い舞行龍ジェームズ選手(36)もロングボールがうまい
ロングボールもうまいですし、縦パスも一級品の選手。プラス、守備面で貢献できる選手だと思うし、自分も一緒に組んでいる時は毎試合助けられているなという印象です。
ーー新潟の練習に参加する中で一番吸収できたなと思うポイントを教えてください
サッカー的なところでいうと、ポジショニング時の相手との距離だったり、相手とボールの間に入るところの微調整みたいなところで、Jリーグは質が高いなと感じました。新潟の選手はそこにこだわってやっている印象があって、自分もそこは成長できたかなと感じています。
ーーポジショニングの細かさを追求するのはコミュニケーションが大切
そうですね、もうひたすら会話して。後は見て盗んでという事の繰り返しかなと思います。
ーー大学に帰ってきて、プロはプレー時のコミュニケーションが多いという事を還元する事もある
それはもちろんです。自分だけじゃなくて悠太(新井選手)や中山(昴大選手)もそうだし、Jでプレーした選手が(大学に)帰ってきた時に、言葉の数がすごく増えているなというのは自分も感じているので。そこ(コミュニケーション)は本当に大事な事だと思うし、他の選手も感じてくれて、よく話すようになったかなと感じます。
ーーそれが言語化
そうですね。プレーをしっかり言葉で伝える事は大切ですし、それができると再現性の高いプレーができたり、チームとしてのまとまりが出やすくなると思います。
ーールヴァンの決勝の話に少し戻りますが、決勝後、チームに再合流した際に井上監督やチームメートの方々からかけてもらった言葉などはありますか
仲良い人からは「負けてんじゃねぇよ(笑)」と言われたり(笑)。でも、「感動した」というようにも言ってもらえて。負けてしまったのですが、サッカーのエンターテインメントとしてはすごい試合だったのかなと、自分でも思いました。見てる人たちもそう感じてくれていたので、監督や後輩もそのような言葉をかけてくれました。
ーー前橋育英の山田監督からは何かご連絡はありましたか
内定した時に話しましたが、それ以降はあまり話してないですね。
ーー今プロの舞台で活躍をする中で山田監督に伝えたい言葉はありますか
感謝を伝えたいというのはありますね。高校時代にコンバートしたセンターバックで、プロでやれている事は本当に感謝ですし、あの高校時代があったから今まで頑張ってこれていると思うので。感謝を伝えたいなと思います。
ーーコンバートのきっかけは
それまでサイドハーフやボランチ、サイドバックをやったりとポジションが定まらないという事が続いていて、(前橋育英高が)優勝した代に角田涼太朗さんがいたことと、自分も(角田選手と同じ)左利きで身長が伸びたという事で山田監督が「一回やってみよう」と言ってくれました。自分もそこで特長を出せた事でセンターバックになったという形です。
ーー稲村選手がプレーしてきた中でポジションとして刺さった
一番自分の特長が出やすいなというのは感じました。
ーー身長の伸びというのはセンターバックとして大切な部分
今の時代は185㌢なければ海外には行けないと言われたりしますし、自分も小さい方ではあるので、伸びてほしいなと思っています(笑)。
ーー高校生当時、身長を伸ばす為に努力していたことはありましたか
もうひたすら寝ていた印象があります(笑)。時間関係なくとりあえず寝て、食べてという事をやっていました。
ーープロ野球の大谷翔平選手(30)も10時間寝る、という話を聞いたことがありますが睡眠が一番大切
睡眠はどの年齢でも大事だと思うし、今Jリーグも大学も出て試合数が増える中で、ちゃんとした睡眠をしないと疲労が抜けないなというのは感じています。
ーーさらに話が戻ってしまうのですが、ルヴァン決勝の前日はどのように過ごしていましたか
どんな感じなんだろ(笑)。緊張しないタイプなのでいつも通り過ごしていましたね。いつもの一試合という感じで過ごしていました。
ーー意識しすぎるのも良くない
いや、気持ちの高め方は人それぞれかなというか。自分は試合の前にそういう気持ちになっていくだけなので、前日から気持ちをつくっている選手もいると思います。
◇稲村隼翔選手インタビュー◇
第1回:「大卒2年目の選手が難しくなる」奮闘の中で頭に残る松橋監督の金言
第3回:12月15日公開‼