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2024.12.17
コラム

第861回 届かない声 執筆者・近藤結希

 お久しぶりです!2年の近藤です。昨年も年の瀬が近づくこの時期にコラムを書かせていただきました。時が経つのはあっという間で、もう1年!?と思う反面、一つひとつを思い出してみれば、本当にいろんなことがあったなぁとしみじみしてしまいます。昨年以上にたくさん取材に行き、記事を書き、紙面を作り…。ひとつの大きな夢もかないました。伝えたいと奮闘してきたこの1年。私は成長できたでしょうか。少しでも前に進めてればいいなと思うこの頃です。



 さて、私は今、ゼミで町田その子さんの「52ヘルツのクジラたち」という作品に取り組んでいます。

みなさんは「52ヘルツのクジラ」を知っていますか?世界で一頭しかいない52ヘルツで鳴くクジラは、他のクジラたちには聞こえない周波数のため、いくら声をあげてもその声が仲間に届くことはありません。このことから「世界で最も孤独なクジラ」と呼ばれているそうです。この作品はそんな52ヘルツのクジラのように、届かない声を抱える人たちの物語です。


 私はこの本で52ヘルツのクジラの存在を知りました。広い海のなかでたった一頭の52ヘルツで鳴くクジラ。切なさの反面、どこかその強さを感じませんか?私は誰にも届かない声で鳴き、たったひとりで戦っているこのクジラから自分だけの力で生き抜く生命力や、孤独ゆえの強さを感じました。


 誰にでもひとりで抱えている「52ヘルツの声」はあると思います。どんなに心を開いている友達にも、家族にでさえ言えない思い、伝えられない言葉はあると思います。それでもみんな「届かない声」を抱えながら、ひとり戦っているんだなと思うと、自然と勇気が湧いてくるような気がします。




 今年に入ってインタビューをさせていただく機会が増えたことで、もっと上手に本音を聞き出せるようになりたいと思うと同時に、どんなに頑張っても、インタビューが上達しても、その人の心の全てを知ることはできないし、どれほどのことを抱えているのかも、乗り越えてきたのかも、全部を知ることはできないんだなと痛感します。だからこそ、もらった言葉の中で最大限伝えたいし、その「見えない部分の努力、届かない声がある」ということを大切にしたいと思います。


 それに言葉ではなくても、私たちには競技を通して「52ヘルツの声」を聴くチャンスがあります。取材で目にする真剣に競技に向き合う姿や仲間とともに戦う光景は、言葉にはならないそれまでの日々を物語っているような気がします。見えない部分、声には出さない努力や思いまで、感じ取って伝えていきたいです。



 私自身の心もたくさん変化した1年でした。決してポジティブな気持ちだけではいられなかったけど、それでもずっと変わらなかったのは、いつもスポトウを1番に考えていて、私にできる最大限で読んでくださる方々に伝えたいという思いでした。


 届かない声を届けたい。ここ東洋大学で頑張る人たちの姿を、努力を、思いを届けていきたい。スポトウでの活動も早半分を過ぎてしまいましたが、残された時間で精一杯お伝えしていきます。


 1月2日からは箱根駅伝が始まります。もちろん楽しみな気持ちもあるけど、ちゃんとお届けできるのか、不安もたくさんあります。至らないことばかりで、準備の段階からすでにたくさん手伝ってもらって、頼ってしまっているけど、私にできる最大限で、スポトウにできる1番良いものをお届けできるよう精一杯頑張ります。そして何よりも、東洋大学の選手の方々が笑顔で大手町に戻ってきてくれることを心から願っています。


 長々とつづってしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。ぜひ1月2日、3日は東洋大学へのご声援、よろしくお願いいたします!