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第97回日本学生氷上競技選手権大会の開幕まで残すところあと4日。スポトウではインカレカウントダウンとしてアイスホッケー部の皆さんのインタビューをお届けします!
4日目は3年生のFW柚木辰徳選手(ラ3=サウスケントスクール)。「適当なことをしたら自分が許してくれない」とアイスホッケーが好きで常にストイックに向き合ってきた姿がうかがえる柚木選手。ここでは『前編』として今年のチームの姿や、ここまでの振り返りをお聞きしました!(聞き手=髙橋生沙矢)
◆柚木辰徳選手(ラ3=サウスケントスクール)
東洋ホッケーとは『規律』
◆秋リーグを振り返って
ーー秋リーグを振り返っていかがですか
秋リーグは1週目やって明治には負けたんですけど、2週目でいくらでも取り返すチャンスがあるのは分かっていたし、そのほかの試合で中央戦もいい勝ち方ができたというか勝ち切れたというところでどんどん自信がついていました。いろんなシチュエーションが変わりながらや相手の戦力的なところの変化もあったものの、やっぱり自分たちが春負けてから積み重ねてきたものが上手く表現できた試合が特にセカンドリーグは多かったし、できてる時間帯も多くあったので、勝てないかも見たいな瞬間はなくて「自分たちのホッケーをやれば勝てる」という共通認識はありました。
ーー東洋は「常勝」というイメージがありますが、監督やチームではどのような意識の共有がされていますか。
スタッフ陣が「勝たなきゃいけない」という言い方等は絶対にしないものの、やっぱり勝ちにいかにこだわってプレーするかみたいなところは言われているし、自分たちでも認識しているので、「どれだけ勝ちにどん欲になれるか」というメンタル的なところはミーティングを通してでもですし、練習やビデオミーティングでも突き詰めています。勝ちを目指す、貪欲になれるチームというのはすごく進んでいるのかなと感じます。
ーー秋の試合を振り返って、ファーストリーグの明大戦での「敗北」という結果から学んだことはありましたか。
今年は夏の合宿で苦しい思いをしてもがいてきたチームなので、そこでの負けは糧になっているし、その負けがあったからこそ自分たちの成長があってそこに気づいた時にぐっとチーム力が上がったなと感じました。もちろん秋の明治戦も悔しさはあったんですけど、何をやっても勝てなかった時期があったので、夏の経験が大きかったのかなと思います。
ーー夏の勝てなかった時期からチームで具体的にどういう部分を突き詰めて今につなげましたか。
感じ方はそれぞれあるかもしれませんが(色紙を指さして)「規律」みたいなところが夏の段階のチームになかったところがあって、どうしても上手く試合が運べないと、自分が常に気持ちよくプレーできていないとパフォーマンスが上がってこないみたいな選手がいたんですけど、やっぱり規律をもって自分がやるべきプレーをできる選手が少なかったというのは僕の中で感じていたところはありました。しかしそこがどんどん「自己犠牲=自分は苦しいけど痛いけどチームに必要なプレーに徹底できる」選手が増えてきたイメージで、もちろん練習の質とかも上がってきていた中で、規律をもってプレーできる選手が増えたことにあるのかなと思っています。
ーー「規律」という要素は常に意識されていますか。
個人的には1番必要なのかなと思っています。チームワークって結構抽象的だなと思うんですけど、行きつくところまで突き詰められているチームはすごい強いんじゃないかなと思っています。
ー一番印象に残っている試合を教えてください。
最終戦ですかね。勝った方が優勝というところで明治は選手が何人か抜けている状況だったんですけど、中大など相手にすごくいい試合をしていたので、もちろん僕たちも明大戦より前にいい試合はしていたので簡単な試合にはならないだろうなというモチベーションの中で最大限の準備ができたと思いますし、あれだけ点数差がついたというのはあまり今までの記憶にないので、もちろん明治のアップダウンの大きさはありますが、60分やり切れる力、チームとしての体力があるのはうちのほうだなというのは感じた試合ではありました。そのなかであのパフォーマンスができるというのは積み重ねの違いだったんじゃないかなと思いました。
ーー実際に明大で得点を決められていましたが、その時の気持ちをお聞かせください。
チームには森田琉稀亜や大久保魁斗、田中蘭李斗など「エース的な存在の人」というのはもちろんいて、その選手たちが点数を決めてくれて勝ち切れた試合っていうのはすごく多かったので、その部分で僕はもちろん数字を追い求めるのも大切だなとは思うんですけど、数字はエースたちに任せて「やりたがらないプレー」(痛かったり苦しいプレー)っていうのをチームのために徹底するというのを今年は特に意識して取り組んでいました。なのでゴールを決めれてうれしいというのはあったんですけど、チームに貢献できたという意味合いで一番印象的だし良かったんじゃないかなと思います。
◆全日本を振り返って
ーー横浜GRITSとの試合前はどのような気持ちでしたか。
チームとしては本当に過去3年間の全日本はバックスとやっていて、惜しい試合もあったんですけどそこでやっぱり僕が見た感じだと対等に試合ができる可能性はすごく皆感じてたんじゃないかなっていうのはあって、その中で横浜GRITSは直近の試合で他のプロに勝ち星をつけていたんですけど、全日本になると全くランキングの情勢は毎年変わるし、やっぱりどのプロ選手に聞いても「学生相手はやりずらいよ」っていうのは聞いていたし、そういう要因も絡まっていい意味で高ぶることもなく、いつも通りのテンション感、やることをやるだけという共通認識は例年に比べて高かったんじゃないかなと思いました。また下から上を見上げるんじゃなくて、しっかりと準備をした上で対等な目線から相手に挑めたというのもチームとして成長した部分だと思います。
ーー対等な目線から挑めた要因とは何だと考えていますか。
経験も大きいと思います。毎年全日本で挑んできて勝てなくて来年こそは来年こそはというのを繰り返していたんですけど、その中でも要因として今年の春夏の積み重ねのところで自信をつけてきて、プレーできていたところで秋リーグを獲れて、すぐ全日本に移れたのも大きいと思いますし、横浜GRITSの前の日もちゃんとした試合運びで勝てていたし、練習やトレーニング含め全日本に合わせて準備が整った状態で挑めていたのが要因としてあると思います。
ーー学生という中でもしっかりとピーキングをするのは東洋ならではだと思いますか。
ここまでのレベルでアイスホッケーに向き合えてるチームっていうのは東洋だけだと思うし、それはスタッフ陣自身もトップレベルでやってきた方々ばっかりなので、彼らが現役時代に感じていたことややっていたことをそのまま僕たちに伝えてくれるので、そこはトップレベルの環境ですべてがあるし、東洋以外ではできないなと思います。
ーー横浜GRITSとの試合内容を振り返っていかがですか。
先制出来たっていうのはすごく大きいんじゃないかなと思うんですけど、その後に追いつかれて逆転されて。でもベンチの中で僕自身もそうですけど、スコアは負けていても他の選手からも「これ勝てるぞ、やれるな」みたいな感覚があるのを感じました。負けているときでも勝ちを意識し続けられたというのはいいことだったんじゃないかなと思います。
ーー「これ勝てるぞ、やれるな」と思えたポイントとは何ですか。
去年とかはどうしても相手のスピードだったりとか相手の体の強さに一歩引いてしまったところがあったんですけど、そこが毎年高いレベルのプロのチームとやっているというのもそうですし、俺らでもそこの体力的とかスピードに負けてないと思っていた点で「戦えるぞ」と思えている選手が多かったのが大きいと思います。
ーー勝った瞬間はどのような気持ちでしたか。
本当に不思議な感覚というか、なかなか感じたことのない感情になりました。僕自身もプロからクビになって大学生になって、「プロチームに勝つ」っていうのをすごく目標にしてやっていたのでそこがやっぱり感情としては「ほんとに勝っちゃった」みたいな。目指してきたのは当然そこだし、それに向けて毎日100%努力をしてきたというのはあるんですけど、いざ勝ってみると嬉しいじゃないし、ほっとしたじゃないし…いろいろなものが混ざってぐちゃぐちゃな感情ではありました。
ーー準決勝のH.C.栃木日光アイスバックスとの一戦は地元チームであり、元所属チームですが振り返っていかがですか。
元々プレーして他チームっていうのはあるんですけど、べスト4と達成した状況でアイスバックスと戦うというのが初めてで、アイスバックスに対する思いはありましたがそれよりも次の目標に対して気持ちを持っていくことに重きを置いていました。やっぱり去年までとは違う感覚だったなと思います。
ーー例年のアイスバックスとの試合と比べて何か変化はありましたか。
毎年アイスバックスとやっていて、選手が「手を抜いてくれなくなった」というか、例年やっぱり「対学生」の試合なんですよね。見てるだけだと難しいかもしれませんが、コンタクトのレベルやスピードが学生に合わせているような感じなんですけど、それが毎年薄くなっている感じはしていて、それもすごくリスペクトも感じるし、対戦相手として対等に見てくれてるなとは毎年感じてきていますし、100%で当たってくれるのは嬉しいし、いい刺激になりますね。
ーー今期のMVPだなと思う選手を教えてください。
ほんとにみんな個性があって、いろんな役割をもってチームに貢献してくれたっていうのはあるんですけど…(考え込んで)難しいね(笑)。壱桜か雅斗かなって思うかな。壱桜は2年生ながら毎試合チームを助けてくれる動きをしているし、そこは救われた部分もあるし彼の人間性はだれもが認めるようなすごく綺麗な心の持ち主というか、すごくアイスホッケーに対してすごく真摯に向き合っている印象であるし、そのうえで数字を残すというのは難しいことだけど両立しているのはチームメイトとしてかっこいいなと思いますし、あいつも覚悟をもって競技に挑んでるなっているのは感じるので、みんなそうですけど信頼しているし尊敬しています。雅斗は春夏まったく勝てなくてその時期にキャプテンとして背負ってきたものはあると思いますし、昨年の中島照人(令6卒=現HC Merano所属)や一昨年の石田陸(令5卒=現HC Merano所属)と比べられることも多かったと思うしそれも彼の耳にも届いてるであろう中でプレッシャーは大きかったと思うんですけど、ずっと耐えてきたというか、どう殻を破ってやろうかみたいなところは生活や練習への姿勢見てても全くブレてないなというのはあったので、1番チームを想って活動してるというのはあります。その点で苦しかった時期が長くて、でも去年でも一昨年でもなく今年プロに勝つチームを作ったっていうのはあいつの功績じゃないかなと思います。
柚木選手ありがとうございました!!
明日は『後編』をお届けします!
TEXT/PHOTO=岡本后葉