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2015.10.09
サッカー

[特集:サッカー]後期第2弾 努力に勝る天才なし 〜徳市寛人〜

大学ではボランチを一角を担う徳市

大学ではボランチを担う徳市


  東洋大学が創部初の全国大会へ進出し、歴史的な1勝を挙げた。この歓喜の輪の中心には、決勝点を決めた彼がいた。背番号12・MF徳市寛人である。

  徳市は豊富な運動量と危機察知能力で、相手の攻撃の芽を摘む中盤の潰し役を担う。彼は高校サッカーの名門・東福岡高校の出身。高校時代は最後尾からチームを支え貢献した。さらにキャプテンとしてチームを牽引し、「結果を残すことと、チームの形を意識してやっていた」と個人よりもチームを尊重してプレーしていた。

  高校卒業後、東洋大学へ進学する。「九州から見ていて、関東リーグは一番レベルが高いと思っていたので、その環境でやりたかった。その中で東洋大は良いサッカーをすると聞いていた」と、この大学を選んだ。東福岡高校の伝統的なサイドアタックとは異なり、東洋大はポゼッションサッカーを志向する。「高校ではただ漠然とFCバルセロナに憧れてポゼッションサッカーがやってみたいと思っていた。だけど実際に東洋大へ入ってみたら、選手たちの戦術への知識や技術の高さに、自分は今まで何をやってきたのかとショックを受けた」。さらに不運なことに、1年生の入部前のセレクションで怪我を負ってしまう。当分は外からサッカー部を見る日が続く。「こんなにボールを回すのかと。まずはここに追いつかなければいけないと外から見てて感じていた」と当時の心境を語った。新たなスタイルに戸惑いながらも、ひたむきに努力を重ねた。大学では高校のポジションとは一つ前のボランチとして、自分の立場を確立する。

  彼の名前を世に知らしめたのが、今年の夏に行われた総理大臣杯2回戦・大体大戦。1点を先制するも終了間際に同点にされる。延長戦も頭にちらつく状況で、徳市は後半ロスタイムに起死回生の勝ち越しゴールを決めた。普段は縁の下の力持ち的な存在でチームを締める徳市だが、この日は途中出場ながら、試合を決める1点を決めて喜びを爆発させた。さらに今夏は天皇杯予選で、プロリーグJ3・町田ゼルビアと対戦。様々なカテゴリーのチームと対峙して「自分の長所が彼らの中では普通なのかと感じた」。まだまだ課題もある。「自分の持ち味に、プラスアルファでポゼッションの技術であったり、タイミングをもっと工夫したい」。潰し役であるだけでなく、自分からも積極的にボールの支配に絡む姿勢を見せる。

  目標とする選手は、元FCバルセロナでキャプテンを務めていたDFカルラス・プジョルの名を挙げた。「特別に技術の上手い選手という訳ではないが、劣勢の時にチームを鼓舞する熱血さはとても大事だと感じさせられる。技巧派なバルサのメンバーの中でも、あれだけ出ているのは凄い」。インタビューには淡々と話をしてくれる徳市だが、試合中は熱くチームを鼓舞している。その姿はプジョルに通ずるものがあるのでないか。そして将来の目標として当然サッカー選手を一番に置いている。だが根底として「人間的に頼られたり、難しい仕事でも任せてもらえるような人になりたい」。徳市の言葉の数々から強い責任感とキャプテンシーが感じられた。

  母校の校訓である「努力に勝る天才なし 意思あるところに道あり」を胸に努力に励む。高い壁だろうとも、どんな敵であっても、ボールを奪いに行く。高い向上心を持った徳市寛人のさらなる飛躍を見届けたい。

町田ゼルビアにも体を張った守備を見せた町田ゼルビアにも体を張った守備を見せた



◼︎徳市 寛人(とくいち ひろと)

171㌢/69㌔


H6・6・22


血液型/A


出身/東福岡高校


好きな芸能人/宮崎あおい


好きなアーティスト/Mr.Children


好きなサッカー選手/カルラス・プジョル(元FCバルセロナ)


好きな言葉/努力に勝る天才なし 意思あるところに道あり


第3回は来週、10月17日(土)に掲載します。

お楽しみに!



TEXT=藤井圭