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卒業企画初日は、硬式野球部の嶋村知浩主将（法４＝栄北）。
昨秋行われた東農大との１部２部入替戦2回戦での本塁打、そしてあの大歓声が印象的な嶋村主将だが、そこに至るまでには数々の苦難や葛藤があった。
憧れを抱き、東洋大硬式野球部の門を叩いた。入部直後から名門故のレベルの高さに圧倒されながらも、たゆまぬ努力を積み上げてきた。「一番下手な中で入ってきた」と話したが、四年時には主将に大抜擢。チームに欠くことの出来ない、大きな存在となった。 3年秋からはほぼ全ての試合でベンチ入りした。試合への出場の有無に限らず、ベンチから常に声を出し、劣勢に立たされた時には仲間を鼓舞し続けた。そのまっすぐな姿勢から、人望も厚く、リーグ戦最終戦でも上尾球場に嶋村コールが響いていた。逆境を乗り越え、たどり着いた最高の景色。今までの努力が報われた瞬間だった。嶋村主将が過ごした、４年間の軌跡を写真と振り返りインタビューでお届けする。（聞き手＝一ノ瀬志織）
色紙には「全ての人へ感謝」と記した
ーー初めに、東洋大に入学したきっかけを教えてください
高校の監督が東洋大学出身だったのと、甲斐野さん（Ｈ30年度営卒）、上茶谷さん（Ｈ30年度法卒）、梅津さん（Ｈ30年度営卒）の東洋三羽烏の活躍やドラフトを見て、名門のすごい大学だと知って、自分の中で強い大学だとずっと思っていて。東洋大学で野球をやるのはすごい特別なことだと思っていたのがきっかけです。
ーー入学してみていかがでしたか
まず同級生のメンバーを見た時に、高校野球で有名なところから来た人ばかりだったり、プロの弟だったり、タレント揃いというかすごいメンバーだと思いました。いざ入ってみて、現巨人にいる佐々木さん（Ｒ３年度営卒）ら４年生のバッティングだったり、一年先輩の細野（Ｒ５年度総卒）さんだったり今となってはプロにいる人も目の前にいて、高校まででは味わったことのない環境だったので、同じ野球をやっているのにレベルが違いすぎて、自分もやっているというよりも観客とかで観ているような感じ、一緒にやっているのに圧倒される部分が多かったです。
ーーそれは初めての感覚でしたか
初めてでした。高校の監督には、勉強でいう早慶上理に行くくらい過酷なところと言われたので、入ってみて打った一球一球の打球だったり、守備が上手かったりレベルの違いを感じました。その中で一番印象に残っているのが佐々木さんのシートバッティングで、自分はセカンドを守っていて打球を受けた時で、これが大学野球４年目のキャプテンと１年の自分の違いだと思いました。
入寮日
ーーまず１年目を振り返って
１年目は杉本前監督に、バックホームで連続で暴投して外されたことが一番記憶に残っています。あと、寮生活が初めてだったので掃除だったりグラウンド整備だったり、そういった寮の環境や生活も印象的です。野球をやるのも必死で、なおかつ寝てる時間以外は気を張るという１年間だったなと思います。
ーー次に２年目を振り返って
２年生になる前の１月に、杉本前監督と面談をして、秋から冬にかけて学生コーチになってもらうからと打診を受けて始まった２年生でした。崖っぷちにいるような１年間で、監督の起用法上、なかなかオープン戦でも出れず紅白戦でしか結果を残せる場面がなかったので、どうにかしがみついて野球をやっていた１年間だったなと今振り返ると思います。何もかも必死にやっていたので、そこは一番２年生の中で印象に残っています。
日々、練習し続けた
ーーアピールチャンスがなかなかもらえない中で、焦りやプレッシャーは
自分は一番下手な中で入ってきて、もうそこから上がるしかないと思って割り切ってやっていたのと、監督にいつ呼ばれて裏方に回るように言われるかに怯えていたというか、言われたら終わりだなと。言われないように下手でもできることはあるので、それを、ずっとやっていた感じでした。
ーー苦しかった２年生を経て、迎えた３年目が始まる時の心境は
監督が井上さんに代わられて、そこで自分の立場が大きく変わりました。面談でプレーはまだまだだけど、やる姿勢とか気持ちの面だったり日々の生活を見てもらえて、Aチームに上げてもらって。３年は大学野球を最後まで続けるかどうか、社会人野球をやるかどうか、何においてもキーポイントであり、分かれ道になると思ったし、レギュラーになるならないベンチに入る入らないも含めて、野球に対して全てがかかった１年だと思っていました。最初から死ぬ気でやろうと、飛ばせる所まで飛ばしてそれでダメだったらしょうがないという気持ちでやりました。
公式戦ではボールボーイとして試合を観る日も（右）
ーー３年春、国士大戦でリーグ戦初出場
もちろんうれしかったです。ずっとボールボーイとかで試合を見ていたので、今度は自分がユニホームを来て試合に出る側になって、チームの代表としてグラウンドに立っているんだなっていう責任を感じました。やっぱり改めて、１部でやりたいなと思った瞬間でした。入学の志望理由にも神宮で東洋のユニホーム来て試合をやりたいと書いていたので、やっと来れた通過点だなと思いました。
リーグ戦初出場を果たした国士大戦
３年生での背番号は34だった
ーー春、１部昇格の瞬間はスタンドでした
１番は悔しかったです。でもその夏、結果を残して、秋神宮でプレーするっていう明確な目標ができたなと思います。１部昇格の瞬間、グラウンドにいれなかったのは悔しかったんですけど、それからは秋に向けて自分はどういう立ち位置ならベンチに入れるのかを考えてやるようになりました。
ーー秋は試合にも出場し、全試合に帯同
神宮でプレーすることは叶ったのと、全試合ベンチに入ったっていうのは、自分の中で収穫だった秋シーズンだったなと思います。その中でも試合に出ることが少なかったり、やっぱり今まで出れてこなかった経験値不足を感じました。入替戦を入れなければ、ヒットも打てなかったわけなので、最終学年である次の春、どういう練習をすれば３年間十分に積めて来れていない、実戦のピッチャーに対する経験値だったり、守備の経験値を上げていけるか考えていました。
ーー１部で出場したのはこのシーズンのみだったが感じたことは
２部と違って、最下位にならなければ良いって野球の戦い方をするものでした。最後の一戦、ここを勝つってことが難しかったなと感じました。あとは、僅差の試合で、やっと点を取ってもすぐにまた取り返される、勝ちきることは簡単でないと感じました。他にも、ピッチャーのレベルも高いなと感じました。
ーーその後の入替戦では指名打者として初のスタメン起用でした
あの日は緊張しました。試合前、神宮の周りをずっと外周していました。今思うと、打とう打とうって必死でした。チームのためにもそうですけど、自分がヒットを打つって考えすぎて、気持ちの面で焦りがありました。あと、結果を出さないとグビになるって気持ちも（笑）。空回りしていたなと思います。
ーー昇格直後の降格を受け止めて
来年の春に上がってすぐに戻って（神宮で）やろうって気持ちでした。謝るよりも、来年春上がるおしか言えないと思いました。自分たちには来年があるので引きずるのではなく、優勝して入替戦で勝って１部に戻ってくるって思わないといけないなと。
ーー改めてチームとしても個人としても変化の大きかった３年目の全体を振り返って
すぐにB（チーム）に落とされるかもしれないという崖っぷちから始まって、最後はスタメンで出ることができたので、自分の大学野球人生では一番、立ち位置が変わった一年間だったなと思いました。もともとはオープン戦でAチームでひとりだけ、ベンチにも入れなかったこともあったので。自分の実力が伸びたとは言いきれないけれど、ステップアップできた一年間でした。
ーーだんだんに自信も？
いや、まだ自信にはなりきってなかったです。まだ結果が出たわけではなかったです。まだまだこれから、やっと戦えるという感じでした。
ーーその後、主将に就任した時の心境
この代は多分、厳しいこともたくさん言われる代だと思ったのでその覚悟をしつつ、負けて落ちてキャプテンになったので、練習だったり私生活だったり、色んな面でシビアになる一年だと思いました。一つ上の代は試合に出てる人も多かった中で、自分たちの代はピッチャーと数少ない野手だったので、その中でどうやっていくべきか、とても考えていました。正直、不安もすごくありました。東洋大は１部が似合うチームなので、すぐに上げないといけないという責任がありました。
ーー４年間で１番大変だったこと
１番はチームをまとめることです。物理的に目に見えるものでも正解があるものでもないので。最終までまとまっていたか正直分からないんですけど、、、。この代で試合に出ている人が多くなく自分も出れていなくて、一個下の代の方が多かったので、プレーに関して自分が言うのを躊躇したこともだいぶありました。なので、その中でチームをまとめるのは苦労しました。中井（営４＝花咲徳栄）学生コーチがいてくれたので、上手くできたんじゃないかなとも思います。
ーー４年間で１番悔しかったこと
１部で試合に出れたのがワンシーズンだけだったことと、もう少し早くこのバッティング、打席での心構えを身につけられたら良かったと思います。あとは、４年の春に一発で１部に上がりたかったです。
ーー１番うれしかったこと
胸を張って引退できることです。この代で良かったと胸を張って言えることです。あと、個人的にはこの４年間、最後まで東洋大学で野球ができたことがうれしいです。キャプテンとしては最後に勝って１部に上がれたことがうれしいです。この仲間とも最後勝ちで笑顔で終えられて良かったです。
ーー「１番苦しかった」と言っていた、この最後の１年はどんなものでしたか
本当に野球人生の中で１番苦しんだ年だったなと思います。野球も私生活もキャプテンとしてどうまとめればいいか悩みました。３年生にも任せるところは任せて、間違っていたら自分たちが正すところは正す、試行錯誤の１年間でした。
最後の記者会見では井上監督と共に笑顔を見せた
ーー今年度はどんなチームでしたか
みんなが明るくて伸び伸び野球をやったチームだなと思います。
ーー同期はどんな人たちでしたか
いい意味でも他の意味でも面白い人たちでした。ベンチにいたら明るく盛り立ててくれて、いい仲間だったなと思います。
記者会見を終え球場を出ると同期たちに迎えられた
ーー４年間を通してレギュラーを獲ることの難しさを感じられたと思いますが
自分はもともとレギュラーではなくて、獲りかけたけど獲れなかった人で、やっぱり結果を残し続けなくちゃいけないので。守備でも打撃でもどんなに調子が悪くても、結果を出すことをとにかく考えていました。ずっと野球のことを考えて試行錯誤をして、って感じでした。努力をしても100%結果に出るわけではないので、難しいと感じました。
ーー新チームはどんなチームになってほしいですか
強いチームになってほしいです。盛り上がる時はお祭り騒ぎくらい騒げる奴らなので、あとは自信をつけて野球をやればいい結果は出ると思います。それくらい力のある後輩たちなので、自信を持ってやってほしいです。
ーー４年間で一番印象的な試合
この４年間で経験した全ての入替戦です。これが戦国東都なんだなって身をもって感じたからです。
ーーこの４年間で感じた戦国東都とは
実際には、１部と２部の実力の差があまりないと感じました。また落ちたらすぐに上がらないといけないんだと、でないとどんどん１部が遠くなってしまうと感じました。
ーー大学野球で野球人生に終止符を
都市対抗に行くようなチームで野球をやりたいという思いはもちろんあったけれど、3年のタイミングでそこに行けるような結果を残せず、進路を決める時に、キャプテンとしての役割を最後まで全うして、野球人生を終えようと思いました。
最後のオープン戦
ーー野球人生を通して得たもの
17年間の野球人生を通して、諦めないことの大切を一番学びました。特にこの４年間は、途中で消極的になったら終わっていたかもしれない時が何度もありました。自分の限界を決めずに、諦めないでやり抜くことが大事だと感じました。やりきれて本当に良かったです。
ーー最後に、色紙に込めた思いを教えて下さい
自分はこの４年間もそうなんですけど、この野球という競技をやって来れたのは両親、グラウンド環境、道具、指導者、仲間、先輩後輩全てのお陰だと心から思っています。最後になりますが、学生コーチかマネージャーになっていたかもしれない自分が、最後まで野球をできて、キャプテンという役職に就けて、井上監督との出会いには、特に感謝しています。
◇プロフィール◇
嶋村知浩（しまむら・ともひろ）
生年月日／2002・８・19
身長・体重／172㌢・75㌔
TEXT＝一ノ瀬志織／PHOTO＝嶋村主将提供、一ノ瀬志織
