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涙をのんだあの日から半年。昨年の日本インカレ4×100mリレーのレース後、歓喜に沸くライバルを横目に立ち上がることができずにいた東洋大のアンカーは、表彰台の頂上で笑顔をあふれさせた。
4月25日(金)〜4月27日(日)にかけてレモンガススタジアム平塚で日本学生陸上競技個人選手権大会が行われた。男子100mに東洋大からは4名が出場。急成長を遂げる大石凌功(スポ3=洛南)が優勝を果たした。
男子100m予選に東洋大から成島陽紀(ラ4=東洋大牛久)、馬原浩志郎、大石、栁田大輝(文4=東農大二)が出場。成島と馬原は惜しくも予選敗退となり、大石と栁田が午後に行われる準決勝へ進んだ。
馬原(左)と成島
追い風に恵まれた準決勝。「いい風が吹くことはずっとわかっていること。その条件を無駄にしないために準備を重ねてきた」。昨年、追い風参考記録ではあるものの、栁田が9秒台を出したのもこの舞台だった。
準決勝2組に登場した大石は、「落ち着いて中盤から後半を走れた」と、伸びのある走りで自己ベストを0.04秒更新。堂々の1着で決勝へ進んだ。
続く3組でも鋭いスタートから首位を独走した栁田が組1着。フィニッシュタイマーは10秒09を映し出していた。10秒0台を目指していたという栁田。「合格点」ではあったものの、「いい追い風が吹いていて、もう少しいい記録を出したかった」と雄叫びをあげ、悔しさをあらわにした。
翌日の決勝は栁田は棄権し、大石のみの出場となった。「出た瞬間に『まずい』と思った」と、課題の残るスタートに。しかし、「加速で冷静に対処できた」という後半で追い上げると抜け出し、1位でフィニッシュ。ゴール直後は不安げな表情を浮かべていたものの、結果が表示されると力強く拳を振り下ろした。
昨年度は学生大会では入賞ラインにいた大石。一気に頂点まで上りつめた飛躍のきっかけは、昨年の日本インカレだった。4×100mリレーでアンカーを務めた大石は、1番手でバトンをもらいながらも、早大のアンカーにわずか0.02秒差で逆転負けを喫した。
喜びに沸く早大の選手らを横目に、涙を流した大石。「目の前で学生記録を塗り替えられたことが本当に悔しくて、半年間頑張ってきた」。心に残り続ける悔しさをバネに、練習を重ねてきた。
昨年の日本インカレ4×100mリレー、ゴール直後
努力は、結果に結びついた。ユニバーシアードの代表に選出された大石は今年7月、世界の舞台に立つ。そこで決勝に残ること、そしてインカレのリレーでは37秒台の学生新記録で次こそは優勝へ。急成長を遂げる大石の、リベンジの年が始まる。
◼︎大石凌功
ーー今日のレースを振り返って
スタートの感触は正直あまり良くなくて、出た瞬間に「まずい」って思ったんですけど、加速のところで落ち着いて対応できたので、そこが勝因かなと思います。
ーー自己ベストを更新した準決勝のレースを振り返って
今日よりも落ち着いて中盤から後半を走れたので、そこがタイムにつながったかなというのと、今日は気温が低くて少し寒かったので、そこも関係しているのかなと思います。
ーー飛躍のきっかけは
それは去年の日本インカレで僕が4走を走って、0.02秒差で負けて学生記録を目の前で塗り替えられて。本当に悔しくて半年間頑張ってきたので、それがきっかけかなと思います。
ーー次の目標
7月にユニバーシアードがあるのでそこでしっかり勝負するというのと、タイムとしては10秒08を目指しているので、そこに向けてしっかりやっていきたいなと思います。
ーーリレーでのリベンジも
そうですね。そこはもう学生記録だけじゃなくて、37秒台も目指しているので、そこも同時に頑張っていきたいなと思います。
ーーこれから強化していきたい部分は
それは完全にスタートで、今日も出遅れた形になってしまったので、そこを強化できれば目標の10秒08にも届くと思うので、とりあえずスタートに注力していきたいと思っています。
ーー昨年、スタートを改良中と言っていたが
それはある程度はまってきていて、その結果が今日なんですけど。今度はスタートを出るだけじゃなくて、そこからどう加速につなげるかというところと、単純に筋力がまだ足りていないので、その2点ですね。
ーー今年の目標
とりあえずタイムとしては10秒08を目標にするのと、リレーでは日本インカレで37秒台の学生新記録、7月にあるユニバーシアードで決勝に残るという3つを目標にしていきたいと思います。
◼︎ 栁田大輝
ーー予選、準決勝のレースを振り返って
大体事はできたし、合格点をコーチからももらえるレースだったかなと思います。
ーー目標としていたことは
10秒0台が出ればそれでいいと言われていて、それができたので良かったかなと思います。
ーーゴール後に叫ぶような場面もあったが
いい追い風が吹いていて、もうちょっといい記録が出れば良かったなと思ったので、悔しい気持ちが大きかったなと思います。
ーー去年、この大会で追い風参考ながら9秒台を出したことは意識していたか
いい追い風が吹くというのはずっとわかっている事なので、だからこそ、そのいい条件を少しでも無駄にしないために準備をしてきました。当初立てていた目標をクリアできたので、それは最低限良かったかなと思います。
ーー栁田選手自身がこれから目指す場所
次のレースは関東インカレになるので、そこで今日よりもいい走りをしたいなと思います。