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2015.10.19
硬式野球

[硬式野球] 兄貴の分まで 増渕、大一番で初完封

平成27年度東都大学野球秋季2部リーグ戦・拓大2回戦

10月18日(月)拓大グラウンド

東洋大6-0拓大

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三塁すら踏ませぬ安定した投球内容で完封した増渕


 全員の意地が乗り移った、気迫の投球だった。「引退がかかっていたので、絶対に負けられなかった」。敗戦、それがユニフォームを脱ぐことを意味する大事なマウンド。「底力はあるので。追い込まれた状況には強い」と話す増渕(営4=鷲宮)が堂々の130球、公式戦初完投で初完封勝利。昨日の敗戦後、「明日は頼むぞ!」と背中を押された同期の期待にも、最高の結果で応えてみせた。

 新たな武器がさえ渡った。右打者が多く並ぶ相手打線に対し、この日最も威力を発揮したのはチェンジアップ。なんと、前カード・立正大戦から投げ始めたばかりだ。「スライダーとカーブだけじゃ相手に狙われてしまう。少しでも打ち損じてくれればと思って」。まさに鬼に金棒となる最終兵器で、前日原(営4=東洋大姫路)から本塁打を放った野村も4打数無安打に封じ込めた。

 兄・竜義さんはプロ野球選手だった。06年高校生ドラフト1巡目指名でヤクルトに入団、11年には7勝を挙げクライマックスシリーズでも先発した。「憧れですね。話していると、すごく勉強になります」。五回2死一、二塁で当たっている4番打者を迎えた場面では、「迷って投げたボールは打たれる」という兄の言葉を胸に、力いっぱい腕を振り抜き右飛に仕留めた。「今度は自分が活躍する番です」。今月13日、戦力外通告を受けた兄は現役引退を表明。『今度はお前が頑張れ』という兄からの連絡にも、『任せろ』と返した弟が大きな1勝を刻んだ。

 春は不調で大半をメンバー外で過ごしたが、「力を付けて必ず見返してやろうと思っていた」と増渕。誰よりも負けん気の強い左腕の反骨心が、ここ一番で光った。

 

■コメント

・増渕(営4=鷲宮)

全員の負けたくないという思いが強かった。昨日の敗戦で、改めて負ければ引退になることを実感した。4年生には昨日『明日は頼むぞ』って。引退がかかっていたので、昨日原で負けて、絶対に負けられなかった。底力はあるので。相手の打線はくっついてくるなって印象があった。右打者でも自分は投げやすい。絶対に先に点はやらないぞと思って、(大量援護にも)常に1対0だと思って投げた。完封は今夏、明大とのオープン戦以来。公式戦になると、高校時代はよくやっていたが大学では初めて。入れ替え戦に行くのは当たり前で、そこで勝つことがすべて。


TEXT=浜浦日向 PHOTO=伊藤拓巳