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日本女子サッカー界で誰もが憧れる存在。それが、「日本女子代表なでしこジャパン」。そんな女子サッカーの最高峰、なでしこジャパンに新たに名を連ねた北村美羽(食23年度卒=リンシェーピングFC)。なでしこジャパンへの選出は、女子サッカー部創設以来初めてのことであり、彼女の活躍は多くの者に夢と希望を与えた。
「咲き誇れ!なでしこの舞台 北村美羽選手、初の代表入りインタビュー②」では、日本代表に選ばれた時の振り返りインタビューを行いました。また、北村選手が感じたサッカー生命への思いもお届けします。
前列右から1番目
なでしこジャパンのユニフォームを手に「光栄でもあり、嬉しかった」
――なでしこが決まった時と、海外が決まった時どっちが先に連絡来ましたか?
なでしこが決まったのが先でした。そのお知らせを聞いて少ししてからオフに入って、そのオフシーズン入ってすぐぐらいに海外移籍が決まった。
――驚きの間隔が短かったというか
そうなんですよ。もうオフなのに何でこんなに忙しいんだって(笑)。
――なでしこ決まった時と海外決まった時、嬉しさって言ったらどっちの方が大きかったとかありましたか?
正直どっちも嬉しいと言うより驚きというか。どちらかというと、なでしこ。すごい目立つ選手ではないので。なでしこに選ばれたいと思ってサッカーをしてるわけでもなかったですし。選ばれたって聞いた時は正直びっくりする事が大きくて。なでしこの活動期間中にやっとこうなんか嬉しさというか、代表入ったんだっていう感じだったというか。
なので、(連絡後すぐは)あんまり実感がない感じでした。
海外はその時もこうすごい短い期間でこうどんどんどんどん話が進んでってなんか気づいたら海外移籍になってたって感じだったんで。ただこっち来てからはやっぱり、海外移籍できて良かったなって思いました。
――気持ちの整理が早いですね
もう本当にその時もう整理する時間もないというか。
――代表選ばれた時に誰に一番最初に伝えたいなと思いました?
両親に一番に伝えました。
――どんな反応されました?
シンプルに「すごいね」って。「おめでとう」っていう言葉がありました。
――もちろんなでしこジャパンに憧れとかもあったと思うんですけど実際練習とか参加してみていかがでしたか
もう代表ユニフォーム着られたっていうのはすごく光栄なことだなと思いますし。それまで他の代表とかにも入ってなかったので今まで。本当にちゃんと代表のユニフォーム着られるのが今回初めてだったので光栄でもあり、嬉しかった気持ちもです。あとは普段リーグで対戦して本当に素晴らしい選手達と一緒にできたっていうのはすごい大きな経験にもなりました。
――代表のユニフォーム着た時どうでしたか。自分の名前と背番号入っていて。
いやあ、正直に嬉しかったです。こんなユニフォーム着られるんだなって思いながら、すごく自分の自信にもなったかなと思います。
――選ばれた理由とかって、聞いていたりとかされましたか
直接聞いたりとかはしてないんですけど、リーグ戦でのジェフの試合を視察しに来た代表監督とかが。「代表のスタイルに早く馴染みやすい選手」っていう直接的な言葉ではなくてそういうニュアンスで、そういう感じに感じました。
――試合中によく考えながらサッカーしてる分、臨機応変にやりながらプレーできるから、そこが北村選手の強みとして代表入りにつながったのでは
そうですね。あとはパス、ボールを動かしてっていう部分で、評価されたのかなと思います。そういう考えるといった部分では、そのパスだけじゃなくてやっぱポジショニングであったりそういう部分を評価してもらえたのかなと。
――実際そのアジア戦出てみていかがでしたか?
思ってたよりそんな緊張することもなくこういつも通りのプレーを心がけて初戦それが結構できたかなと思うんですけど。中国戦で相手が大きくて早くてってなった時に自分の球の離れの速さだったり後はポジショニングを普段一緒にやってない選手たちだったので少し一緒にいる中で合わないを感じる部分は正直あったんですけど。それは全然言い訳にはできないので、そこを考えながらやろうっていう部分は少し難しかったかなと思います。
――試合中どうでしたか
普段通りのプレーが通用する部分もすごく多いなと思いましたし。周りの選手と連携取りながらという部分が自分の強みでもあるのでそこでボール持つことで自分のリズムも作れますしそういう連携は取りやすかったのかなと。
――代表で印象に残っている選手とかいましたか?
その代表期間中にキャプテンをしていた高橋はな選手(=三菱重工浦和レッズレディース)。常にチームの事を優先して、行動でもすごく示しているなっていう風に感じたので、そういう選手が一人いるだけでもチームの士気はすごく上がると思います。あとはその元々海外勢とも一緒に代表にしっかり入っている選手だったので、そういった選手と一緒にプレーできたっていうのはすごく自分の中でも自信にもつながった部分かなと。
――選手たちからなんか学んだこととか特に印象に残っていることありましたか?
代表選手としての自覚というか、代表選手としての責任っていうのをすごく持っているなって思うことですね。日本の国旗を背負って戦うっていう部分ではすごく強い思いがあって。髙橋はな選手だったりと代表に選ばれるような選手っていうのは、そういった気持ちの部分でもすごく思っているのかなっていう風に感じました。
――やっぱ先輩選手たちに気持ちの面というか、メンタル面鍛えられることの方が多かった感じでしたか
そうですね。ただ、自分は気持ちがすごくプレーに出るというか、すごく熱い選手っていうわけではないと思うんですけど、そういう選手というか。自分も熱くないわけじゃないんですけど、熱い時もプレーは冷静でいたいっていう風に感じているので。
ただ、玉際の場面だったり、あとはディフェンス陣の、絶対失点しないっていう体の張る部分だったりっていうのはすごく練習中でも試合中でも(熱を)感じていたので。そこの勝負強さっていうのはずっと学んだかなと。
――それが活きているんですね。
そうですね。はい。
仲間たちとハイタッチ
(ご本人より写真提供)
短い選手生命の中でも「楽しみながらサッカーをしたい」
――スウェーデンの方に行くのは代表終わって結構早かったですか。
代表活動が7月17日まであって、19日の深夜便でスウェーデンへきたので、本当もうポンポンって。もうスウェーデンかーっていう。
――最初にこうスウェーデンの練習一番最初に参加してみた時いかがでした?
すぐクラブハウス着いて、すぐ色んな選手と挨拶してっていう感じで。初日の練習は別メニューだったんですけど、本当にすごく気さく話しかけてくれて、英語もあんまり分からない選手に対してもなんかもう身振り手振りだったり、歓迎してもらったなっていう風に感じてます。本当に優しいなと思いました。
――日本の選手っていらっしゃるんですか?
チームにはいないんですけど、スウェーデンのリーグには結構います。
――試合とか今もやってると思うんですけど、交流とかありましたか?
そうですね日本人の選手がいるチームとこの前も試合して、日本語話したりとかいろいろしました。
――日本の方いらっしゃると安心しますか?
はい。めちゃくちゃ安心します。でも今住んでる地域、現地に住んでいる日本人家族の方が結構いらっしゃって、その方々が毎試合応援に駆けつけてくれたりしてるので、日本にはいないですけど、また新しい日本人の方とのつながりが出来ました。海外に移籍しないとできないことだったので、そこもすごく嬉しいなと思います。温かいですね。すごいです。
――移籍する時に現地の監督とは話しましたか
自分と同じタイミングで新しく入っている方なんですけど、私がそこのチームと契約するっていう話を聞いた時にすごく嬉しかったっていう話を監督さんがしてくれたので、そういった部分でもすごく受け入れてくれているなっていうのが感じますね。
――どこでもやっぱ求められる選手というか。
はい。嬉しいです。
――現地のサッカーと日本のサッカー今までやってきたサッカー何か大きく違うところとかありましたか?
シンプルに大きいし、速いし、強いし、そういった部分は本当にこう日本のリーグにいたら絶対味わえないくらいのプレースピードとかがもうほとんどで、基本的に(自分は)1番小さいですし、どこに行っても(周りは)大きいし、あとはパワーとスピードある分、ひとつひとつのプレーの激しさとかバチバチ感っていうのは本当に全く違うなと思います。でも逆にそういった中でも日本人の選手のスタイルが活きるっていうか。
――日本人の選手の良さを使ってどうやって対処していこうかと。
みんなやっぱり速いという部分、強いっていう部分で、自分の玉離れだったり、それをすごく意識するようになりました。今は意外と持てるんだなとか。すごい足伸びてくるなとか、なんか練習でも試合でも、その時その時ですごく今は学びながらやっているなっていう感じになって、そこも新たに知れているっていう感じが今はすごく楽しいかな。
――相手選手の特徴とかも観察しながら見極めていくサッカーで
自分がどういう場面でどういうプレーが出来るのかっていうのをまだまだ考えながら、(プレーを)やりながら、ここ持っていいんだとか思う。でもそれが今は楽しいかな。
――楽しいサッカーってどこへ行っても大事ですね
めちゃくちゃ大事かなと思います。日本に行ったら、その新しい学びであったり、ここで足が伸びてくるとか、ここで一気にスピードが上がるとかっていうのは絶対経験出来なかったと思うので、それだけでも本当海外に行く意味があったのかなって。
――世界に一歩踏み入れたタイミングだと思うのですが、触れてみていかがですか
もともとすごい先の目標立てるのは苦手っていう風に言ってたんですけど、ただ自分のというかサッカー人生自体はそんなに長くないっていうのは、一般的だなって思う中で、短いなら知らない世界も知った方が得だなと思います。もちろん日本でずっとやる事が悪いこととか全く思ってないんですけど。自分は新しい事を知りたいとか、それこそこっち(海外)に来て分かる楽しさだったりっというのも今知れているんで、そういった部分で本当に海外や外に出るっていう選択をしたのは本当に良かったなと思います。
――新しい挑戦で一皮剥けた感じしますか?
そうですね。すごい上に上にと目指して、すごく向上心持ちすぎてるとかでもなく、今やっている状況の中で出来る事を探しながっていうのが自分には合ってるかなと思っていて。そういった部分には楽しいなと思います。
――高校の話とか聞いていると高校の時に比べて、現実的な姿勢へ階段上がっていくような目標に変わっていって、やっぱその環境の変化ってすごく大事だなと
高校の時は周りの評価だったり、世代別代表に入れないとか、同じチームの同世代の子達が代表に入る中でヘンに焦りとか。自分は「見てくれる人は見てくれるよね」とか、「分かる人には分かるよね」って言われる事が多かったんですけど、当時はそれで逆に結構しんどくて。世代別に入る選手達っていうのは、誰から見ても上手いから世代別に入るんだろうし、自分にはその良さがないんだっていう風にすごく感じてたので。
ただ大学入って、それ以降っていうのは周りを気にしなくなったりとか。誰かがもう1つ上のレベルで活躍してても別に気にしないし、自分は別にやりたい事をやって、楽しい事をやって、楽しみながらサッカーしたいっていう気持ちでずっとやってたので、結果的に良かったのかなと思います。周りを気にしなくなった事で自分のプレーもブレなくなってきたっていうのはすごく感じたので、そうした良さっていうのが、今回プロだったり、代表だったり、やっぱ移籍とかそういった部分で評価してもらえたのかなと思います。
何か良くも悪くも本当に気にしなくなりました!(笑)別に誰が活躍しててもまあ、すごいなぐらいで。それがいいのかなと思います。
――無理に追わないというか、無理しなくて済むというか
はい、本当そうですね。自分の能力だけに考えるというか、他の人が出来て、自分には出来ない事があって当たり前だと思うし。比較しなくなってきて。あとは気にしないっていうのは自分の中ではそれが出来るようになったっていうのはすごい大きな事だったかな。
「咲き誇れ!なでしこの舞台 北村美羽選手、初の代表入りインタビュー③」へ続く
取材日=8月19日 聞き手=森花菜