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2025.09.21
準硬式野球

[準硬式野球]エース・金子、好投を見せるが延長10回タイブレークの末に敗れる。日本大に2連敗し、無念の入れ替え戦へ。チーム力が戻りつつある中、彼らは残りの試合をどう戦い抜くのか。/ 日大戦、7・8回戦

令和7年度 東都大学準硬式野球 秋季1部リーグ戦・日本大・第7回戦

9月18日(日)スリーボンドベースボールパーク八王子

◯東洋大2ー5日本大


1 

2 

3 

4 

5 

6 

7 

8 

9 

10  

計 

日本大

東洋大


金子ー黒岩


               先発投手金子

          自身の安打に満面の笑みを見せる大久保

            玉田のスクイズで生還する阿部


 今季、1部残留のプレッシャーから不調をきたしていた金子(経3=福島商業)。しかし、この試合の金子は一味違っていた。強張っていた表情から一転し、気迫に満ち溢れた投球を見せる。そのエースの貫禄にチームは熱を増した。延長10回タイブレークで敗れたものの金子の好投に希望が残る。


一回表、先頭から三振を取り、続く打者に投ゴロを打たれ出塁を許すが、黒岩(健=前橋育英)が二塁で走者を刺し二死を奪う。最後は遊ゴロでスリーアウト。出だし好調の走りだしで上位打線を抑えた。

一方で東洋大打線は先発投手、首藤(日本大)の剛腕に立ち向かうも捉えることができず、一、二、三回と三者凡退で抑えられ、投手戦が続いた。

四回表、金子はテンポよく2死を奪うが、遊安打、右安打を打たれ1点を先制される。しかし、その裏、大久保(生3=木更津総合)が左安打を放ち、続く打者、大島(文2=富山第一)がスイングと同時に盗塁を決める。大島は三振に終わったが、今まで好調に投げていた首藤(日本大)に変化が見えた。三塁への盗塁を試みる大久保に焦りを覚えたのか、暴投。ボールはバックネット前へ転がって行き、大久保はすぐさまスタートを切る。本塁まで一気に走り切り、見事1点を取り返すことに成功した。

六回表、先頭を投ゴロで抑えた金子だったが、左安打を浴びる。牽制球を投げ、警戒するが、初球を暴投し、その間に走者は二塁へ。さらに、遊安打を浴び、1死一、三塁のピンチ。続く打者のスクイズで本塁に刺そうと試みるが、走者の足が勝り1点が追加され2–1となった。

1点を争う戦いだが、金子の表情から笑顔が消えることはなかった。試合を楽しむことを1番に考え、九回まで追加点を与えず守り抜いた。

八回裏、ここまでヒット数3本と苦しい中、先頭打者・中澤(国1=佼成学園)がファーストストライクを打ち抜き、出塁。ここで代走へ送ったのは阿部(健2=沼田)。俊足を生かして盗塁を決めると黒岩の犠打で1死三塁。玉田(総3=佐久長聖)が一発でスクイズを決め同点に追いついた。阿部はベンチに帰ると嬉しさを全面に出し、熱い抱擁で仲間と喜びを分かち合った。

互いに譲らぬ展開のまま、九回を終え、延長タイブレークに突入。無死一、二塁で始まる延長戦に選手だけでなく会場中の緊張感が高まる。そんな中、金子は気持ちのブレを感じさせず落ち着いた様子でマウンドに立っていた。しかし、先頭を三振で抑え流れを引き寄せた直後、4番吉田(日本大)に左安打を放たれ1点を許し、1死一、三塁。さらに二安打を放たれ5–2となった。緊迫した展開に見守るベンチ。仲間を信じ力のこもった球を投げ相手の勢いを封じ込み二ゴロ、投ゴロで打者を抑えた。

その差3点、金子の思いを胸に気合を入れ直す選手たち。しかし、2者連続三振で早くもピンチ。最後は玉田が三ゴロを放ちスリーアウトとなった。


未だ勝利を掴めない厳しい現状に、入れ替え戦が見え始め、後がない東洋大だが、本来の調子を取り戻しつつある金子、一戦一戦を積み重ねるうちに成長するチーム。粘り強く戦い続ける選手たちに光が見える。悔しさをバネに悲願の一勝を掴み取れるよう同じ志を持って次戦に挑んでいく。


◼︎コメント

大久保学生監督(生3=木更津総合)

〈今日の試合を通して〉

前半戦を終えて全員でミーティングを行い春までの東洋の最大の武器は声でした。しかし今リーグはベンチ入りの下級生が多い為、チーム全体で声だけは負けないようにしていこうと話しました。相手のMAXが149キロの剛腕だったこともあり僅差の勝負だと予想し、タイブレークまで持ち込んだが踏ん張れませんでした。

〈自身の3打席連続ヒット、そして盗塁を決めたご感想をお願いします〉

自分が打たないとチームがズルズル負けると感じ、集中して打席に入りました。少しでも相手ピッチャーにプレッシャーを与えれたのでよかったです。

〈この試合では遊撃手の先発が阿部選手ではなく中澤選手でしたが何か使いたいと思うようなポイントがあったのでしょうか?〉

彼は練習で試合に出たい気持ちを全面に出している選手でした。連敗してることもありチームの活性剤になって欲しいと思い起用しました。

〈次の日大戦2戦目に向けて〉

次の日大戦が入れ替え戦回避の大1番だと思うので、全員で同じ方向を向いて勝ちます!


・金子(経3=福島商業)

今日のマウンドでの姿は笑顔がとても印象的でしたが、何か気持ちの持ち方などで変わったことはありますか?

今までは悪い意味で気負ってしまっていたので、今日は自分のピッチングをすることと、楽しむことだけを考えて投げることが出来たので良かったです。

〈この試合は1年生の黒岩選手とのバッテリーでしたが、どのようにコミュニケーションをとっていましたか?〉

自分の状態や日本大学さんのバッターの反応を共有し、後悔のない球を投げれるように話し合っていました。

〈タイブレークでも落ち着いた様子が伺えましたが、どのようなことを考えて投球をしていましたか?〉

後攻なので、このタイブレークを抑えれば絶対に裏で点数を取ってくれると信じて投げました。また、玉田から1点OKと言われていたので、最悪1点はとられてもOKだと割り切って投げていました。

〈次の日大戦2戦目に向けて〉

絶対に1部残留できるように、残りの試合勝ち切れるように頑張ります。

TEXT ・PHOTO = 吉田妃莉


令和7年度 東都大学準硬式野球 秋季1部リーグ戦・日本大・第8回戦

9月21日(日)スリーボンドベースボールパーク八王子

◯東洋大1ー3帝京大


東洋大

0 

0 

0 

0 

0 

1 

0 

8 

0 

1 

日本大


二塁打:大島(六回)

吉村、中嶋、金子ー吉田



          先発のマウンドに上がった吉村

               適時打を放った吉田

            盛り上がりを見せるベンチ


 なんとか一勝を掴み取りたい東洋大は、日大との試合に臨んだ。「2対1で勝つ」というビジョンを持って挑んだが、結果は1対3で敗退。チャンスを複数形成するも活かしきれず、後1本が出なかった。


 一回表。「初回から攻めてけ」、「先制点欲しいぞ」という声が飛び交う中、1番・大久保(生3=木更津総合)がさっそく四球で出塁する。その後、盗塁を成功させ無死二塁。早々に手にしたチャンスをものにして先制点を入れたいところだが、3者連続で打ち取られあえなくスリーアウト。


 先発のマウンドに上がったのは1年生の吉村(文1=横浜隼人)。「プレッシャーもかかった」というが、それを感じさせない立ち上がりを見せ、2者連続で右飛に打ち取って2死とする。しかし、3番・山口(日大)に左安打を許すと、4番・吉田(日大)に四球を与え、2死一、二塁といきなりピンチを背負う。この場面でも吉村は落ち着いた投球を見せ、続く打者をニゴロに打ち取った。


 三回裏。先制点を許したくない東洋大がピンチを迎える。先頭打者に中安打を打たれると、続く打者は中飛に打ち取ったものの、2者連続で四球を与え1死満塁。守備につく選手たちやベンチの選手たちに緊張が走る。しかし、「しっかり投げて抑えてやる」という強い気持ちを持って投げた吉村は、このピンチを併殺によって切り抜ける。「よっしゃー!」と雄叫びをあげ、力強いガッツポーズを見せた。


 この流れを攻撃に繋げたい東洋大は四回表の攻撃。先頭打者が二飛に倒れ、1死。しかしここで、「なかなか打てないことが続いた」と今まで苦戦していた4番・柳下(営3=横浜隼人)が中安打を放つ。続く定直(法4=東福岡)は中飛に打ち取られたものの、6番・大島(文2=富山第一)にも安打が生まれ、2死一、二塁とする。このチャンスを活かしたかったが、7番・中澤(国1=佼成学園)が遊ゴロに倒れスリーアウト。得点には繋がらなかったものの、中安打でチームを盛り上げ、勢いをもたらした柳下は、「ただいま!」とチームメイトをハイタッチを交わした。


 五回表、先頭の吉田(文4=上野学園)が四球を選び出塁。続く9番・玉田(総3=佐久長聖)が暴投の間に出塁し、無死一、二塁とする。そして、大久保が危なげなく犠打を成功させ、1死二、三塁と先制点のチャンスを広げる。ここで打席が回ってきたのは、今まで何度もチャンスで打席に立ってきた永井(済2=広陵)だ。チャンスを活かしたいところだが、惜しくも空振り三振に倒れ、悔しさをにじませた。続く寺田(国1=都立日野)も中飛に打ち取られ、絶好のチャンスで得点することができなかった。


 ピンチを切り抜けた日大がリズムを掴み、東洋大はピンチを迎える。先頭打者に中安打を打たれると、続く打者からは空振り三振を奪ったものの、盗塁を成功され1死二塁。その後、四球と右安打によって1死満塁となる。3番・山口(日大)は三邪飛に打ち取り、2死。あと1つのアウトを取り、このピンチを脱したい吉村だが、踏ん張ることができず痛恨の押し出しの四球を与え、日大に先制点を許した。しかし、すぐに右飛でアウトを取りスリーアウト。最小失点でこの回を抑えた。


 先制点を許した東洋大は、六回表の攻撃。2者連続で三振を奪われあっさり2死としてしまう。しかし、反撃の口火を切るように、6番の大島が魅せる。左越え二塁打を放ち、2死二塁。そして、暴投の間に振り逃げで中澤が出塁し、二塁の大島は三塁へ進み2死一、三塁とチャンスを迎える。ここで、「低めの球は捨てて、高めの球を打つ」ということを意識したという吉田が、見事に打球を捉え左適時打を決め、1点を返して試合を振り出しに戻した。


 その裏、東洋大は継投に入り、中嶋(理2=秋田工業)がマウンドへ上がった。先頭打者に中安打を許すと、犠打を決められ1死二塁と交代早々ピンチを背負う。無失点で抑えたいところだが、8番・西河(日大)に左越え三塁適時打、9番・細田(日大)に左越え二塁適時打と立て続けに適時打を浴び、2点を失った。


 七回裏。先頭打者を三塁を守る寺田が難しい打球をしっかりと処理し、三ゴロに打ち取り1死。その後、右安打と死球によって1死一、二塁というピンチを迎える。しかし、続く打者から見逃し三振を奪うと、右前に飛んだ打球を定直が本塁へ好返球しタッチアウト。ピンチを乗り切った。


 八回表を3人で抑えられた東洋大は、その裏、金子(済3=福島商業)がマウンドへ。「自信持っていけ」という声を力に、気持ちを全面に出した力強い投球を見せる。先頭打者を二ゴロに打ち取ると、2者連続で見逃し三振を奪い、3人で日大打線を抑えた。これまで苦しい投球内容が続いていた金子だったが、これが復調のきっかけになったのではないだろうか。金子は、「本当は自分が全部投げないといけない」と覚悟をにじませた。


 何とかして追いつきたい東洋大は九回表、代打に竹本を送る。「竹本迷うなよ」という仲間からの言葉に頷き、打席に入る。しかし、空振り三振に倒れ、塁に出ることはできなかった。その後、8番・吉田が遊ゴロに、9番・玉田が投ゴロに打ち取られ試合終了。勝利を掴むことはできなかった。


 この敗戦で入れ替え戦が確定してしまった。しかし、適時打を放った吉田は、「チーム力が戻りつつある」と語る。実際にピンチの場面でも、前向きな言葉が途切れることなく聞こえてきた。また、1年生である吉村の好投や4番・柳下のチームを盛り上げる安打、吉田の適時打など収穫は多くあったはずだ。大久保学生監督は、次なる専修大戦で「スタメンを入れ替えてどんどんベンチメンバーを使っていく」という。入れ替え戦で1部残留を掴み取るためにも、専修大戦でなんとか一勝して勢いをつけたいところだ。




◾️コメント

・大久保(生3=木更津総合)

ー今日の試合を振り返って

 今日のビジョンとして2対1勝つ。相手ピッチャーが140キロを超えるピッチャーがたくさんいる中で、なかなか点が取れないということはわかっていたので、2対1で勝つつもりだったんですけど、うまく行きませんでした。


ー永井選手を2番に起用した理由は

 大島が腰が痛いというので負担の少ない6番という意味で、チャンスで回ってくることが多い6番なのでチャンスに強いという印象なので大島を6番に、永井を2番に起用しました。


ー専修戦に向けて

 今までスタメンが固定されている状況だったので、スタメンをどんどん入れ替えて、ベンチメンバーをどんどん使って下からの追い上げを狙いたいです。このまま負け続けて入れ替え戦に臨むより、一勝して絶対勝って望んだ方が負け癖も解消されると思うので、一勝しにいきます。


・吉田(文4=上野学園)

ータイムリーを打った感想

 転がそうというイメージはあって、次に繋げようという意識はありました。


ーチャンスで打席が回ってきた時に意識したことは

 低めの球は捨てて、高めの球を打つということをチームで徹底していたので、それを意識して打席に立ちました。


ー専修戦に向けて

 よくなっている点としては、チームのみんなが1つの方向に向き始めて、チーム力というところが戻りつつあるので、そこの良さをもっと出し切れたらいいなと思います。チームとして負けが続いているんですけど、専修戦は勝って、入れ替え戦に臨みたいと思います。


・吉村(文1=横浜隼人)

ー何をイメージして先発のマウンドに上がったのか

 連敗中で今日は入れ替え戦がかかった試合だったので、プレッシャーもかかったんですけど、1年生なんですけど3年生でも出れていない選手もいるので、その選手のためにも思ってしっかり真剣に抑えるということを考えて臨みました。


ー3回のピンチをしのいだ場面では

 大久保さんから5回無失点が最低条件と言われていたので、しっかり投げ切って抑えてやるという気持ちで投げました。


ー良かった点、反省点は

 気持ち入れるべきところをしっかり投げられて最小失点で抑えられたところは良かったんですけど、フォアボールが多くてリズムが崩れてしまったので、フラットな状態であまり気にせず重く考えずにポンポン投げられたらもっといいピッチングができるかなと思います。


ー専修戦に向けて

 連敗中なので、とにかく連敗せずに一勝して入れ替え戦に臨みたいです。チーム一丸となっていきたいと思います。


TEXT=佐藤結芽 (写真提供:東洋大学準硬式野球部)