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2025.11.04
ラグビー

[ラグビー] 屈辱の5メートル。東洋大がノーサイドまでもつれる死闘を1点差で屈し、リーグ戦初黒星

関東大学リーグ戦第5節・東海大戦

スピアーズえどりくフィールド

●東洋大 27{12ー14、15-14}28 東海大






番号

Pos.

名前

1

PR

山下源也(総2=熊本工)

2

HO

小泉柊人(済4=目黒学院)

3

PR

岡田恭和(スポ2=脇町)

4

LO

栗原大地(総4=伊勢崎興陽)

5


ジュアン・ウーストハイゼン(総4=Helpmekaar College )

6

FL

ナモア・ファタフェヒ(総3=桐生第一)

7


森山海宇オスティン(総4=目黒学院)

8

NO8

ステファン・ヴァハフォラウ(総4=札幌山の手)

9

SH

佐々木健人(総4=札幌山の手)

10

SO

林星安(総4=目黒学院)

11

WTB 

中山二千翔(総2=日本航空石川)

12

CTB

天羽進亮(済4=城東)

13


アダム・タマティ(総4SacredHeartCollege)

14

WTB

浅尾至音(スポ3=城東)

15

FB

池渕紅志郎(総2=城東)

16

Re.

植松進之輔(総3=昌平)



岩崎ヴィージェ―純(総1=目黒学院)

18


阿部正英(総2=三本木農業)

19


植田宗優(済4=筑紫)

20


金井悠隼(スポ3=東海大相模)

21


亀田翔蹴(スポ3=桐生第一)

22


五十嵐舜悟(スポ2=川越東)

23


梅木颯斗(総2=黒沢尻工)


悲願の初優勝を目指す『Navy Warriors』。王座奪還を狙う『SEAGALES』。


両チームにとって絶対に落としたくない戦いが、11月3日(月)『スピアーズえどりくフィールド』を舞台に繰り広げられた。


優勝の可能性を大きく左右する全勝対決。

ノーサイドまでもつれる死闘を制したのは、東海大だった。


MIPに選出されたタマティ


「東海大戦は毎年、気持ちだけの勝負。情熱だけ持って準備します」。東洋大の福永昇三監督がこう語っていたように、東海大戦勝利に向けてチームはいつも以上に熱気を帯びていた。


1137人の観客が見守る中、運命の一戦がキックオフした。口火を切ったのは東洋大。


8分、自陣からSO(スタンド)林星安(4年)が蹴り上げたキックがタッチを割り、敵陣でのプレーに持ち込む。10分には相手ボールとなるも、FL(フランカー)森山海宇オスティンの鋭いタックルが刺さり、ボールを奪取した。パスをつなげていくと、ライン際にいたCTB(センター)アダム・タマティ(4年)が大きくゲイン。タックルを受けたところで、SH(スクラムハーフ)佐々木健人(4年)にボールが渡り、貴重な先制点をもたらした。


先制トライを挙げた佐々木


勢いそのまま相手を突き放していきたい東洋大。しかし、簡単にはその思惑通りにはさせてくれなかった。


再開後も敵陣でのプレーを展開し、何度か好機が訪れるが、東海大の堅固なディフェンスに阻まれてしまう。すると30分、東海大がターンオーバーでボールを奪い、自陣へ。さらに広範囲でのパスワークにより東洋大のディフェンスに隙が生まれたところを、ライン際にいたWTB鬼頭慶(1年)に突破され、トライを許す。


その後も攻防戦が続く展開の中、40分に東洋大が強みのモールで勝ち越し。


だが前半終了間際、東海大が意地のトライとゴールで点差をひっくり返す。12—14、わずか2点を追う形でハーフタイムを迎えた。


モールの最後尾につける小泉


「自分たちを信じよう」。声を掛け合い、再びグラウンドに立った東洋大が後半戦のスコアを先に動かす。10分、22m付近でのスクラムから林のキックでタッチを割り、好機をつかむ。マイボールラインアウトを成功させ、モールで押し切ってトライを奪った。


しかし、息詰まる攻防戦は続く。18分、東海大がトライを挙げ19-21と逆転。30分には東洋大がペナルティゴールで3点を返した。


勝ち越した東洋大だが、34分に東海大が再びリードを奪い、試合はロスタイムへ。与えられた残り時間は7分。6点を追う東洋大は敵陣でプレーを続ける。


44分、こう着していた状況からHO(フッカー)岩崎ヴィージェー純(1年)がゲインを見せ、WTB浅尾至音(3年)にボールが渡る。タックルを受けながらもインゴールに楕円球を沈めたが、コンバージョンは右に逸れ、逆転には至らなかった。


今季からWTBに主戦場を変更した浅尾。

何度もキャリーで好機をつくった。



ノーサイドまで残り2分。再び東洋大が攻め込む。WTB中山二千翔(2年)がラインブレイクで複数ディフェンスを突破し、敵陣へ。しかし、ラストワンプレーではパスをつなぎインゴールを目指すも、ライン際で相手のタックルに阻まれタッチを割ってノーサイド。最終スコアは27-28とわずか1点差。劇的な逆転はあと一歩届かなかった。


「テンポを上げようとした結果、周りとの連係が取れなかった。トライを狙いすぎた」とリーグ戦初先発の佐々木は振り返る。目の前で逆転のトライが見えただけに、悔しさは深かった。


試合後、涙を流した選手もいた。


ロスタイムでのラストワンプレー。トライまでわずか5メートル。届かなかったその距離の重さが、静かに胸に残った。


試合後、涙を流す浅尾(右)を天羽が寄り添う



自力優勝の可能性は消えたが、鉄紺の航海はまだ終わらない。


「1点差、だいぶ痛いですけど、ここで終わりじゃないので。この1点で自分たちはもっと強くならないといけない、そういう試合になったと思います」とNO8(ナンバーエイト)ステファン・ヴァハフォラウ主将(4年)は言葉を紡ぐ。


次節は11月16日(日)、流経大との一戦を控える東洋大。1部昇格後から接戦が続く相手に、油断は決して許されない一戦だ。


下を向いている暇はない。全員の力を、次の戦いにぶつける───。今こそ、鉄紺の真価が問われる時だ。



◾︎選手コメント

◇ステファン・ヴァハフォラウ主将

ーー今日の結果をどう受け止めているか

受け取るしかないです。1点差、だいぶ痛いですけど、ここで終わりじゃないので。この1点差で自分達はもっと強くならないといけない、そういう試合になったと思います。


ーー試合前のハドルで印象的だった声かけは

やりたいことを言葉に出すと現実に出てくるので、お互いを褒めるとか、ナイスとか。悪いところを言っても、口に出すとみんな動いてくれるので、特に何も意識はしてないですけど、声を出して東洋らしくいきました。


ーー前半からペナルティが目立っていたが

自立のところ、ルール守るところ、ちょっと残念でしたができなかった場合が多くて。相手の時間が増えてきて、こっちがディフェンスの時間が長かったっていうのはありましたし、それはもう練習で取り組んでいくしかないです。


ーー2点ビハインドでのハーフタイムではどのようなことを話したか

「自分達を信じて」っていうのを。先週も試合でしたし、準備の時間もいつもより短かったんですけど、しっかりと練習してきたことを全力で出し切る、リセットしようということをみんなで話しました。


ーー終盤の戦略は

まず強いキャリアの選手が多くて、そういう人たちを使いながらスペースを見れると良いなと思いましたし、とにかく強いランナーが前に出てモメンタムを作っていきたかったです。


ーー敗因を挙げるとすれば

自分達のゴールラインを守るというところがちょっと甘かったかなと。もうちょっと強気でいくとトライは取られないので。


◇佐々木健人

ーー本日の結果をどう受け止めているか

風とかエリアとか、10番の林と話し合って、風を見てキックしたりとか、いろいろ考えながら試合を進めたんですけど、最後のボールで自分が一発で狙いすぎて、自分の判断ミスが、1点をひっくり返すことができなかったです。それで、この結果しまったかなと思います。


ーー佐々木選手としてはリーグ戦初先発。重要なこの一戦でのスタートを任されたが、どのような思いで挑んだか

すごい緊張はしたんですけど、チームの全勝優勝という目標があって大事な試合でした。4年生の同期が見せてくれる背中とか、かけてくれる言葉が自信に変わって、やってやろうという気持ちになりました。


ーー急な先発起用となったが、準備としては

自分自身としてはリザーブに入っているから満足することはなく、先発を目指して常に練習をしているので、いつ先発を任されてもいいように、準備はできていました。


ーーファーストトライを挙げた際の手応え

アダム(タマティ)のように体を張って前に出てくれる選手はいるので、しっかり9番としてサポートすることが大事だと思っています。味方を信じてサポートした結果があれだと思うので、味方を信じきってトライにつなげられました。


ーーラストワンプレーについて

味方が前に出てくれて、いい流れとか作れてたんですけど、敵陣に入った時に、自分が少し焦っちゃったり、テンポを上げようと思って、周りとの連係が取れなかったりとか、トライを狙いすぎた自分の判断ミス。落ち着けば簡単に取られているところを、焦ってしまいました。


ーー残りの2戦に向けて

個人としては、もっと味方とリンクのところでしっかりコミュニケーションを取ること。そこをしっかりもっと練習のところから意識して、気が上がっているときに、大事なときにミスのない判断をできるように、声をかけていきたいと思います。



TEXT=北川未藍 PHOTO=北川未藍、市澤結衣