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平成27年度東都大学野球秋季1部2部入れ替え戦・駒大2回戦
11月9日(月) 神宮球場
東洋大8-4駒大
かつて兄が本拠地とした神宮のマウンドで好投する増渕。右手には『竜義モデル』の黄色のグラブ。
5回途中無失点でエースにマウンドを託した
2年ぶりに浴びたカクテル光線は、増渕(営4=鷲宮)をさらに輝かせた。「思ったより緊張もせず、いつも通り自分の力を出せた」。駒大先発・東野(2年)との左腕対決は、経験値が違った。「原(営4=東洋大姫路)を少しでも楽にするために」大胆かつ冷静にアウトを積み重ね、5回途中無失点。リーグ戦同様、自分の仕事を全うした。
最終兵器も解禁した。リーグ戦で使用していた青色ではなく、この日は黄色のグラブでマウンドへ上がった。左右は違えど、「兄と同じ型のもの」。最終学年を迎えた今春に作った、オーダーメイドだ。「兄の思いも背負っているという意味を込めて。(青で)ずっと調子が良かったのでなかなか使えなかったけど、最後なので」。内部に『初志貫徹』と刺繍した、たったひとつの相棒を片手に4年間の集大成を見せた。
先月、現役を引退した兄・竜義さん(元ヤクルトなど)は、中・高校時代も含めて弟の投げる姿を見るのはこの日が初めてだった。「体も細いし、実力はまだまだ。でもとにかく気持ちが強いので心配ないです。負けん気の強さは僕以上じゃないですかね」。その言葉が聞こえているかのように、拓大2回戦に続き負ければ引退のマウンドで弟が躍動。「うれしいですね。兄がプロ野球選手ということでやりづらさもあったと思います」。だが、弟の心は違った。「逆にそれがいいプレッシャーになっていた」。兄の背中を追いかけ続ける野球人生。一歩近づいたのでは?という問いにも「まだまだ、これからです」と謙遜した。
1勝1敗で最終決戦へ。「原だけには負けたくないと思ってやってきた」。同期のライバルとして切磋琢磨してきた男が、初戦で敗れたエースに最高のリベンジの舞台を用意した。
■コメント
・増渕(営4=鷲宮)
拓大戦と同じで、1点もやらないつもりでマウンドに上がった。思ったより緊張もせず、いつも通り自分の力を出せた。原はライバルとして切磋琢磨してきた。ピッチャーとしての性格だったり、気持ちの強さだったり、チームを引っ張っていく姿はいい見本だった。監督には後ろに原がいるからと言われていたが、自分が最後までいければ明日、原が楽に投げられると思って投げた。なので、もう少し投げたかった。
TEXT=浜浦日向 PHOTO=千野翔汰郎、伊藤拓巳