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平成27年度関東学生アメリカンフットボール入替戦
12月13日(日)アミノバイタルフィールド
東洋大14-21横国大
0|1Q|7
0|2Q|7
0|3Q|7
14|4Q|0
意地で2TDを決めた山形
ランプレーでも活躍を見せるQB時崎
永藤主将はスタンドに感謝の言葉を送った
1部リーグBIG8で6位の横国大との入れ替え戦は14-21で幕を下ろし、念願の1部へ昇格することはできなかった。前半相手にリードを許してしまい、後半は山形(済4=成城学園)がTD(タッチダウン)を2回決め追い上げたが、わずかに届かず2部残留となる。
「あと一歩及ばなかった」。永藤主将は、悔しさを滲ませた表情で語る。22年ぶりに入れ替え戦の切符を手にした東洋大。一昨年は下との入れ替え戦を経験するなど、苦しい思いもたくさんしてきた。1部への気持ちはどこよりも強い。しかし、それは相手も負けていなかった。「入れ替え戦に対して危機迫るものがあった」と西村ヘッドコーチが話すように、横国大は序盤から猛攻をしかけてくる。第1Q、第2Qで一つずつTDを奪い、格上の実力を見せつけた。東洋大も奮闘するが、タックルの甘さやパスミスが多く目立ち、相手に隙を与えてしまう。結局得点を入れることはできず、前半は0-14で折り返した。
第3Q終了間際にも追加点を入れられ、流れを完全に相手に持っていかれたまま最終Qを迎える。しかし、ここからVIKINGSが劇的な追い上げを見せた。時崎(社4=八千代松陰)がロングランで相手陣3Yまで追い込むと、そこから山形がTD。さらに直後、長岡(ラ3= 北多摩)と森(営4=狭山ヶ丘)がオンサイドキックを成功させ、攻撃権を奪取した。その後もパスプレーが成功し、山形が2つ目のTDを決める。7点差まで一気に点差を縮め、観客は沸き立ち選手たちの士気は高まった。だが、大事な局面でパスが通らず、攻撃権を渡してしまう。そのまま相手がニーダウンをし、ゲームセット。選手は試合終了の合図をただ待つことしかできなかった。
敗北を喫したが、誰一人悲壮な顔は浮かべていなかった。それはこの1年を通して最後まで試合を楽しむことを胸に、選手たちが戦い抜いた証である。試合後の永藤主将の観客席への感謝の言葉に、惜しみない拍手が贈られた。
この試合で4年生は引退となる。2年間主将を務めた永藤主将は「4年間VIKINGSでやってきて本当に良かった」と振り返り、他の選手たちも充実した様子を口にした。主力であった4年生が築いた土台を、今度は下級生が積み上げていかなければならない。来季こそ1部へ。4年生が残した伝統を継ぎ、新たなチームでさらなる高みを目指す。
■コメント
・西村ヘッドコーチ
今日の試合を振り返ると、残念、悔しいという気持ちが単純にある。うちは全力を出し切らないと勝負ができない相手だったので、追い付けなかったのはまだまだだったということ。相手は持っているものを出して勝負してきた。それに向け準備はしてきたが、相手にはそれ以上に入れ替え戦に対して危機迫るものがあったので、こういう結果になった。(試合前に)緊張感を取り除きたかったので「最後まで楽しんでやろう」と言っていた。試合が終わって帰ってきても、落ち込んでいるような顔の選手はいなかった。本当に楽しかったゲームができたと思うし、今シーズン最後まで試合を楽しむことを1年通してできたのではないかと思う。今日は特に4年生が頑張った。シーズン最後のゲームで4年生が後輩にいい背中を見せて、勝つために何をすべきかを見せてくれた。(来季に向けて)4年生が抜けると全く違うチームになるが、今日の入れ替え戦で1部に挑戦できる土台ができた。これからそれを3年生以下が積み重ねていかなければならないので、下級生には引き継いでやっていってほしい。
・永藤主将(総4=佼成学園)
入りを大事にしてきたのに、そこをやられてしまったのが敗因。後半惜しいところまでいけたが、あと一歩及ばなかった。自分が途中で抜けてしまったのは、キャプテンとして良くなかった。悔いが残っている。だが、全員が一丸となって、最後まで諦めなかったのは良かったし、だからこそ接戦まで持っていけたと思う。(4年間を振り返って)2年間主将をやらせてもらって、つらいことも多かったが、同期が助けてくれたので、まず同期に感謝したい。4年間VIKINGSでやってきて本当に良かった。(4年生が引退して)抜けてしまう部分も多いけれど、3年生は下級生の時から試合に出ている選手も多いので、頑張ってくれればもっと強いチームが作れる。あとは2年生も来年から上級生になるので、どう成長してくれるのか楽しみだ。(後輩に向けて)コーチを含め、同期、仲間を信じていればいい方向に向かっていくので、最後まで諦めないでほしい。
・森(営4=狭山ヶ丘)
1年生から4年生関係なく、入れ替え戦は初めてだったので最初は固かったかなと思う。そこで2本相手に取られてしまった。でも、そこから切り替えることができ相手のプレーを止められることができた。(オンサイドキックのリカバーについて)長岡と合わせ続けていて、決まるなという自信があった。やっていたことが報われた。(今シーズンを振り返って)今年は例年にないハードなトレーニングに取り組んできて、入れ替え戦に来れたのはトレーニングが正しかった証拠だと思うんですけど、1部に勝てないのでまだまだ足りていない。ディフェンスは3年生がほとんどで来年も残るし、3年生は本当に頼もしい存在であって、自分は後輩という関係というよりは一緒に引っ張ってきたと思っている。今年を糧により成長して来年は1部に行ってほしい。全体的に言えば4年間ずっと楽しくて、最後の最後まで競っていくゲームだったので試合も楽しかった。4年間充実していて楽しくて、人にも恵まれたなと思う。
・山形(済4=成城学園)
悔しい気持ちが大きい。最初は自分たちのフットボールができなかった。最後の方は自分たちのプレーができたのでいい部分もあったけれども、後輩たちを1部に連れて行ってあげたかった。(2TDについて)意地でした。足をけがしていて、時崎も知っているので最後の2ヤードとかのシチュエーションになったら使うからと言われていた。絶対に取ると思っていたので、結果を残すことができたのはうれしい。(今シーズンを振り返って)めちゃめちゃつらかったし、精神的にも体的にもしんどかった。だけど、4年間の中で一番楽しかった。できるのであれば、このチームでもう1年やりたいと思えるし、チーム全員好きだし、本当に楽しかった。
・大森(ラ4=東京)
1部にいく前提として入替戦は達成できたので、あとは楽しむだけ。「ここまできたら勝つ」ということだったが、アメリカンフットボールを楽しんでムードで勝ちにいこうと話していた。(観客席からの応援は)声援が地鳴りのようにすごく聞こえて力強かった。プロではないが、これだけ見守っている人がいるんだと。そのためにも勝たなければいけないと思ったがこういう結果に終わってしまったことは残念。(試合内容は)まだ力の差があった。入りが悪かった。それでも後半であれだけ持っていけたので、後半の流れを最初からできたら良かった。(4年間を振り返って)あっという間で、練習以外の時間も楽しかった。チームメイトとは今まで一緒にばかしてきて、大学生活=アメフト部なので。一緒にいれて楽しいことしかなかった。今年僕らでここまでこれたので、来年こそは1部にいってほしい。
・時崎(社4=八千代松陰)
練習などでは怒ることもあったので、最後の試合だし「盛り上げていこう、楽しんでいこう」と思ってやった。(この2週間は)相手のビデオを見て研究していた。今日までは長く感じたが、わくわくしていた。残念な結果となったが、楽しくできた。序盤、オフェンスとして成り立ってはいたが勝負所で勝てなかった。レシーバーは若い選手がメインでよく頑張ってくれたが、この試合で一球の怖さもわかったと思う。これからの練習で、一人一人が意識を高く持ってやってくれることを期待したい。(観客席からの歓声は)1部の入替戦は22年ぶりで、いつもお世話になっている方々が大勢集まってくれた。応援されていることは本当にうれしい。アメフトが好きで、毎日が楽しかった。同期もおもしろくて、後輩もかわいくて。充実した4年間で、引退するのが寂しい。これまでは「自分がうまくなればいいや」と思っていた。4年生になってQBとしてチームを勝たせなければいけないと、細かいことも色々言ったり大変なこともあった。それでも一人の人間として成長できた1年だったので、これからも自分を磨いてみんなのためになるようにやっていきたい。(後輩へ向けて)みんな仲が良いが、その中で同期、後輩に厳しくできればと。チームワークは良いので、あとは個々がライバル視してチームとして成り上がっていけるよう頑張ってほしい。
TEXT=松井彩音ㅤPHOTO=西川諒、石田佳菜子