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2015.12.25
硬式野球

[硬式野球]特集 8日連続独占インタビュー~昇格の舞台裏 最終日 原樹理

 悲願の1部復帰。高橋政権最長の6季の2部生活に終止符を打ったこの秋、彼らはどんな思いを抱いて戦っていたのだろうか。そんな舞台裏に迫った特別インタビューを8日間に渡ってお届けする。

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 最終日は原樹理主将(営4=東洋大姫路)。6季もの間立ちはだかった壁を越える戦いは、想像絶する覚悟が必要だった。その険しい道のりを、多くの報道陣の前では決して語られることのなかった素直な言葉で振り返る。春8試合、秋11試合、特別インタビュー3回、独占手記1つ。苦しいときでもつらいときでも1年間、誰よりもその思いをスポトウに残し続けた原のラストメッセージ。(取材日:11月29日、聞き手・浜浦日向)



――激動のシーズンを終え、今はどのように過ごしていますか。

 ランニングとか、トレーニングばっかりですよ。とりあえずちょっと前までバリバリやっていたから休息もあるし、かといってやらなあかんしって難しいところかな。


――入れ替え戦に勝利し、最後の1年を終えた翌日というのはやはり疲れを感じましたか。

 むっちゃきたよ。それはもう動けへん。


――入れ替え戦の激闘を物語っていますね。改めて振り返ってみて感じることは。

 1試合目からとにかく全力だった。初戦は完封するしかないと思ったし。(球数を抑えて打たせて取るいつもの投球スタイルとは違ったが)それでもいいと。それより点を取られたくなかった。


――結果的にはスクイズ1点のみでの敗戦。初戦を落とした心境というのは。

 気持ちが切れかけたね。心を砕かれた。まともに会話できたのは(ブルペン捕手の)深海(営4=PL学園)と小野田(法4=桐生一)くらい。風呂入っても誰もおれとしゃべらへん。みんなおれがキレてるってわかっているから。今だからみんな言うけど、「あのときはほんとにやばかった」って。自分にいらいらしていた。(そこからは)色んな思いがあったよ。もう負けて楽になりたいとも思った。でもやっぱり勝ちたいんですよ、最終的には。1つ目勝って、連勝で決めるか2日目休んで3日目もっかい投げるかというプランだった。でも初戦負けた瞬間、3連投や。3連投しかないと思った。


――入れ替え戦、特に1、2戦目はナイター。スタンドでは多くの方が厚手のコートに身を包む中、3試合最後まで半袖姿を貫きましたね。

 うん、それは自分の中で決まりごと。(今季唯一、七分袖を着た)拓大との初戦であかんかったから。悩んだけどね、そりゃあ寒いし。でも東洋って半袖多いでしょ。ロッカールームで「おれ半袖やからさすがにお前ら半袖でしょ?」とか冗談半分で言ったら、安西(営3=聖光学院)とか茶谷(営3=東北)とか林(営4=桐生一)とかみんな半袖になった。阿部(営3=帝京)はずっと半袖だし。増渕(営4=鷲宮)なんか半袖持ってないから、ノースリーブでやってました。


――今春開幕前、座右の銘として「何かを得るためには犠牲が必要」という言葉を色紙に書きました。では、この1部復帰のために犠牲にしたことって何ですか。

 精神的にきつかったし、苦しい思いも何度もしてきた。でも、この一瞬のためにすべてをかけてやってきた。今さら別に遊びたいとも思わないけど、遊ぶなら練習しよってなったし、ぼーっとしてても練習せなって思った。だからこそ、限界を常に感じながらも最後まで投げ切ることができた。


――春に比べて秋の投球は。

 悪いなりに良かったと思うかな。悪くなることはわかっていたし。リーグ戦前の取材でも言ったけど、どんだけ苦しい状況で耐えれるかが大事。拓大の初戦はちょっとやばかったけど、序盤3回でKOされるなんてこともなかったし、何とか柱として耐えることができたかなと思う。


――「勝った」というより「耐えた」という感覚ですか?

 マウンドに立っていることに必死だった。たまにひじ上がらへんとか冗談っぽく言ってたけど、内心本気。肩がしんどくても、最後の方は腰がしんどくて動かなくても周りを見渡して、笹川(営3=浦和学院)とか阿部とか中川(法1=PL学園)とか安西とか見たら「よし、もうひと踏ん張りしたろ」って。こいつらのためにと思って〝立ってた〟ほんまそれがすべて。昔から自分のためよりも、人のためにと思った方が頑張れる。応援してくれる父兄もいるし、監督もあれだけ力振り絞ってやっている。周りを見れば頑張れるから。じゃなかったら耐えられないでしょ?自分のことだけだったら別にどうでもええもん。


――春先に「1部を経験した学年は自分たちが最後だから、もう後輩に来年頼むぞと言うことはできない」と話していました。では、復帰をかなえた今はどうですか。

 頑張れとも頼むぞとも言わないですね。でも楽しみと言えば楽しみです。自分の大学での仕事はこれで終わり。ずっと2部で、日本一になったわけでもないので決してほめられることではない。でも、戦う姿勢というのは見せられたかなって。そしてその姿勢は、きっと引き継いでいってくれると思います。


――最後に、新主将の笹川へメッセージをお願いします。

 覚悟があったらできる。それがなかったらおれもあそこまで頑張れなかった。背負うものもあれば、それが自分のモチベーションに変わった。環境は人を変える。正直しんどいけど、あいつもこのままじゃあかんと思うし、甘えることなくこの1年間やってほしい。


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8日連続独占インタビュー~昇格の舞台裏

第1日 高橋昭雄監督

第2日 中川圭太

第3日 田中将也

第4日 阿部健太郎

第5日 笹川晃平

第6日 増渕雅也

第7日 林悠平


連載は本日が最終日です。

硬式野球部の秋の戦いはこちらからご覧いただけます。