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第40回全日本競歩能美大会
兼 Asian 20km Race Walking Championships in NOMI 2016
兼 第31回オリンピック競技大会(2016/リオデジャネイロ)男子・女子20km競歩代表選手選考競技会
併催 第10回日本学生20km競歩選手権大会
3月20日(日)日本陸上競技連盟公認能美市営20㎞コース(2.0㎞周回コース)
日本学生選手権 男子20km競歩
1位 松永 1:18'53
2位 及川 1:20'55
DQ 山下優
DNS 河岸
ガッツポーズでゴールする松永
及川は自己ベストを更新してみせた
二人そろって表彰台へ上がった
第40回全日本競歩能美大会にて松永(工3=横浜)が優勝し、今夏行われるリオデジャネイロ(以下、リオ)五輪への代表内定を獲得した。また併催された日本学生選手権では及川(済2=愛知)が2位に入り、松永と共に東洋大のワンツーフィニッシュを収めた。
リオ五輪の代表を懸けた最終戦。先月の日本選手権で失格となっていた松永は、代表選考へ最後のアピールをしようと攻めのレースを貫いた。スタートと同時に勢いよく飛び出すと、持ち前のスピードで一気に先頭を奪取。その後一度もトップを譲らず、「ラスト1周は気持ちよく歩けた」と終始レースを支配する圧巻の歩きで、見事リオ五輪代表の内定条件をクリアした。昨年の同大会では1秒差で世界陸上への切符を逃した苦い思い出もあったが、この日は左腕にチームスローガン「その1秒をけずりだせ」を書き込んで出場した。書いてくれたのは引退したばかりの惣宇利(総4=鯖江)元主務だ。「(服部)勇馬さん(済4=仙台育英)がいつも書いてて結果が良いので。勇馬さんの分まで絶対リオにいこうと思っていた」と松永。長距離部門から競歩部門へ、部門を超えて勝ち取った記念すべき代表第一号が誕生した。
光ったのは松永だけではない。「後半のことは考えなかった」と話す及川が、レース序盤から先頭集団に付いていく攻めの歩きを展開。「今年度一番練習が積めた」という言葉通り終盤も力を発揮し自己ベストを記録した。学生の部では松永に続く2位となり、先輩と並んだ表彰台では笑顔を見せた。日本選手権を欠場していた及川だが「来年のユニバーシアードでメダルを取ること」を目標に掲げており、久しぶりのレースでも成長への手応えを感じられた様子だった。
優勝した松永の歩きに対して酒井監督も「本当にいいパフォ-マンスで歩けた」と称賛した。そして代表内定のことに関して「桐生(済2=洛南)や服部弾(済3=豊川)も続いていってほしい」と他部門の選手に期待を寄せた。チーム全体で世界を目指している陸上競技部。トラックシーズンを前に、松永の結果がチームに上昇気流をもたらしたことは間違いない。
■コメント
・酒井監督
(松永は)優勝を狙っての能美だった。神戸の全日本競歩で失格があった後で不安なところもあったが、うまく乗り越えて本当にいいパフォーマンスで歩けた。(神戸での失格を踏まえて監督から具体的なアドバイスなどは)やはり丁寧に歩くこと。ただ、彼の良さを出さなくてはいけない。フロントで攻めるタイプなので早くから彼のレースをすることで他の選手たちの勝つパーセンテージが上がらないようにしていこうと。消極的なレースでは五輪に対するアピールが低くなってしまう。優勝したのと派遣記録を突破しているのでほぼ決まったと思うが、正式な陸連の発表があるまではマイナス要素を無くしたいというような意味でも攻めのレースをしようということを言った。(リオ五輪で望むことは)松永も世界ランキングに入っている。だからオリンピックは出場ではなく勝負をしにいく。今世界的に見ても十分チャンスはある。ただ出るのではなく、出るからにはメダルを狙っていけるように。OBからもマラソンに二人が出場することが決まっており、「駅伝から世界へ」というのは長距離だけではなく、陸上部全体でやっていきたい。このあとの桐生や服部弾も続いていってほしい。(他の選手は)山下は調整の段階から歩きに安定感が無かったので予想はしていた結果だった。及川は目標タイムを突破でき非常に本人の成長のきっかけになる大会になったのではないかと思う。
・松永(工3=横浜)
1ヵ月前の日本選手権から不安を払拭(ふっしょく)できるようないいレースができたと思う。(スタートから飛び出したのは)自分の判断というより、どんどん体が動いてしまったという感じ。昨日まで全然調子は良くなかったが、今日のアップの段階ですごい体が動くようになってきた。調整が最後の最後で偶然うまく合った。日本選手権での失格の後に体幹が使えてないことに気付いて、それから体幹を意識した補強を取り入れるようにした。リオを意識し始めたのは16㎞過ぎてから。途中、西塔さん(H26年度済卒=愛知製鋼)が後ろから追ってきているという情報も耳にしたが、仮に追いつかれてもラストスパートでは負けない自信があった。ラスト一周は気持ちよく歩けた。(リオ五輪では)もちろん世界一を狙っていく。ジュニアでは一番になった。ユニバーシアードでは3位だったが、そこで1、2位の選手が世界陸上でも入賞している。僕はその上を行きたい。ひるまず、臆せず前に。しっかり金メダルを取りたい。
・及川(済2=愛知)
久しぶりのレースでベストが出たのでとても楽しいレースだった。(日本選手権欠場の理由は)大会2週間前に膝を痛めてしまって練習が継続できず、20kmはごまかしが利かないので今日の能美一本に合わせた。そのおかげで調子はかなり上がってきて、今年度一番練習が積めたくらい調子が良かった。久しぶりのレースだったのでタイムもあまり気にせず攻めていこうと思った。後半のことは考えなかった。(今後は)松永さんとはまだ2分以上の差があるし、1時間20分を切らなければ戦えない。今回は手応えをつかめたレースだったので、これからのトラックでスピードをつけて、それをまた20kmにつなげていきたい。来年のユニバーシアードでメダルを取ることを目標に頑張っていく。
TEXT=伊藤空夢 PHOTO=伊藤空夢、吉川実里