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平成28年度東都大学野球秋季1部リーグ戦・中大1回戦
9月5日(月) 神宮球場
○東洋大8-3中大
飯田は粘りの投球で打線を勢いづけた
最後の打者を打ち取ると、飯田(営3=常総学院)は涼しげな顔で列に並んだ。
「バッターとの間の取り方や流れがつかめていなかった」と話すように、序盤は毎回走者を背負う苦しい投球だった。笹川(営4=浦和学院)の2打席連続適時打などで逆転し迎えた四回、立ち直りつつあった飯田が初回以来のピンチを招く。1死三塁の場面で簡単に追い込むも、決め球が甘くなり中前に弾き返され1点差。すかさず高橋監督がマウンドに向かい「慌てないで放りなさい」と声を掛ける。すると、「丁寧に低めに投げられたのが良かった」と持ち味の打たせて取る投球がさえ始め、五回以降は二塁を踏ませない圧巻の投球。指揮官の一言が、飯田を立ち直らせた。西川元(営3=浦和学院)が「オープン戦から調子が良かった」と言う直球とスライダーのコンビネーションで相手打線を手玉に取れば、「点差がついてきて、攻めようと思ったから」と中盤からは縦の変化球も有効活用。序盤には無かった球に相手打者は次々と空を切った。
今春からつけるエースナンバーは、かつては原樹理(現東京ヤクルト)も背負った番号。その原は3年秋に開幕投手を務めると本領を発揮し、そこから一気に大黒柱へと成長していった。奇しくも、飯田が初完投勝利を挙げたこの試合も開幕戦で、3年秋に行われているものだ。その過程はどこか原と重なるところがある。8月下旬、指揮官は「今一番いいのは飯田ですよ」と話し、投手陣のキーマンに指名。この試合の結果に「完投できて良かったですよ」と手放しで褒める。しかし、当の本人は「先頭打者を出すことが多かった」と反省も忘れない。「チームに貢献したい」という思いを常に抱いている飯田。人一倍チームへの思いが強い右腕が、原と同じく大黒柱と呼ばれる日もそう遠くはない。
■コメント
・飯田晴海(営3=常総学院)
(開幕戦の先発は)昨日の夜、監督さんから伝えられた。チームの勝利を考えて投げました。調子は悪くなかったが、球が高めに入ってしまった。初回はバッターとの間や流れがつかめていなかった。(五回以降は無失点)丁寧に低めに投げられたのが立ち直れた要因です。ストレートとスライダーは自信があるので、今日は真っ直ぐを軸に変化球を見せながらという感じでやっていました。先頭打者を出すことが多かったので、次は出さないようにしたいです。次もチームの勝利に貢献したいです。
・西川元気(営3=浦和学院)
(自身の調子は)あまりよくなかった。飯田は、開幕試合ということで緊張してしまい、立ち上がりはよくなかった。三回に打者が一巡してからは落ち着いた。真っ直ぐを中心に配球を組み立てた。(後半で縦の配球を使ったのは)点差が付いてきて、攻めようと思ったから。オープン戦から真っ直ぐの調子がよかったと思う。明日は勝てば勝ち点が取れるので、死にものぐるいでやる。
TEXT=菅野晋太郎 PHOTO=永田育美