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第34回全日本大学女子駅伝対校選手権大会
10月30日(日) 仙台市陸上競技場~仙台市役所前市民広場
総合 8位 東洋大 (38.0km)2:07'34 ※シード権獲得 東洋大新
1区 (6.4km)20'41 白川恵理菜 (8位通過・区間8位) ※東洋大新
2区 (5.6km)18'57 室伏杏花里 (10位通過・区間14位)
3区 (6.8km)23'15 森田歩実 (12位通過・区間13位) ※東洋大新
4区 (4.8km)16'27 内田寧々 (10位通過・区間10位)
5区 (9.2km)30'29 佐藤早也伽 (10位通過・区間8位) ※東洋大新
6区 (5.2km)17'45 山口いずみ (8位・区間9位) ※東洋大新
流れをつくった白川
第1中継所 白川(右)―室伏
第2中継所 室伏(左)―森田
第3中継所 森田(左)―内田
第4中継所 内田(左)―佐藤早
第5中継所 佐藤早(右)―山口
ゴールした山口に駆け寄る仲間たち
ついに果たした入賞に満開の笑顔を咲かせた
4度目の全日本大学女子駅伝(以下、杜の都)で初入賞。1区の白川(食1=常総学院)が入賞圏内でタスキを渡し流れをつくったが、一時は12位まで落ち込んだ。しかし、上級生の内田(食3=学法石川)や佐藤早(食4=常盤木学園)が順位を引き上げアンカーの山口(食1=順天)へ。9位とは3秒差の僅差で創部初のシード権を勝ち取った。
9月に行われた関東女子駅伝で、3位入賞の立役者となった白川が1区に起用された。シード圏内でタスキをつなぐという目標に向け、序盤からハイペースの集団に食らい付いていく。永井監督が「練習では不安な部分があった」と心配していたが、一切不安を感じさせない攻めの走りを見せた。1区の東洋大記録を50秒以上も縮め8位で2区の室伏へ。1区で1桁の順位でタスキをつないだのは初めてのことだった。集団がまだ離れていない2区はごぼう抜きが可能な区間。スタートで出遅れた松山大の驚異的な追い上げもあり、2つ順位を落としてしまう。続く森田も巻き返せずにチームは12位まで落ち込んだ。しかし2、3区で順位を落としたものの、失速することなく粘りを見せたため十分に前に追い付ける位置だった。
「先輩なら前を追える」。森田の上級生への期待通りに4区の内田が10位まで順位を押し上げた。今季は副将として練習でも積極的に声を掛けていた内田。「自分が周りに支えられている中で競技できているんだということを感じた」と走力だけでなく、気持ちの面でも大きく成長していた。また唯一3年生で出走し、メンバーに入れなかった仲間の思いも背負い、力を振り絞って笑顔でタスキをつないだ。そして今大会の最長区間で各大学のエースが集まる5区には、今年も佐藤早が任された。「絶対に追い付いてやる」と意気込み、最後の杜の都を駆け抜ける。前をいく大学との差をじわりじわりと詰めていき、ついに入賞射程圏内まで追い上げた。最後抜かし切れなかったことに悔しさを滲ませたが、このエースの走りに森田は「鳥肌が立つくらい感動した」と語った。10位は変わらずも8位との差は9秒。シード権は6区の山口に託された。「自分で8位まで上げるぞ」と強い気持ちで1年生ながらも慌てることなく追いかける。前の福岡大が最初の1kmを飛ばしたがそれに揺さぶられずに山口は自分のペースを貫いた。冷静にレースを進め、想定していた通りに後半で大逆転。9位の福岡大だけでなく関西大も抜かし8位浮上。「(山口)いずみが曲がってきた瞬間本当にうれしかった」と主将の天羽(食4=仙台育英)をはじめとする仲間たちがゴールで待っていた。そして、ゴールテープを切ったと同時に山口に駆け寄り喜びを分かち合った。
これまでシード権獲得を目標にしてきたが何度も届かなかった。昨年は杜の都後の富士山駅伝でまさかの繰り上げスタートに涙を流した彼女たち。そのチームがついにシード権を手にしたのは、主将の天羽が声を掛け合い、チームを変えてきたからだ。今回走ったメンバーだけでなく、エントリーされなかったメンバーも全員で杜の都に挑んだ。アンカーの山口が最後まで粘れたのは「仲間に対する感謝の力」と話す永井監督。まさに全員でつかんだ初めての快挙だった。次に控えるのは4学年で挑む最後の富士山駅伝。昨年の悔しさを晴らすべく鉄紺女子の挑戦は続く。
■コメント
・永井監督
よく走ってくれた。いい選手たちに恵まれて幸せです。(レースを振り返って)1区の白川は練習では不安な部分があったが、集団の前の方でレースをしてくれて良かった。室伏があと10秒くらい前の方でいってくれると、もうちょっといい流れだったと思うが、最低限の走りをしてくれた。でも後半耐えられるようになったのが、室伏の1年間の成長だと思う。3区の森田は耐えるのが信条。練習でも外したことがない選手。最後は粘ってくれると信じて、その通りに走ってくれた。4区の内田に関しては、3区の森田と一番迷った。1年間の安定性をみて、森田を3区に起用したが、3区と4区で1つの区間という考えでいた。そういう点では内田も力通り走ってくれた。5区の佐藤早も夏はしっかり練習が積めて、実業団の練習にもいっていた。その疲労がやっと抜けてきて、いい調整をして今回に臨めた。最初から思い切っていきなさいと声をかけたが、最後はシード権が見えるところまで持ってきてくれて、よく走ってくれた。最後は、山口がスタートした時点は少し厳しいかなと思っていた。1年生ながら冷静に走ってくれた。アンカーは当初、主将の天羽を使うつもりだったが、前日まで山口の調子が良かった。最後まで使ってあげたいという情はあったが、そこは抜きにして山口を起用した。天羽は生活から練習まで常に声を掛けていた。メンバーから外れても最後まで集中を切らさないでいてくれたのはすごい。(シード権の要因は)チーム全員が頑張ってくれた。エントリーしてるのは10名だが、それ以外の選手も同じような緊張感を持って取り組んでいた。山口が粘れたのも、そういう仲間に対する感謝の力だと思う。シード争いをしたチームと力は互角だが、その部分が勝っていた。走れなかった選手も含めみんなに感謝したい。(来年は半数以上のメンバーが残るが)佐藤早の抜ける穴は大きいが、下級生が育ってきている。これからもシード権を取り続け、1つ1つ順位をあげていきたい。日本一への準備ができるように頑張りたい。
・上岡コーチ
(今の気持ちは)素直にうれしい。この大会初出場から4回目でシード権を獲得することができたが、これは去年の結果からすると遠い存在だった。しかし関東女子駅伝で3位になり、選手も手応えやシード権獲得も夢じゃないということを感じて、1ヵ月準備してきた結果だと思っている。(選手の走りを見てどうだったか)仙台に入ってから私たちスタッフができることは、無事にスタートラインに選手たちを立たせること。選手たちはそれまで練習をしっかりこなせてきていたので、体調を壊したりせず、実力通りに走ればシード権獲得に近い走りはできると思っていた。みんなしっかり実力通り走れたと思う。(これからチームをどのようにしていきたいか)4年生が今年最後なので、去年の富士山駅伝で悔しい思いをしてからチームの中で今まで良かれと思ってしてきたことを少し変えてやってきた。そのことに文句を言わず、目標を1つに定めてやってきたことが間違っていなかったと今回の結果を通して分かることができたので、それを4年生が卒業してからも引き続き3年生以下が引き継ぎ、しっかりチームをまとめていくと思う。今回はシード権を獲得することが目標だったが、これからは優勝争いをすることも夢じゃないと感じられたので、来年はそういったチームを目指していきたい。
・天羽主将(食4=仙台育英)
正直にシード権を取ること目標にしてきたので、(山口)いずみが曲がってきた瞬間本当にうれしかった。今までやってきて良かった。(創部5年という節目に)結果を残したいとずっと言ってきた。途中やはり難しいのかなと思ったときもあった。それでも実際8位というのが獲れて、この1年間練習以外の生活面にしてもやってきたことが正しいということがわかって本当に良かった。(レース前には)みんな集まって言えるときはなかったが、前を見て積極的にと言える人には言っていた。(唯一の4年生で走った佐藤早には)自分自身が最後走りたかったが、結果として早也伽一人だけが4年生になってしまい、自分もキャプテンとして入られれば良かったというのもあった。早也伽は1年生のときからエース区間を任されてずっと走ってきたので、早也伽自身の結果としても楽しんでもらえたらといい思っていたし、悔いの残らないようにしてほしいと思っていた。(今後は)富士山駅伝でも今回8位入賞ということでプライドを持たないといけないと思う。一発屋のようにならないように2ヵ月先なので、ここに入っているメンバー以外もまた一からのスタート。最初から足りないところは修正しつつ、もっと高められるところは高めて、また富士山でもいい結果が残せるように頑張っていきたい。
・1区 白川恵理菜(食1=常総学院)
シード権獲得を目標にしてきたので目標を達成できて本当にうれしい。シード権圏内で渡すことが自分の目標だった。ギリギリだったのが少し悔しいが、なんとか先輩にシード権圏内で渡すことができて良かった。(タスキリレー時の心境は)あとは先輩たちがなんとかしてくれると思って渡した。(富士山駅伝、来季に向け)トラックの5000mで15分台を出すことと、富士山駅伝では4年生の先輩が最後なので、いい結果で終われるようにしたい。
・2区 室伏杏花里(食2=白鴎大足利)
シード権を取れて素直にうれしい。1年生がいい流れで来てくれたが、流れを少しだけ落としてしまったのが悔しい。(3区の森田とのタスキリレーについて)初めての2年生リレーだったが、順位を落としてしまった事は申し訳なかった。(富士山駅伝に向け)2年生が今回足を引っ張ってしまっていたので、記録会などでタイムを伸ばして、富士山駅伝でもメンバーとして走れるように。去年1区を走らせてもらったリベンジを兼ねて頑張っていきたい。
・3区 森田歩実(食2=浜松商)
シードを獲得できてとてもうれしい。(ゴールに山口選手が入ってきたときの心境は)いずみならやってくれると思っていたので(8位で)来たときは本当にうれしかった。(佐藤早選手の追い上げる姿を見て)鳥肌が立つくらい感動した。(自身の走りを振り返ってみて)1区で1年生がいい形でタスキを渡してくれたが、その流れを崩してしまい順位を落としてしまったのが悔いが残る。(3区に決まったときは)2番目に長い距離ということで驚いたが、任せられたということでしっかりと4区の先輩につなげようと思った。(タスキを渡すときは)先輩なら前を追えると思い頑張って下さいという気持ちだった。(次に控える富士山駅伝に向けて)チームとしてはすごくうれしいし良かったが自分の走りとしては悔いが残った。まずは選手として選ばれるようにこれからの練習で自分の弱いところを改善していけるようにしたい。今回8位に入れたので、チームがもっとさらに上を目指せるように頑張りたい。
・4区 内田寧々(食3=学法石川)
(今の気持ちは)自分の成績としてはもう少しいいところを狙えたら良かった思う。しかしチーム全体で目標としていた8位という順位になり、まさか本当にシード圏内に入れるとは思っていなかったので、すごいびっくりしているし、うれしい。その一方で、来年はこれ以上を目指していかなければならないという気持ちもあるので少しプレッシャーもある。(どんな気持ちで走ったか)今年のチーム構成として、1年生も一人一人が力を持っていたので、登録メンバーの誰が走っても、こういう結果を狙えると思っていた。その中でも自分が選ばれて走れたことは素直にうれしかった。また、走れていないメンバーの分まで走られればいいと思った。今年は、自分が周りに支えられている中で競技できているんだということを感じた1年だったので、そういったことを伝えられればいいなと思い走った。(富士山駅伝への意気込みは)まだ時間もあるので、もうひとランク上に自分の走りを持っていきたい。そのために、毎日の練習を基本を大事に丁寧にやっていきたい。また去年の富士山駅伝には苦い思い出があるので、それを挽回できるよう頑張っていきたい。
・5区 佐藤早也伽(食4=常盤木学園)
目標としてたシード権を取れたので本当に良かった。(タスキをもらったときは)前が見える位置だったので絶対に追い付いてやるという気持ちで走った。ずっと同じくらいのペースで走って、ラスト前に追い付きそうだったが、抜かせなかったのが悔しい。(アンカーへは)8位以内に近い順位だったので頑張ってほしいと思って渡した。(この大会は)過去3回は個人的にも、チーム的にも厳しい結果で悔しい気持ちの方が強い。最後でずっと目標としてきたシード権が取れたので良かった。(今後は)昨年の富士山駅伝はタスキをつなぐこともできなかったので、タスキをつなぎ切ることが最低目標。富士山駅伝でもいい結果を残して大学最後のいい試合にしたい。
・6区 山口いずみ(食1=順天)
10位でもらったが、前とはそんなに空いていなかったので落ち着いていくつもりだった。自分で8位まで上げるぞという気持ちだった。途中で差が開いているというのを聞いたが、8位の事だけを考えて後半で詰めていこうと思った。前の福岡大が最初の1km速く入っていたが、自分は抑えて入った。それから徐々に詰めていって、前の関西大も抜けたので良かった。(ゴールテープを切った瞬間は)ただただうれしかった。ずっとチームの目標がシード権だったので、それを実現できて本当に良かった。(アンカーに選ばれたのは)前日になってから。他のところは大体決まっていたが、自分のところだけギリギリまで決まらなかった。でも、いつでも走る準備はできていたので、今日は思い切って走った。(次に向けて)富士山でもいい結果を残して、強い東洋を少しでもアピールできるように頑張りたい。
TEXT=福山知晃 PHOTO=大谷達也、伊藤空夢、吉川実里、小野由佳莉、福山知晃