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平成29年度東都大学野球1部秋季リーグ戦
9月29日(金) 神宮球場
○東洋大11-2立正大
適時三塁打を放った宝楽
生還し、ベンチの仲間に迎え入れられる
ベンチでは常に仲間にゲキを飛ばし続ける
「とにかく一本を出すのに必死だった」。4回2死一塁で打席には宝楽(営4=PL学園)。この場面で「一番欲しいのは長打だ」と振り抜いた打球は右翼線へ抜けていく。持ち前の足を生かして一気に加速し、チーム11得点の口火を切る適時三塁打に。三塁コーチャーを務めていた井上コーチから「やっと出たな」と言葉をもらうと、宝楽の顔には笑みが広がった。続く8回にも「その場その場の仕事ができた」と安打を放ち、チャンスに貢献。これで今季の安打は6本となり、春リーグの通算安打数を超えた。「打っているイメージは自分の中では全然ない。でもとりあえずはよかった」と安どの表情を浮かべた。
5試合ぶりの安打は「つらかった」。調子は悪くないのにもかかわらず、いい当たりでも野手の正面に飛び簡単にアウトを取られてしまう。結果が出ないことに気持ちだけが焦るばかりで、試合後に「なんで打てんのやろ」とつぶやいて引きあげる日もあった。監督に「ツキがないな」と言われても、バットを振ることはやめなかった。グラウンドに出れば真っ先にキャッチボールを始め、まだ打順が先でもベンチの奥でバットを振る。そして、たとえ負けそうなピンチの状況でも、大きな声で仲間にゲキを飛ばし続ける宝楽が見放されるわけがなかった。苦しみながらも放った今日の一打は、絶対に負けが許されないチームに一筋の光をもたらし、勝利への流れを引き寄せた。
適時三塁打を放った直後の守備。右翼に目を向けるとスタンドからの大声援に応える宝楽の姿があった。春は「やりたいな」と思っていたが、最終戦で適時打を放った時は「ふざけれる立場じゃない」と遠慮した。しかし、今日は声援にあわせてバッチリ決めポーズをした宝楽は全身で喜びを表現した。
「今日はネジがはまって打てたのではなく、たまたま」。こう答える宝楽は今日の安打ではまだ満足していない。ずっと探し続けている足りないネジ。それがはまった時、また輝く一打が神宮に放たれ、風のようにグラウンドを駆け抜けるに違いない。その一打が連覇を近づけるカギとなる。
■ コメント
・ 宝楽(営4=PL学園)
今日負けてしまったら優勝争いに残れないので今日勝ってとりあえずほっとしている。なかなか結果が出なくて、調子はそこまで悪いわけじゃなかったので、でも野手の正面とかで監督さんにはツキがないと言われていた。とにかく一本を出すのに必死だった。結果的にそうなったのでそれは嬉しいですけど、とにかく必死にあとにつなごうという気持ちしかなかった。(2死一塁の場面は)一番欲しいのは長打だと思った。ひっぱって、間をうまく抜けていった感じ。狙い球はなかった。来た球を打ち返す感じ。(監督からは)練習の時から悪くないと言われていて、当たっても野手の正面だったので、なかなかヒットが出ず、気持ちの面で焦っていた。(三塁に到達して井上コーチからは)やっと出たなと言われた。(5試合ぶりの安打になったが)つらかった。それでも使い続けてくれた監督さんにも恩返ししたいと思う。(8回にも安打を放ち、マルチヒットになったが)その場その場で仕事をしよう、無死一塁で、バントはないぞと監督さんに言われていて、最悪でも引っ張って、ランナー進められたらいいなと思った。(春の安打数を超えたが)打っているイメージは自分の中では全然ない。気持ちの焦りばっかりがあったが、とりあえずよかった。いろいろ変えようとか思わなくて、自分の中でもそんなに調子が悪いとかなかった。全部正面ついてて、何かひとつネジが足りないのかなという感じだった。苦しかったが、とりあえずバットは振り続けた。今日は、ネジがはまって打てたというわけではなく、たまたま。2アウトからのライト線のフライで太陽かぶってしまって全然見えなくて、そこから僕のミスで2アウト3塁のピンチにしてしまったので、飯田(営4=常総学院)に負担かけてしまった。取り返してやろうとは思っていた。今、優勝を狙える位置にいるので、ここから折り返しもしっかりやって優勝したい。気を抜かずに練習を気を引き締めてやっていきたい。
TEXT=伊藤梨妃、PHOTO=伊藤梨妃、永田育美