記事
第101回 日本陸上競技選手権リレー競技大会
10月27(金)~29日(日) 日産スタジアム
▼3日目
全日本選手権リレー男子4×400m決勝
1位 東洋大 (齊藤旬ー櫻井朴ーウォルシュー吉津) 3'07"11
レース後は笑顔を見せたマイルメンバー(左からウォルシュ、櫻井朴、吉津、齊藤旬)
最後まで早大との激戦を繰り広げた
豪雨が襲う日産スタジアムで行われた日本選手権リレー男子4×400mリレー(以下、マイル)決勝。大会6連覇を目論む早大を相手に激戦を繰り広げ、接戦の末0.01秒差を制し東洋大が初優勝を飾った。
予選からメンバーを2名入れ替えて臨んだ東洋大だが、ここで梶原監督が策を仕掛ける。今季の全日本インカレ(以下、全カレ)の優勝メンバーである松原(法2=九州学院)を外し、1年生の齊藤旬(法1=北陸)を1走に投入。さらに前日の4×100リレーに出場したためマイルの予選では温存していたウォルシュ(ラ3=東野)を3走に起用。予選で好走を見せた吉津(ラ1=豊橋南)をマイルの要であるアンカーに抜てきした。本来ならアンカーにウォルシュを据える走順が東洋大のベストオーダー。しかし今回「どんな走順でも勝てるように、誰が走っても勝てるようなレースにしよう」と個々のレベルアップを狙い、来季へ向け学生記録を視野に入れるためのオーダーでレースに挑んだ。
レースは1走の齊藤旬が前を走る城西大を目安にペースを調整し、序盤出遅れるもののペースを徐々に上げる。大舞台での決勝が初めてだという齊藤旬だったが、落ち着いた走りで2走の櫻井朴(総3=国学院栃木)へ。全7大学がほぼ同時にバトンパスを行う僅差の中、1走と2走の間でバトンパスが少しもたついた東洋大。櫻井朴は遅れをとり、トップの早大との差を大きく広げられてしまう。ここで悪いムードを断ち切ったのがエースのウォルシュ。「今シーズンで一番良かった」と大きく離れた早大との差を一瞬で追い抜くと、さらにギアを上げ余裕を持ってトップでアンカーの吉津にバトンを託した。そのまま逃げ切りを図る吉津だったが、同種目5連覇中の王者早大が黙ってはいない。加藤(早大)が200m過ぎで加速し吉津をとらえると、両者並んだまま同時にフィニッシュ。結果は写真判定にゆだねられた。会場が静寂に包まれる中、電光掲示板に最初に映し出されたのは“東洋大”。2位早大との差は0.01秒という大接戦を制し、初の日本選手権リレーのタイトルを獲得した。
全カレに続き日本選手権リレーを制し、2冠を獲得したマイルリレー。走順、メンバーを変えてもなお優勝を飾り、着実にチームの底上げが結果として結びついている。来季は関東インカレを含む3冠、そして日本学生記録の更新を目指すマイルメンバー。ますます成長を遂げる彼らの活躍に目が離せない。
▪コメント
・ウォルシュ(ラ3=東野)
いつもとは違う走順で、それでも勝てたというのはチームの力が上がっている証拠なので、そこに関しては練習の成果が出ているということなのでうれしい。4継で失敗してしまったので吉津を信じて走った。前回の4継で刺激が入って、今回しっかり走れたんじゃないかなと思う。今シーズンは調子がいいわけではなかったが、今回の走りは今シーズンで一番良かったと思う。
・櫻井朴(総3=国学院栃木)
全日本インカレの優勝も味わうことができたが、今回は簡単に勝てるとは思っていなくて0.01秒の差で勝てたということは日ごろの練習の成果が出た。初優勝ということもあってうれしい。(走順を変えた理由は)全日本インカレの順番だと、絶対に勝てる走順。つなげばジュリアン(ウォルシュ)が絶対勝つというのは分かっているので、その中で梶原監督が来年学生記録を出すためにどんな走順でも勝てるように、誰が走っても勝てるようなレースにしようと今年最後のレースをこういった走順で臨んだ。0.01秒差で勝つことができたが0.01秒が勝敗を分ける陸上の醍醐味を肌で感じることができた。(来季は主将としてのシーズンになるが)自分たちのマイルは勝てているが全体を見ると4継。桐生(法4=洛南)さんという大きな存在が抜けて戦力ダウンが見込まれるが、大型ルーキーが入ってくるので、総力戦で4継マイルと関カレ、全カレ、日本選手権リレー全部獲りたい。マイルとしては学生記録を狙っていきたいし、主将として冬季の戦力の底上げに全力を尽くしたい。
・齊藤旬(法1=北陸)
1走は高校の1年生振りだったが、2、3、4走と頼もしい先輩と同期でちゃんと回せば1位で帰ってくれると思っていたので、なるべく先頭の方でつないでいい順位で回せたらいいと思っていた。関東インカレ、全カレと決勝の舞台に立つことができなくて悔しい気持ちがあったが、今回決勝の舞台に立てたという喜びと、初めての決勝で優勝できてすごくうれしかった。
・吉津(ラ1=豊橋南)
自分としては全カレを経験させていただいたが、その時はジュリさん(ウォルシュ)がアンカーにいたので安心して走ることができた。今回は自分がアンカーということで勝ちきらないといけないとなった時に、2走3走とすごい先輩がいて1走の同期もしっかり走ってくれたなかで、その走りを無駄にできないと思いながら走った。最後早大の(加藤)修也さんが追いついてきた時に反応が遅れたが切り替えができたことはこれから先どのような走順になっても生きてくると思っている。(アンカーを任されて)このメンバーで走れば勝てると思っているので、全カレの時は1走が松原さんだったが、齊藤(旬)でも勝てると他の大学に見せつけることができて良かった。
TEXT/PHOTO=大谷達也