記事
08年ぶりのリーグ戦春秋連覇を成し遂げ、今年度で勇退する高橋監督の有終の美を飾った硬式野球部。春の笑顔の優勝から一転、秋は多くの選手から涙があふれるほど、戦国東都の頂は険しかった。Vロードを歩んだ選手の心境をお届けする。
第1日目は佐藤都志也(法2=聖光学院)内野手。捕手から一塁手にコンバートしながらも一年通して戦い抜き、2季連続ベストナインを獲得した。12月には日本代表候補選考合宿にも参加した期待の星。「これからは捕手もやりたい」と西川(営4=浦和学院)の後釜も狙う成長株がこの秋を振り返る。(取材日・11月26日、聞き手・星川莉那、美馬蒔葉)
――秋季リーグを振り返っていかがですか
前半は調子が良かったが、立正大戦から落ちてしまった。自分の中では悪いと思っていなかったが、結果に出なかった。試合を通して、何をしなければならないかという工夫を自分で考えられなかったです。亜大との優勝決定戦の前に時間があったので、監督と話してコツをつかめました。来年はそれを活かしてもっとレベルアップしたいです。
――立正大戦では守備中にボールが当たるアクシデントもありましたね
頬骨にヒビが入っていました。当日熱が出て、その後もずっと麻酔がかかっている感覚が顔の右側にありました。口も開かなくて大変でした。顔にボールが当たって探しても目の前が真っ白でボールが取れなかった。「自分はこうしたいのにできない」という思いがあって打球に怖さを感じていましたね。でもそれを言い訳に打撃が悪くなったと思いたくなかった。食いしばる感覚がいつもと違いましたが、練習はいつも通りしっかりやった。変な感覚は一週間くらい続きました。
――この一年間戦い抜くことができた秘訣はありますか
リーグ戦始まる前の準備が発揮されたと思います。下半身をしっかり作っておこうと土台を作っておいたら結果がついてきました。土台を作ることで下半身の粘りにつながりました。プロ野球選手は冬と春のオフシーズンに準備をして一年間を戦い抜きます。一流選手の特集を見て、オフしか作れない身体作りをしようと。筒香選手(DeNA)や阿部選手(巨人)を参考に行いました。特に阿部選手は、オープン戦で結果が出なかったのに開幕戦でホームランを打った。捕手から一塁手としてプレーするところも自分に重なるところがあった。結果が出るまで分からないので、とにかくやってみようと思って取り組みました。
――一塁手として過ごした一年はご自身にとって大きな経験になったと思います
正直、最初は「どうして自分が?」という気持ちがありました。でも去年の日大3回戦でベンチ入りした時にすごく悔しい負け方をした時、「なぜあんな悔しい思いをしなければならないんだろう?」と思いました。チームに恩返しできたら、どうかチームに貢献できたら…と気づいたら泣いていました。学部が一緒だった明石(飛真、H28年度法卒=浦和学院)さんとずっと練習をしていたんです。その日大戦に負けた時にずっと泣いていた。選手として入部したのに学生コーチに転身した明石さんの気持ちを思うと、どうにかしてチームに貢献したいと思った。それでこの秋の国学大1回戦で本塁打を打った日に明石さんが神宮球場に来てくださっていたんですよ。成長しているところを見せられてうれしかったですね。
――国学大2回戦では同じ東北出身の梅津投手(営3=仙台育英)が先発しましたね
梅津さんはけがを押して出てくれていた。チームのために投げて途中降板した姿を見て、梅津さんのために頑張ろうと思いました。東北出身が梅津さんと自分しかいないんです。それで初めて話した人が梅津さんだった。優しさの塊だけど意志が固い人。後輩の自分が言ったことも受け入れてくれる。プレーの面であっても先輩に言いにくい部分はどうしてもある。それでも「ありがとう」と受け入れてくれるので、そこから何でも言えるようになりました。自分が捕手として梅津さんの良いものを引き出す自信はありますよ(笑)
――明治神宮大会が終わってからはどのような練習をしていますか
来季に向けて調整を含めた個人練習ですね。井上コーチから勧められて、トレーニングを中心に体づくりを一から始めています。あとは打撃練習をしていて、実戦感覚がない中、イメージしながらティーバッティングをやっています。
――佐藤選手から見た高橋監督はどのような存在ですか
一対一で教えてくれたことが多かった。特に中川(法3=PL学園)さんがユニバーシアードに行ってた間は、付きっきりで面倒を見てくれた。喝を入れられても、そこには愛情が込められていたと思う。本気で自分を育てたいという気持ちで接してくれました。日体大戦の時に見逃し三振をして、試合後のミーティングで監督の顔を見た時に「これで監督と最後だ」と思って涙が止まらなかったです。調子悪くても使ってくれた監督に、最後に恩返しができなかったことが悔しかった。
――来季から新監督となりますね
自分が3年生と上級生になって、東洋大1年生の新監督が馴染めるように、選手が先頭に立ってやりやすい環境を作っていきたい。自然と新監督が輪に入ってこれるようなチームづくりを心がけたいです。
――来季の個人とチームの目標を教えてください
チームは3連覇を目指して、日本一になる。個人としては、どのポジションでもベストナインを取りたい。欲を言えば捕手もやりたい気持ちはあります。今は少し目立っておきたい。成長しているよというところを見せたいんです。打点は今秋の記録を維持して、長打を打てるように頑張る。大好きで尊敬して、LOVEな栗山選手(西武)のように頼れる男になります。