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2017.12.31
アイススケート

[アイスホッケー]涙のインカレ準優勝 不作と呼ばれたチーム「最後の最後でひとつになれた」

第90回日本学生氷上競技選手権大会

12月29日(金) テクノルアイスパーク八戸


東洋大2-4明大


[ゴール(アシスト)]

16:11 阿部(柴田)

22:30 武部(柴田、阿部)


FW武部(左から2人目)は2試合連続ゴールを決めた

FW阿部は「絶対決めてやる」という気持ちで臨んだ決勝で同点ゴールを決める

何度もチームのピンチを救ったGK古川駿

試合終了後うなだれる選手たち

60分間戦った選手たちに、ベンチ外の選手たちも駆け寄った

FW柴田はベストフォワードに選ばれた

インカレで引退した4年生のプレイヤーとマネージャー


3年ぶりとなるインカレの決勝戦。相手は6季もの間勝ち星を上げられずにいる強敵明大だ。1ピリ開始4分で先制されるもFW阿部(社3=白樺学園)の同点ゴールで明大に追い付く。2ピリでも早々に2点目を決められるが、FW武部(社1=苫小牧工業)のゴールでまたも同点に並ぶ一進一退の展開に。しかし2ピリ残り47秒で痛い1失点、さらに3ピリで4点目を奪われると反撃かなわず2-4でインカレの幕は閉じた。

 

 「今日は全員で」。試合直前のミーティングで、プレーの確認が終わると鈴木監督の提案で大きな円陣が組まれた。いつもなら選手だけで行う応援歌合唱だが、決勝戦の日は監督、コーチ、選手、マネージャーの全員で肩を組んだ。FW山田主将(社4=埼玉栄)の「決勝に来て終わりじゃないよ、勝って終わりだよ。全部置いていこう、全部ここに置いていこう」という呼びかけに、全員が応え、東洋大学応援歌を歌いあげた。リンクへと続く廊下では、FW山田主将を始めベンチ外メンバーやマネージャー、スタッフが道をつくり、声を掛けながら選手たちをリンクへと送り出した。


  1ピリでは積極的にシュートチャンスを狙いながらも、明大のパスをカットしてゴールを阻止していく。しかし開始4分でゴール裏から揺さぶりをかけてきた明大FWのシュートが決まり先制を許す。その後はFW柴田(社3=武修館)やDF川口(社2=白樺学園)が明大DFを抜きゴール前までパックを運び出す場面もあったがシュートにつなげられない。そんな中試合が動いたのは1ピリ16分、FW柴田のロングパスを受けたFW阿部が迷うことなくスティックを一閃。パックが相手GKの肩をすり抜けた。ビデオジャッチが入ったが、見事同点ゴールとなる1点目になった。


   続く2ピリ、開始47秒。ノーマークだった明大FWにパックが流れてしまい、阻止を試みるもそのままゴールが決まってしまう。しかし2分後、前日の準決勝でも得点を決めたFW武部が放ったシュートが一直線にゴールへと吸い込まれる。このゴールについて「2失点目は僕のイージーミスだったので、それを部屋っ子(寮で同部屋の後輩の通称)の武部が取り返してくれたことがうれしかった」とGK古川駿(社3=八戸工大一)は語った。その後両チーム譲らぬ攻防戦が続き、同点のまま2ピリが終わりかけたラスト47秒。明大のゴールが決まってしまう。1点差を追いかけて3ピリに進みたくない東洋大もわずかな時間で猛攻するが及ばず、勝敗は3ピリに託された。


1点を追う3ピリ。パックの奪い合いはまさに意地と意地のぶつかり合い、どちらが先に得点を入れてもおかしくないほどの白熱ぶりだ。そんな中で先に得点を入れたのは明大。2-4と突き放され、試合時間は残り10分。まだ反撃の余地はあった。しかし東洋大からゴールが生まれないまま残り時間は着々となくなっていく。明大のペナルティでPP(パワープレー)のチャンスが2度訪れるも得点につなげられない。そして最後またもや明大のペナルティでPPになるも、電光掲示板に表示されていたのは残り時間1秒の数字だった。フェイスオフでパックが弾かれた瞬間試合は終了。点差を埋めることができずに2-4と敗れた。


負けが決まった瞬間、東洋大の選手たちの目には涙があふれていた。観客席に向けて頭を下げ挨拶をすると、その場でうなだれる選手たち。そんな選手たちにFW山田主将は一人一人へ声を掛け立ち上がらせていく。リンクの外では今まで支え合ってきたベンチ外の選手やマネージャーが選手を待ちかまえ、ねぎらいの言葉を掛け抱き合う場面が見られた。


  春リーグでは5位、秋リーグで3位。”不作の年”と言われたこともあった。そんなチームで3年ぶりに進むことができた決勝戦の舞台。「1個の大会の結果でいろんな人にいろんなことを言われた。でも、今に見てろよと」そう最後に胸の内を明かしたFW山田主将。個が強く、まとまりがない、主将として頭を悩ませていた1年でもあった。しかし最後は、「4年生に優勝をプレゼントしてあげたい」と後輩たちは声を揃え、ひとつの目標へと全員で進んだ。まとまりのなかったチームはいつの間にか団結し、インカレで大きな花を咲かせた。「4年生がどんなときもチームのために努力し続けてくれた結果」と鈴木監督。優勝という目標をかなえることはできなかったが、チームとして、ひとつになれた瞬間だった。


■コメント

・鈴木監督

(就任されてから2度目の準優勝でしたが)なかなかこのシーズンいい結果も出ない中、チームにまとまりがないというところで苦労した。ただ本当にインカレに来てから最後の最後でチームがひとつになって、みんながひとつの目標に向かって努力をしてくれたことに感謝をしている。(春リーグ5位、秋リーグ3位と順位を上げられた要因は)正直4年生にスキルが高い選手がいなかったというのはあったんですけれど、彼らがチームのために最後まで努力し続けてくれたことが、最後のチームのまとまりにもつながったし、日本一とれなかったことは悔しいですがここ数年3位決定戦に進んでいたことからしても、そんなすぐ優勝できるほど甘くないんだなと感じている。不作と言われたチームだったかもしれないが、ここ数年で一番いい結果を残してくれて、4年生のどんな時にも努力してくれたことが最後にこういう結果を生んでくれたと思う。(試合ふりかえって)2ピリの最後の失点はすごく大きいものだった。経験不足というところで、フォアチェック、ブレイクアウトがいつもよりできなかったのが敗因の一つだと思う。(GKの起用はどのように決めたのか)いい競争をしていたので、いい動きをしている方を使うと告げていて、準決勝の中大戦で古川駿がすごくいい動きをしてチームに流れを持って来てくれたので、その流れを切りたくなかったので、古川駿を起用した。(ラスト1分のタイムアウトは)6人攻撃の確認をしました。(メンタルコーチの存在は)手探りな部分ではあったんですけれど、考え方の変化というのは選手たちの言葉ひとつひとつから感じられるようになった。うちは、サポートスタッフが多く手伝ってもらっていて、スタッフに感謝しています。(柴田選手がベストフォワードに選ばれましたが)このシーズンずっとチームを引っ張ってくれていましたので、彼自身ももっとできるという悔しさが残ったと思うが、選ばれたということはチームの中で存在感を放ってくれたのではないかなと思う。(4年間支えてくれたマネージャーへ)そうですね、僕が監督になった時は不祥事があった直後でチームの人数も少なくて、マネージャーの助けがなければチームが進めない状況だったので、今のマネージャーたちが来てくれて、彼女たちには日本一を目指すチームだからということでもちろん雑用もそうですけれど、色々な苦労をかけました。彼女たちには卒業するまでには優勝するというのを約束していたので、それを果たせなくて残念で申し訳ないと思っています。(引退する4年生へ)最後まで苦しみながらも努力してくれた年代。チームに大きなものを残してくれましたし、彼らのこれからの人生にも大きく役立つことだし、役立ててほしい努力だったと思う。彼らには感謝の言葉しかありません。


・FW山田主将(社4=埼玉栄)

(試合を振り返って)そうですねあんまり覚えてないです。結構必死で…。それが率直なところで、みんなそれくらいみんな必死で食らいついていったんじゃないかと思う。(インカレの総括)正直インカレ合宿が始まってもチームはそんなにまとまっていなくて。恥ずかしいですが。ここまできてまとまっていないのは僕の責任だなってずーっと思っていた中で、試合を通して僕が何かやったってわけじゃなく、みんなが勝手にまとまってくれて。最後チーム一つになれたなって思う。そこが一番うれしいところ。(4年間振り返って)最初の年っていうのもありますし、大学一年目が一番僕の中でいろんな感情が入り混じった年だった。悔しさだったりうれしさだったり、そういうのがあって、本当に一年の時が一番いいチームだったなっていう風に僕の中でずっと思っていた。当時のキャプテンを越えたいなって、謙さんを越えたいなってずっと思っていたんですけど、今年インカレになってそのチームに匹敵するくらいのチームに一つになった。やっとなれたなっていうときで、決勝勝ったら越えられる、ってところで負けてしまった。あんまりうまく言えないんですけど。(後輩のスキルの高さに苦悩したことは)やっぱりなんでこいつらこんなにできるんだろう、とか、自分に出来ないことに目が向いたりとか、あいつらのスキル羨ましいなとか思ったりすることはありました。でも一人一人それぞれに役割があって、僕の役割っていうのは体張ってハードワークするってところだった。そこはずっと理解していたので、特にそんなに思わなかったですね(不作の年と言われて)正直春5位だったときは、色んな人に「お前のせいだ」とか、「今年終わったな」とか言われていましたけど、お前何を春の一個の大会で決めつけてるんだよって僕はずっと思っていて。そういうのをずっと引きずられて、秋の3位も「まあ、3位だよね」って。今に見てろよって、僕はずっとそれは誰に言うわけでもなく内に秘めていた感情だったんですけれど、最後少しは払しょくできたんじゃないかな、決勝にいって。優勝はできなかったけれど、少しはそういう人たちを見返せたんじゃないかと思う。まとまりのないチームとか色々言われていたが、最後に一つにまとまって、そういうところが見せられたと思う。(感謝のメッセージ)メッセージっていうよりも、このインカレを通してプレーでちょっと見せられたんじゃないかなって思います。僕がこうやって大学まで進んで十何年もホッケー出来たことにも本当にすごく感謝していますし、こういう環境作ってくれたスタッフとかマネージャー選手にも感謝しています。なんて言ったらいいかわからないんですけど、とにかく感謝しています。(後輩、マネージャーに向けて)毎年違うチームに変わりますから。もうこの試合で僕のチームは終わりなので、僕がキャプテンのチームはもう終わりで。明日からはまだ誰がキャプテンになるとか決まっていないが、また新しいチームが始まる。逆にあいつらから言われましたね。ほんとにありがとうございました、来年絶対春から全部勝ちますって。そういうふうに言われたので、わざわざ頑張れって言わなくても、僕がなにか言うことはないなって。大丈夫だなと思いました。マネージャーには僕は一年の時からずっと同期としてやらせてもらって、遠征とかもアルバイトして実費で来てくれて。ちゃんと仕事やれよとか思うときもありましたけど、僕ら本当に助けられた部分はあります。みんな男臭い中でやっていてそこにマネージャーが来ることでムードが和む部分もありましたし、トータル面で本当に感謝しかないです。(今後の進路は)インカレに入る前から僕自身社会人でもプロでもホッケーにはもう一線引いてっていうところは考えていた。「これがラストゲームだ」って、今日も「ホッケー人生ラストだ」っていうふうに挑んだので。悔いはないです。


・GK古川駿(社3=八戸工大一)

僕のイージーな失点もあり、本当に味方には申し訳なかったんですけれど、それでもやっぱり取り返してくれた味方には感謝している。イージーミスってゆうのが2点目だったんですけど、それを取り返してくれたのが部屋っ子の武部だったので、かなりうれしかったです。(最後の試合任されたことは)慶大戦で水田がいいプレーをしていたので、準決勝の中大は、ただ勝つだけでは明大戦で使ってもらえないと思ったので、勝つだけじゃなくてプレーの内容にこだわって、水田にも負けないぞという気持ちを持って中大戦った。決勝では選んでくれた気持ちに応えるためにプレーしました。(リーグ戦の明大戦の先発は全て水田選手でしたが、古川駿選手にとって明大との対戦はいつぶりか)昨年の秋リーグぶりでした。(ナイスセーブ連発でしたが)プレーしている最中はそんなナイスセーブと言ってもらえるような感触はなかったです。本当に止めなきゃいけない、1個止めたらそれは忘れて次、そういう気持ちでやっていました。緊張はしました、でも緊張していないといいプレーできないので、いい緊張感もって臨めました。(インカレの決勝戦どうでしたか)インカレもそうですし、全国大会での決勝の舞台は初めてだったので、楽しもうという気持ちを持ってやれました。(4年生に向けて)大学で一番長くお世話になった先輩たちだったので、優勝プレゼントしたかった、申し訳なく思っています。来年は僕らの代で絶対優勝するので応援お願いします。


・FW阿部(社3=白樺学園)

4年生は1年生のときに決勝戦を経験して、僕らは決勝戦というのを大学に来てやったことなかった。4年生には僕らが1年生の時から3年間お世話になってるので、今まで卒業していった先輩よりも長く一緒にいるお礼というかありがとうという気持ちで、4年生を優勝させてあげたいなという思いでやっていたが準優勝で終わってしまった。でもちょっとでも力になれたかなと思う。(同点のゴールを決めたときは)ビデオ判定になってしまって、バシッと決めたかったところはある。でも今まで準決も決めていなくて決勝では絶対決めてやるという気持ちで臨んでいたので結果ゴールになって良かったです。(メンタルコーチの辻さんの存在は)プレー中に自分のメンタルをコントロールできていない人がいたり、チームをマイナスになる発言をする人がいたら、そういう発言しないようにとかそういう声が出てくるようになった。辻先生が言っているように「心をFLOWにしてプレーする」っていうのをずっと言われていたので、それを言われてからチームでも「FLOW、FLOW」という言葉をかけあっていたし、そういう方向に向かっているのかなと思う。(試合後4年生からの言葉は)「ありがとう」という言葉をもらって、「優勝させてあげれなくてごめんね」っていう言葉をかけました。(阿部さんにとって4年生の存在は)私生活から本当に仲良くさせてもらっていて、3年生以下がダメな行動したら言うときは言う4年生だったので、存在というのはとても大きかったし、いなくなったら大変だなと思う。(インカレが終わったばかりですが、これからについて)春からすぐ試合が始まるので、春から三大会全タイトル奪取できるように、東京に帰ってから新チームでトレーニング始まるのでそこから春に向けてとりあえずいい体づくりとチーム内での競争だったりを始めたいなと思います。


・FW柴田(社3=武修館)

勝てたっていう思いはのは自分たちの中にあったので、ちょっと悔しい部分はあるんですけど、しっかりみんな全力を尽くしてチーム一丸となって戦えたのがよかったと思います。準決勝ですけど最後4年生のためにチーム一丸となって頑張れたかなと思います。(インカレ総括)最初のほうはチームがあまりまとまりが無くて悩んだ部分もあったんですけど、試合を重ねる度にチーム力が結構上がっていったことが、いつも準決勝敗退だったけれど決勝進出してここまでやってこれたのは4年生の努力のおかげかなと思います。(前回の決勝)3年前の決勝は地元の釧路で見ていたんですけど、キャプテンが試合前に言っていたように3年前決勝に行ったチームに似ていると言っていて、2位という結果で終わってしまったことは、僕ら3年生以下の努力が足りなかったのではないかと感じます。(初の決勝戦で緊張などは)個人的に慶大戦が緊張して、自分のプレーが全く出来なかったので、準決勝、決勝とゴールはなかったですけど、自分の特徴の走るプレーとかアグレッシブなホッケーでアシスト出来ていたのでよかったかなと思います。(メンタル面について)今年の東洋の目的が「スタート」でその瞬間その瞬間をスタートするっていうことを掲げていて、辻先生が言っていたことを継続するということだったので60分間走れたんですけど、最後決めるメンタリティがまだまだ僕たちには足りないと思います。(ベストフォワードに選ばれましたが)率直な感想で言ったら、僕でよかったのかなっていうのはあるんですけど、僕が思うにチームのみんなが取ってくれたベストフォワードかなと思います。(自身で考える決め手は)決勝で2アシスト出来たことが要因ではないかと思います。(4年生に向けて)4年生は今まで寮のことだったり、練習、試合とかいつも引っ張ってくれていて本当にお世話になったので恩返ししたかったんですけど、今年できなかった分は来年下級生みんなで優勝目指して頑張っていきたいと思います。


・FW武部(社1=苫小牧工業)

2ピリ途中まで同点までもっていけたが、途中から決定的なミスが目立ってしまい、そこから失点することがあった。理想的には先行していきたかったが、チャンスもあったがなかなか点数とれなくて、そこを決めれなかったのが敗因だと思う。(自身のゴールシーンを振り返って)スタッフからどんどんシュート打っていけって言われてたので、あまりゴールは見えてなかったが、積極的に打ったら入っていたって感じです。(シュートの意識は)ベンチでも積極的に打てって言うのを常に言われていたので、それをずっと意識していたのがそういう判断につながったと思う。(得点した時の心境)その時点で同点だったので、ここからいい流れ作れたらっていう気持ちがあった。(インカレの総括)インカレの始めは正直あまりまとまりがなくて。試合やっていくにつれてチーム状況がよくなってきたが、力不足で負けてしまって悔しい。(4年生への思い)4年生は人数少ない中、メンバーは個性的な人が多くてまとめるの大変だったと思います。ここまで、キャプテン中心に4年生全員協力してまとめてくれたので、今のチームがあるんじゃないかなって思います。

TEXT=玉置彩華 PHOTO=外狩春佳、伊藤なぎさ、越塚日南、川口朋珠