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2018.08.29
硬式野球

[硬式野球]「家族と俺のちびっこファン第1号の前で」甲斐野・若き侍相手に豪腕披露

平成30年度侍ジャパン壮行試合

8月28日(火)神宮球場

○大学野球代表7ー3高校野球代表

大学代表の抑えとしてマウンドに上がる甲斐野

球場表示自己最速を更新した

整列後は高校生と談笑した(甲斐野:中央)

「対戦したい打者は根尾くん」と高校日本代表メンバー選考前に上げていた甲斐野(営4=東洋大姫路)が2万5千人の大観衆の前で貫禄の投球を見せた。

   「160㌔出してこい!」と家族から送り出された右腕。世界を相手にした時と同じく、抑えとしてマウンドに上がる。「観客席が埋まってたな。投げる前は多いと思ったけど、マウンドに上がったらそんなに。いつもより集中してた」と達成感に満ちた表情で語った。九回の高校代表の攻撃は4番打者の藤原(大阪桐蔭)から始まる。この巡り合わせには「いい打順。大阪桐蔭の選手でなんかしたら話題になるよって話はしてたけど。まさかね」と笑いながら振り返った。その先頭に投じた2球目。緩い変化球を上手く合わせられるとセカンド・上川畑(日大)の右へ転がる。「あれはセーフになると思った」とマウンドで内野安打を覚悟したが、素早い送球で1死目をとる。
    神宮球場がざわめいた。前の打者を変化球で打ち取った甲斐野は配球を少し変える。そして投じた3球目、高校代表の5番に座る根尾(大阪桐蔭)のインコースに投じられた直球は158㌔をマーク。「出たな。いつもは見ないんやけど、たまたまスピードガンは見てた。でも、そんなに特別な感情はなかったかな。やっと更新したなって感じ」と自己最速を3㌔も更新するが冷静だ。海外遠征時から甲斐野の球を受けていた海野(東海大)は「最初見たときはびっくりした。でも、うちの大学にもあのタイプはいる。それと比べたら格が違いますけどね」と評価する伝家の宝刀・高速フォークで空振り三振を奪った。

    3人目に対峙したのは東洋大にもOBが多くいる浦和学院の蛭間。前の2人と打って変わって直球と速い変化球を多投する。最後はオランダで開催されたハーレム国際野球大会を彷彿とさせる、一塁ゴロを佐藤(法3=聖光学院)が捕球し試合終了。大学日本代表の守護神としての貫禄を見せつけた。打者3人を「挑んでくる姿勢がすごくあった。根尾くんは空振りした球もしっかり見て振って来てるのを感じたしね。他の2人も何とかして打ってやるっていう気迫を感じたね」と振り返り、「もう3人のちょっとしたファンになったわ」と付け加えた。


    普段、球場での投球を見せることができない家族が訪れて迎えたこの試合。自身最速を更新するも「言われた160㌔出せなかったな」と苦笑い。だが、観戦に訪れていた父は「頑張れとしか伝えなかった。自分の子ながらすごいですね」と感慨深く語ってくれた。この日の特別なゲストは家族だけではない。甲斐野の兄が新幹線の車内で偶然会い、大学グラウンドへと導いた野球少年もこの試合に訪れていた。「俺のちびっこファン第1号だからね。見に来てくれてその前でいい投球ができてよかった」と小さな大ファンの期待に応えられ本人も安心した様子だった。
   
    次に迎える戦いは4連覇をかけた秋季リーグ戦だ。自身の目標である公式戦での大学最速記録の更新への予行練習は済んでいる。チームを勝利へ導くために、日本代表のユニフォームから東洋大のユニフォームへ。戦いはすぐそこだ。
■コメント

・甲斐野(営4=東洋大姫路)
いつも通りの調整をして試合に入れた。緊張感はもちろんあったけど、アメリカで慣れたからそこは経験が生きたのかなという感じ。(ご家族もいらしていましたが)LINEを通してだけど、160㌔出せよって言われてて。そんな簡単に出る数字じゃないけど惜しかったな。158㌔が出たのも観客の皆さんの後押しがあってのこと。自分のちびっこファン第1号も来てくれてたんで、いい投球が見せれたかな。あと、梅津と上茶谷にチケット渡して見に来てもらいましたね。(高校生と対戦してみて)本当に3人ともいい打者ですよ。藤原くんは脚もあるからあの当たりは内野安打かなと思ったけど、うまく捌いてくれたし。根尾くんは結果は三振ですけど、スイングの質が高い。蛭間くんもしっかり当てれるいい選手だなという印象ですね。3人とも共通して凄い挑んでくるというか、向かってくる感じがすごかったです。ちょっとしたファンになりました(笑)今回の対戦楽しかったけど、大学生は勝って普通みたいなところありますからね。でも、一人一人のパフォーマンスとしてよかったと思いますよ。

TEXT=須之内海、PHOTO=齋藤洋