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春、夏に行ってきたこの企画。今回は長距離部門を中心にインタビューし、今年1年の振り返りや今後に向けて意気込みを語っていただきました。その模様を3日間にわたってお届けします!
酒井監督へのインタビュー(取材日・11月24日、聞き手=稲村真織)
大澤選手、宮下選手へのインタビュー(取材日・11月30日、聞き手=稲村真織)
先日から続くインタビューの長距離部門の後半です。酒井監督は、長距離部門の監督に就任して11年目。エースの相澤(済4=学法石川)を擁するチームで、6年ぶりの総合優勝を目指します。
ーー出雲全日本大学選抜駅伝競走(以下、出雲)・全日本大学駅伝対校選手権大会(以下、全日本)を終えて今年の駅伝シーズンの振り返りをお願いします。
不完全燃焼が残るようなところと、しっかり手応えがある部分と両面があるなと思っています。
ーー不完全燃焼の課題というのは。
やはりベストメンバーで臨めていないこと。ベストメンバーがベストコンディションで臨めていないので、ベストメンバーで臨めば勝機は十分にあるなと思うのでそれをもって3冠を狙いたいと、学生駅伝で優勝したいという目標を掲げているので、定方(工4=川棚)のように4年生になってしっかり走ってきている子もいるし、4年生は駅伝で走った選手たちは崩れることなくよく走れています。ちょっと下級生がね。そのなかで出入りが激しかったので、しっかりそこができれば箱根駅伝に対して光が見えるかなと思います。
ーー三大駅伝未経験だった定方選手らの活躍はどう見えましたか。
学生駅伝ですので学年が上がるにつれていろんな経験と体をつくってきて、そして自覚が芽生えて走れてくる選手が出るというのはチームにとってはすごくいい傾向だな、と思っています。
ーー全日本では渡邉選手(済4=吉原工)の復帰もありました。
久しぶりにレースに出てしっかり走ってくれましたので、チームにとっても彼が出たことによって非常に明るい兆しになっているなと思いますし、箱根に対してももちろん出るつもりでトレーニングしています。
ーー今季は4年生の安定感が光っているように思いますが。
レースになれば4年生としての自覚というのが垣間見えるなと思います。そこに下級生たちがまだまだ噛み合っていないところが、今のチームとしての課題だなとレースを通じて感じますね。
ーー先日蝦夷森選手(ラ2=愛知)が学連のセブンヒルズロードレース15kmに出場しましたが、その意図を教えてください。
今回学生ハーフの成績で派遣の対象者になって、彼も将来の東洋の主力になってほしい選手ですので今は若いうちにいろんな経験をしてほしいなと。あとは他大学と一緒に行くことで外から見た東洋とかいろいろ気付くことが多いと思うので、今回のことで箱根につなげてほしいと思っています。
ーー今季成長の著しい選手は。
結果的に見ると4年生の定方かなと。あとは3年生の大澤(済3=山形中央)も出雲と全日本を走っていますし、全日本はあまりいい走りではなかったですが1つの経験として。
ーー箱根で総合優勝をするために今必要なものは。
まずはチーム全体でしっかりワンチームになり(笑)、勝利に対する執着心を持つこと。それによってベストメンバーを組むこと。でないとやはり復路での勝負になってしまうと前回大会のようになってしまいますので、往路だけではなくて復路も見据えながら今年は混戦が予想されますので、それを制するだけのチーム状態をつくっていきたいなと思います。
ーー全日本で三大駅伝初出走した前田選手(済1=東洋大牛久)のように、1年生の起用はあるのでしょうか。
前田にかんしては全日本の走りでは評価できないので、箱根の選考レースをするなかでそこは学年関係なくしっかりできれば起用はしたいと思っています。
ーー田中龍選手(済3=遊学館)と宮下選手(工2=富士河口湖)の5区争いについては。
田中も復調していますのでその2本柱で考えています。宮下は別に5だけではなくて他の起用も考えられるし、リザーブは必要なので。2枚いれば今西は6区が有力ですのでやはり5区・6区という特殊区間に強みを持たないと総合優勝に近付けませんし、ライバルチームは5区に強い選手が多いですので、しっかり2人で準備していきたいですね。
ーー酒井監督が考える箱根の勝負所は。
もう穴はないので。どの区間でもミスなくつなぐこと、というのが大事ですね。もちろん相澤というエースがいてそこで稼ぎたいですけど、エース同士の争いになってくるとそこまでの差は付かないですね。むしろブレーキのほうがより差が開いてしまうので、本当にミスのない走りをすること。出雲・全日本はミスが目立っていますので、相澤の快走よりミスが目立つようでは勝てませんので。ミスなくつないでエースが稼ぐというそういう走りを目指していきたいですね。
ーー相澤選手の今後についてはどうお考えですか。
トラックにかんしては来年の日本選手権の順位が大事になってきますので、来期に向けた標準タイムの突破をどこかで狙うと。駅伝で終わるのではなくて駅伝でやることが強化につながるようにしていきたいと思っています。
ーー最後に、箱根に向けて意気込みをお願いします。
箱根駅伝の戦いが年間の中で最終目標のようなところで全員で向かっていますので、このシーズンの集大成となるようにしっかり総力戦で箱根駅伝に挑み、目標達成していきたいと思います。
ーー酒井監督、ありがとうございました!
続いて、前回の箱根でアンカーを任され悔しい思いをした大澤選手です。今季は駅伝で好走を見せ、箱根でのリベンジが期待されます。
ーー出雲・全日本が終わり今年の駅伝シーズンの振り返りをお願いします。
今年はメンバーに入るために頑張るというのじゃなくて、どうやって戦っていくかということを考えながらやってこれたのが去年とちょっと違う点かなと思いました。出雲・全日本を終えて2つの駅伝の期間が短くて、そのなかでもどう連戦をして体をつくりながら箱根へ向けていくかということと、その過程でどういうふうに2つの駅伝を戦っていくかということを考えながら、やってきたシーズンだったなと思います。
ーー好走だった出雲を振り返るといかがでしたか。
出雲は距離が短いので走り込みがそんなにできていない状態でも、スピードをしっかりそのときはやれていたのである程度走れるなというふうな自信はあって、2区ということで毎回鬼門になっている区間だったんですけど、そこで相澤さんにしっかり前で見える位置で渡せたというのは1つの収穫だったのかなと思います。
ーー悔しいレースとなった全日本については。
もう1つそこで一皮剥けないといけないなと思いました。そこの区間は僕より速い選手がいる区間でそういうのはあまり考えないようにしたんですけど、やっぱり力及ばずということで記録は去年の区間新記録よりも4秒遅いということだったんですけど、それ以上に周りの選手が強かったという点もあったので、そこはしっかりもっと僕が強くならなきゃいけないなというふうなことを感じました。
ーーハイペースなレース展開でした。
10000mも28分台で通過していたんですけれども、それでもその区間順位(12位)ということで28分30くらいを走れる力がないと、それ以上の力がないとあの区間の上位では戦えないなというふうに思ったので、まあ僕も28分台で通過できたということもあったので課題の残るレースでもあったんですけど、ここまで力が付いているなと実感できたレースだったなというふうに思います。
ーー2年生時の箱根以来、自身のなかで変化はありましたか。
やはり鉄紺のタスキを背負ったという自覚がすごいあのときに一気に僕のなかであって、そこからチームを背負うということがどれだけ大変なのかということが今までで1番感じてきたことで、関東インカレは走ったことがあったんですけどやっぱり駅伝のタスキというのは全く別なので、走っているときも周りの声援とか多いですし前の人の走ってきた汗のしみたタスキというのは重みがあってやらなきゃいけない、走らなきゃいけないというふうな覚悟を持てるいい機会だったなと思います。
ーー箱根以外は初めての三大駅伝でしたが。
1、2年のときは走っていなくて走っている選手がどれほどの思いでやってきたのかということがすごい僕のなかで感じて、すごく大変ですしそこでうまく走れなかったりすると焦りますし、自分のなかでも追い込まれていくけどやらなきゃいけないというそういう覚悟を持ってやってきたんだなというふうに思いました。やっぱりその覚悟に負けないように成長していかなくてはいけないなというふうに来年は思っているので、今回2つ走れて結果は負けてしまったんですけれども、成長の糧になるような大会だったのかなと思います。
ーー今年の関東インカレ10000mはいかがでしたか。
もともと僕は関東インカレは2年生から1500で走っていて、たぶん今年も1500になるんだろうなというふうに思いながら春先練習してきたんですけど、思った以上に1500m型という走り方ももう1、2年生からどんどん変わってきて長い距離に対応できる走り方になってきていて、1500も記録というよりはその前に山形の駅伝があって長い区間10km〜12kmと走ってきてそこから1500というよりは、10000の記録も持っていたので10000でいこうと監督からも言われました。最初は全く頭に考えていなかったんですけど、そういうチャンスが回ってきたということでここでしっかり活躍できればいいなというふうに思いながら臨みました。
ーー実際に走ってみていかがでしたか。
記録会とかと全然違ってロードとかとも全く違くて関東インカレは外国人選手が出てくるので、ペースの上げ下げという変化がすごく大きくて。例えば誰かがタイムを読んでくれるわけでもないという点で、どれだけハブられずにレースをしていくかというところが大切になってきていて、そのときに西山(総3=東農大二)もいてやっぱりそれくらいの選手と競わないといけないという点があったんですけど、そこはしっかり入念に準備してきて東洋で1番良かったんですけど、結果13位ということで入賞は目の前だったんですけど、もう1つ力が及ばなかったという感想でした。
ーーその経験が駅伝シーズンに生きているのでしょうか。
チームを背負って走るという点ではためになっているのかなと思います。
ーー箱根の希望区間はありますか。
特になくて構想というのはありますけど、自分がどの区間を走るかというのはまだわからないですけど、近くなってくれば自ずとわかってくるかなと思うので、わかってきたときにそれにしっかり対応できるような準備をしていくことが1番大事かなと思います。
ーー箱根で総合優勝するために今何が必要だと思いますか。
今大切なのはチームがしっかり1つになるということで、出る選手出ない選手もしっかり1つの総合優勝というものに向かって全員が1つになることで、活気もついてきますしみんなが1つになるということは勝つ大前提だと思うので、それをしてからやっと各々走る調子とかが上がってくると思うので、そこを守っていくことだと思います。
ーー自身が考える強みは何ですか。
周りの選手とかあの人が速いとかというのはあまり考えないので、そうやってあんまり揺さぶられないところが今年少し目立ってきたと思います。
ーー箱根に向けて意気込みをお願いします。
残り時間も少なくなってきたんですけど、チームで1つになってサポートしてくださってる方たちもいるので、そういう人たちにしっかり結果で恩返しができるような走りをして、4年生を総合優勝させたいなと思います。
ーー大澤選手、ありがとうございました!
最後に、5月の関東インカレハーフマラソンで2位に入りチームの主力に名乗りを上げた宮下選手です。しかし駅伝シーズンはこれまで悔しい経験が続き、不完全燃焼なところがあるようです。
ーー出雲・全日本が終わり、今年の駅伝シーズンの振り返りをお願いします。
出雲駅伝は距離が短いということで自分としては苦手意識があるんですけれど、出雲駅伝からしっかりとメンバーに入って走れたというのは自分のなかでは良かったことで、出雲・全日本としっかり2つの駅伝で走れたということも自分のなかでは良かったことなんですけれども、走っただけになってしまっていて内容を見てみれば出雲では区間4番でトップと離されてしまう展開でしたし、全日本ではせっかくトップが見える位置でタスキをいただいたのにもかかわらず、順位を2つ落とすという結果に終わってしまって悔いが残る結果となりました。
ーー三大駅伝初出走となった出雲はいかがでしたか。
やっぱり6.2kmという全区間のなかで2番目に短い距離ということで、特に相澤さんからタスキをもらうということだったのでいい流れで来ると思っていたので、その流れを自分が崩さないように後続の選手に渡そうと思っていたので、青山学院大学さんだったり駒澤大学さんに負けたのは力不足を感じました。
ーー全日本で苦戦した理由は何だったのでしょうか。
出雲から全日本に移行するときに距離が長くなるということで、ジョグの方だったり距離を増やしたんですけれども、距離を増やすことに意識がいってしまってそれまでに入れていたフィジカルが不足してしまって、フィジカル不足がフォームの崩れにつながってしまって後半にスピードが足りないということで、あのような結果につながったのだと思います。
ーー宮下選手の飛躍のきっかけは、関東インカレだったのでしょうか。
自分のなかでも関東インカレのハーフマラソンの結果が1番大きいかなと思っていまして、記録会だったりレースに出ても負けられないというような意地が生まれるようになりましたし、練習でも簡単には離れられない、設定を落とせないというような責任感だったり、そういったことがあのレースをきっかけに生まれました。
ーー箱根の寒さへの対策はいかがですか。
自分の地元がもともと富士山の麓で寒い地域だったので、自分のなかでは暑さというよりは寒さの方に強いイメージがあって寒さへの対応は大丈夫だと思います。
ーー5区への気持ちは変わりませんか。
第1はやっぱり箱根駅伝の10区間のどこでも走れて優勝に貢献できるのが1番なんですけど、そのなかでやっぱりこだわりを持つとしたら自分が東洋大学を選んだきっかけは柏原さん(H23年度済卒=富士通・現役引退)の5区の走りだったので自分も5区を走りたいという思いがあります。
ーー5区以外だとどこを希望しますか。
箱根駅伝の花形という往路の2・3・4区あたり、2区は相澤さんだったりがいらっしゃいますけれども、3区4区を走って昨年度と同じように往路優勝に貢献できて、それが復路にも流れをつくれたらと思います。
ーー箱根で総合優勝するために今何が必要だと思いますか。
自分たち2年生が下の立場から見てみるとやはり2年生、1年生の底上げが全日本でも4年生に頼り切ってしまったところがあったので、自分たち2年生の1つ下の1年生が結果を出していけることでそれがチーム全体の雰囲気の向上にもつながりますしそれを見た3年生、4年生たちが自分たちもやらなくてはならないという気持ちになると思うので、そういった面で1、2年生の底上げが必要かなと思います。
ーー箱根に向けての準備は何かしていますか。
5区を考えると普通の平地区間とは違った走りが必要となってくるので、特に上りだと下半身の強化が自分のなかでは必要かなと思うので、下半身の強化を取り入れていますし全日本の反省でフィジカルが足りていなかったというのがあるので、また1から初心に戻ってフィジカルをやり直していこうと思って今取り組んでいます。
ーー箱根に向けて意気込みをお願いします。
出雲・全日本で悔しい結果に終わってしまったので、箱根だけは譲れないという気持ちで出雲・全日本の悔しさを晴らす走りをして総合優勝に貢献できたらなと思います。
ーー宮下選手、ありがとうございました!
2020年1月2日、3日。2日間とも長距離部門のみなさんの笑顔が見られることを期待しています。6年ぶりの王座奪還へ。箱根まであと少しです!
◆冬の3連続インタビュー・一覧
第1弾:競歩ブロック
第2弾:長距離部門(前半)
第3弾:長距離部門(後半)