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2023年4月、東洋大学赤羽台キャンパスに新学部「健康スポーツ科学部」、そして新施設「HELSPO」が設立。今回はその出来事に連動し、赤羽台キャンパスのお膝元、赤羽の街に縁のあるプロスポーツ選手にインタビューを行った。
今回インタビューを受けてくださったのは、赤羽を含む北区の街をホームタウンにしているプロサッカーチーム「日テレ・東京ヴェルディベレーザ」に在籍している女子日本代表FW・植木理子選手。大学時代の思い出話やプロサッカー選手と大学生の二足のわらじを履いた理由、さらには今年の7~8月に開催される女子W杯オーストラリア・ニュージーランド大会への意気込みなど、『スポーツ東洋』99号(2023年4月28日発行)には載せきれなかった話も盛りだくさんの特別インタビューだ。
初日は、植木選手の大学時代について。何故、植木理子は大学生とプロサッカー選手の両立と言う稀有な道を選んだのか、その選択を選んだ彼女には何が見えていたのか。その真相に迫る。(取材日・3月29日、聞き手=髙橋生沙矢)
クラブハウスにて笑顔で撮影に応じてくれた植木
―本日はよろしくお願いいたします。まず大学時代の植木選手の生活についてお伺いしたいのですが、早稲田大学時代に楽しかった授業は何ですか
小学生みたいなんですけど(笑)やっぱりグラウンドに出てサッカーしたりとかっていうのは楽しかったですし、コミュニケーションもすごく取れていたのでそれが1番楽しかったです。個人的にはビジネス・経営のことを少し学びたかったので、スポーツビジネスだったり、やっぱり自分たちは表に出てする仕事なので、裏のほうは普段の生活の中ではわかりきれない。そこを勉強できたのはすごく楽しかったです。
―スポーツビジネスの授業の中で、これからWEリーグを発展させていくために参考になった授業などはありましたか
顧客のニーズに対するアプローチが必要というところで、ニーズについて考えるというのは、今まではなんとなく女子サッカーが広まればいいなって考えていたのを、今はWEリーグっていうものがどの立ち位置にいて、どの層にアタックするのがいいのかなどを勉強の中で少しずつ理解できてきたので、それは今後も生かしていけるかなとは思います。
―WEリーグのファン層はどの年齢層が多いですか
WEリーグは結構年齢高めというか、昔から女子サッカーを応援してくださっていた人が残ってくれているっていうイメージが強くて、自分たちの世代や小学生とか女子サッカーをしている世代は、割と自分の練習と被ってしまうのも要因としてあると思うんですけど、そこの層は少ないなっていうのは感じます。今は昔からのファンの人が残ってくれているっていうイメージが強いかもしれないですね。
―逆に、苦戦した授業はありましたか
数学の授業を1年生の時に理科系が得意だったので、何を思ったか取っちゃって(笑)今後使わないのに。その授業は苦戦しましたし、そこの部分は間違えちゃったなって(笑)でもギリギリ単位が取れたので良かったです。シンプルに頭を使う勉強系はそこまで得意じゃなかったですね。
―スポーツ科学部の授業内容を教えてください
基本的には他の学部の授業も取れるので、何でも学ぼうと思えば学べますし、でも基本的にはスポーツの競技内や競技外のことが学べて、語学やりたい人は語学を受けている人もいました。
―生物系や栄養学など、色々な分野が学べるのは良いですよね
ほんとに良いですし、他の学部の人と会えたりとか。自分たちは人間科学部が同じキャンパスだったので、ぱっと見でわかるんですけど、スポ科なのか、人間科学部なのか洋服を見れば(笑)。そういう人たちと話してみると、自分たちはスポーツの中で生きてきたので、全然違った角度から話が聞けたりとか、同じスポーツ科学部の学生の中でもそれこそ競技をメインにやってきていない人とか、全然スポーツやってないけど、スポーツ科学部に来ましたとか、そういう人の話を聞けたりするのは本当にお得だなと思います。
―以前他のメディアの取材で、男子サッカー部員と体育の授業でサッカーをしたことがあるとおっしゃっていましたがフィジカル対策にはなりましたか
あまり自分の練習だと思って授業を取っていたわけではないですけど、男子のそれこそ同い年の選手とやる機会なんてもうないので、スピード感があって楽しかったです。後、今Jリーガーの加藤拓己(現・清水エスパルス)とかは、一緒にマッチアップしたり、遊びの中でもそういう選手たちと一緒にボールを交えてサッカーできたのはすごく楽しかったです。
―体育の授業の中では未経験の人もいらっしゃいましたか
他の部活をやっていて全然サッカーをやっていなかったって子たちも一緒にやったりとか、やっぱり部活だったりとかよりも経験者と経験していない人の実力の差がすごくある。そんな中でもやってない子たちも一生懸命やりますし、部活生とかもみんなが楽しめるようにやるので、本当にいい授業だなと感じていました。
―好きだった学食はありますか
チキンタツタ丼をよく食べてましたね。あそこの学食ってすごく並ぶので2限終わって走って行かないと食べられないんですよ。自分は結構それが面倒臭くて近くのコンビニというか、学内のスーパーみたいなところで買うことが多かったんです。(授業が)1、3限だと2限の人より早く行けるので、学食が開いた瞬間に行って、そういう時はほとんどチキンタツタ丼食べてましたね。学食ならではの味で好きでした。
―今はOGとしてスポ科などに行きますか
東伏見のキャンパスにグラウンドがあって、そこに自主練用コートみたいなものがあるんですけど、そこには卒業してからも何度かシュート練習をしに行ったりとかはしていました。
―大学生をやりながらプロサッカー選手としても活動されていた植木選手ですが、どういった経緯で両立を選ばれたのですか
自分が大学に入るときは、プロ化するかどうかあんまりわからなくて、個人的には働きながらサッカー選手っていうイメージだったので、その中でサッカーを辞めた時にできるだけ多くの選択肢を持っていたいなと思って、大学進学というものを最初に決めていました。そこから大学選びをしたんですけど、スポーツ選手というのは終わりが絶対にあるので、その後に自分がやりたいことを自分の手持ちが無いからっていう理由でできないのが悔しいなって。自分がやりたいと思った時に少しでもやれることを増やしておきたいなとは思っていました。
―セカンドキャリアを見据えての選択でしたか
女子サッカー界はそこまで環境が整っていてセカンドキャリアまで保証されているわけではないと思うので、そこは選手個人個人が頑張らなきゃいけないかなというのは感じています。もちろんプロ化っていうのはすごく良いこと。間違いなく私たちサッカー選手にとっては本当に良いことだと思うんですけど、だからこそ辞めた時に大学に行くのが絶対正解だとは思わないですけど、選択肢を得られにくいというか、プロになることで。少しネガティブな部分ではあると思うので、考えた方がいいのかなとは自分は思いますね。
◇プロフィール◇
植木理子(うえき・りこ)
1999年7月30日生まれ、神奈川県川崎市出身。10歳でサッカーを始め、2012年に日テレ・東京ヴェルディベレーザの下部組織に入団。15年にはUー16日本代表にも招集された。16年にはUー17W杯に出場し、6試合4得点で準優勝。Uー20W杯では5試合5得点でヤングなでしこVに貢献した。16年からトップチームで試合に出始める。19年にA代表に初招集。好きな漫画は「死役所」。
◇植木理子特別インタビュー◇
2日目:~大学に通うことで得られたもの~「今思うとすごいなと思います(笑)」
3日目:6月16日公開‼