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2023年4月、東洋大学赤羽台キャンパスに新学部「健康スポーツ科学部」、そして新施設「HELSPO」が設立。今回はその出来事に連動し、赤羽台キャンパスのお膝元、赤羽の街に縁のあるプロスポーツ選手にインタビューを行った。
今回インタビューを受けてくださったのは、赤羽を含む北区の街をホームタウンにしているプロサッカーチーム「日テレ・東京ヴェルディベレーザ」に在籍している女子日本代表FW・植木理子選手。大学時代の思い出話やプロサッカー選手と大学生の二足のわらじを履いた理由、さらには今年の7~8月に開催される女子W杯オーストラリア・ニュージーランド大会への意気込みなど、『スポーツ東洋』99号(2023年4月28日発行)には載せきれなかった話も盛りだくさんの特別インタビューだ。
2日目は、植木選手の大学時代のタイムスケジュールや卒論の制作エピソード、ベレーザのホームタウン活動について。朝6時には始まる植木の一日、そして彼女が卒論を通して見つけたものとは。(取材日・3月29日、 聞き手=髙橋生沙矢)
今季植木はWEリーグで19試合14得点を記録し得点王を獲得
(写真提供=日テレ東京ヴェルディベレーザ)
―サッカー選手をしながら大学の授業を受けるのは大変だったと思います。当時のタイムスケジュールはどのようなものでしたか
自分の時は練習が午後だったので、朝6時40分、50分くらいの電車に乗りました。そこから大学まで2時間くらいかかる。大学に行ってそのまま1から3限まで授業を受けて、電車の乗り換えのところでお昼ご飯とかを食べて、そのまま練習に行って。帰ってくるのが22時前くらいでそこからまた急いで準備して24時前には寝て、また次の日6時起きだったので、今思うとすごいなと思います(笑)。
―では授業は午前中に受ける感じでしたか
今は練習時間(午前練習)が変わってしまったので違いますけど、当時の練習は午後だったので、4限にいくとギリ間に合わなかったから、3限までに(単位を)できるだけ入れてって感じでした。
―単位は後半残っていましたか
そうですね、でも意外と取れていたので4年生の後期とかは行ってないですね。4年生の前期も2コマぐらいだったので。しかも月曜日は基本サッカーが休みなんですけど、月曜日だけは絶対に全休にしたくて(笑)、一生懸命(履修を)組んで、月曜日の全休は2年からは守り抜いていました(笑)。
―卒業論文のテーマと理由を教えてください
せっかくやるんだったら、自分のためになるものというか、自分が将来やりたいことにつながることをやりたいなと思っていた中で、(女子サッカーリーグが)プロ化したのでWEリーグの価値っていうのが最初はわからない状態で始まって。でも、やっぱりここにもっともっと人を呼びたいという気持ちがあったので、そこをテーマにしてやりました。だけど、そういうのって調べてみないと、やっぱり自分たちは現場にいるとわからないので、内から見えているみんなが求めるものと、本来みんなが求めているものっていうのは違ったなっていう印象がある。そういう意味では論文でやって良かったなと思います。
―教授からは何か言われましたか
自分(のゼミ)は割と「自由にやりな」みたいな先生だったので、それこそ質問とか話はしていましたけど、そこまでつっこまれずやっていましたね。自分の入っていたゼミが、何をやってもよかったので。一応スポーツの法律の先生だったんですけど、やるのは本当に何でも良くて全然違うことをやっている子もいましたし、そういう意味ではやりやすい。ためになるゼミだったかなと思います。
―研究を通じて勉強になったことはありましたか
アンケートを取る形で観客の人たちのニーズとかを聞こうかなと思ってみたんですけど、自分が思っていたよりも他の角度への要望が多くて、そこは聞いてみなければわからなかったので、卒論で調べたからこそだと思います。ただやっぱりそれをまだ、いまいち還元できてないというか、結果をもとに行動まで移せていないので、そこは今後、急にできることではないですけど、ゆっくりやっていきたいなとは思います。
卒論のテーマはWEリーグの集客について。植木ならではのテーマだ
(写真提供=日テレ東京ヴェルディ・ベレーザ)
―ベレーザはホームタウンの活動をかなり活発的にやっているというお話を聞いたのですが、植木選手がこれまでで特に印象に残っている活動を教えてください
今季からはホームタウン活動が増えてきて、その中でも今年の前期のWE ACTION DAYの清掃活動は、清掃はもちろん、参加者の人たちとラフに話しながらっていう機会が、コロナもあってそういう機会もなかったので、いいなっていうのを感じましたし、自分たちはホームタウンが少し遠いので、ホームタウンに住んでいる方だったり、そのホームタウンのお店にポスターを貼ってもらったりしているものの、選手たちが意外と顔を出せていないっていうのが現状。それが商店街周りをした時にやっと認知してもらえたっていう感じが強くて、意外とホームタウンでもそこまで興味がなければ、ポスターとかがあっても頭に入らないものだと思うので、こういった活動は地道かもしれませんけど、大事だなと経験して思いましたね。
―ホームタウンの街でアットホームな感じだなというのは感じますか
近くにある商店街とかが、昔からあるようなあったかい商店街で。自分たちが急に挨拶にいっても「頑張ってねー!」とか声をかけてくれるいい場所だなっていうのは感じます。あとこれからもっともっと自分たちも関わりをもってお互いにウィンウィンになるような関係でいられるといいなと思います。
―では、このセクションの最後に大学時代に一番青春した出来事を教えてください
大学1年生の時は(大学に)通っていたんですけど、2年生の時からコロナでなかなか通えなかったので、2、3、4年は学校に行ってたけど人と関わらなかった。だから、1年生の時はいろんな人と話したりとか、元々話すのも好きなのでクラス活動とかで話したりっていうのが楽しかったですし、学食だったりご飯を食べながらみんなの話を聞く時間っていうのは大学ならではで、楽しかったです。後は、スポーツをやってない人とかと話すのも楽しかったですけど、他の競技をやっている子たちとかの話を聞くのもすごく楽しくて。自分がよく仲良くしていたのが、ラグビー女子の日本代表とフィンスイミングの日本代表で、その子たちは本当に、自分たち女子サッカーも同じように、人気でいえばそこまで強くない競技ですけど、自分たちはサッカーっていう母体は強い。それよりもたとえばフィンスイミングはもっとマイナーで、その苦労を聞いたりとかすると、まだまだ自分たちも頑張らないといけないなっていう刺激をもらえたりとか、もっとこうしたらいいよねっていう話ができたり。そういうのは大学に行って良かったなって思うことの一つですね。
◇プロフィール◇
植木理子(うえき・りこ)
1999年7月30日生まれ、神奈川県川崎市出身。10歳でサッカーを始め、2012年に日テレ・東京ヴェルディベレーザの下部組織に入団。15年にはUー16日本代表にも招集された。16年にはUー17W杯に出場し、6試合4得点で準優勝。Uー20W杯では5試合5得点でヤングなでしこVに貢献した。16年からトップチームで試合に出始める。19年にA代表に初招集。好きな漫画は「死役所」。
◇植木理子特別インタビュー◇
1日目:~大学生なでしこの誕生~「スポーツ選手というのは終わりが絶対にある」
3日目:6月16日公開‼