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東都大学野球 秋季1部2部入替戦・東農大戦 第2回戦
11月17(日) 神宮球場
○東洋大19-2東農大
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
東洋大 | 8 | 1 | 3 | 3 | 2 | 0 | 0 | 2 | 0 | 19 |
東農大 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
岩崎、柿本、佐伯、一條ー政所
本塁打:花田(四回)、嶋村(八回)
二塁打:政所(一回)、中村(二回)、花田(三、六回)、秋元、吉田(五回)
・打者成績
打順 | 守備 | 名前 | 打 | 安 | 点 |
1 | (指) | 金丸(営2=上尾) | 2 | 1 | 0 |
打 | 冨安(営2=履正社) | 1 | 0 | 0 | |
打 | 浅嶋(営1=九州国際大付) | 1 | 0 | 0 | |
2 | (一) | 中村(営2=拓大紅陵) | 2 | 2 | 2 |
打→一 | 山内(総1=東海大相模) | 1 | 0 | 0 | |
打→一 | 嶋村(法4=栄北) | 1 | 1 | 2 | |
3 | (右) | 花田(総3=大阪桐蔭) | 6 | 3 | 5 |
4 | (三) | 池田(営3=三重) | 5 | 0 | 1 |
5 | (遊) | 髙中(総1=聖光学院) | 4 | 0 | 0 |
6 | (左) | 山田(総2=木更津総合) | 3 | 1 | 0 |
打→中 | 大城戸(総1=九州学院) | 1 | 0 | 0 | |
7 | (中) | 秋元(済3=木更津総合) | 5 | 3 | 4 |
打 | 前髙(営2=熊本工) | 1 | 0 | 0 | |
左 | 早川(営2=東邦) | 0 | 0 | 0 | |
8 | (捕) | 政所(営3=天理) | 5 | 2 | 1 |
9 | (ニ) | 吉田(営3=龍谷大平安) | 3 | 3 | 2 |
計 | 41 | 16 | 17 |
・投手成績
勝敗 | 名前 | 回 | 球数 | 安 | 四死球 | 三振 | 責 |
勝 | 岩崎(総4=履正社) | 5 | 87 | 6 | 2 | 3 | 2 |
柿本(営4=東洋大姫路) | 1 | 11 | 1 | 0 | 1 | 0 | |
佐伯(総4=高岡一) | 1 | 9 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
一條(総4=常総学院) | 2 | 25 | 1 | 0 | 1 | 0 |
胴上げされる嶋村主将
先発登板の岩崎
四回に3点本塁打を放った花田
2番手の柿本
七回からマウンドに上がった佐伯
八回に代打で2点本塁打を放った嶋村
4年投手リレーの最後を締め括った一條
笑顔の集合写真
前日の第1回戦でサヨナラ勝利を飾り、先勝した東洋大。あと一勝で悲願の1部復帰が決まる。ここまで、決して楽な道のりではなかった、厳しく険しかった。けれど誰ひとり諦めなかった。だからこそ、この結果がある。最後までスタンドを含めた部員全員で戦い抜き、勝ち取った勝利だった。
初回から東洋打線が火を吹く。先頭・金丸(営2=上尾)の中安打から始まりこの回、一挙8得点。打線のつながりが光り、序盤から東農大を大きく引き離した。勝利に大きく近づく大量得点に、東洋サイドは大盛り上がりを見せた。
1部復帰をかけた重要なこの試合、先発のマウンドには岩崎(総4=履正社)が上がる。前日の試合終了後すぐに、指揮官から先発登板を告げられたエースが、得意とする神宮のマウンドに登場した。野手陣からもらった大幅リードもあり、余裕のある落ち着いた様子で球を投げ込み、五回2失点の投球で試合を作った。
初回から大爆発を見せた打撃陣は攻撃の手を緩めず、二回に1点、三回に3点と得点を重ねていく。四回には3番花田(総3=大阪桐蔭)が、打った瞬間に確信を思わせる左越え3点本塁打を放ち、一瞬たりとも東農大に流れを渡さない。五回にも2得点を挙げ、17-2と大差で試合を折り返した。
投手陣は継投に入り、六回からは柿本(営4=東洋大姫路)、七回からは佐伯(総4=高岡一)がマウンドに上がり、安定した投球で東農打線を無失点に抑えた。
八回表1死二塁、東洋スタンドがこの日一番の盛り上がりを見せる。代打で打席に現れたのは主将嶋村(法4=栄北)。みんなが待ちわびたキャプテンの登場に球場は大歓声に包まれる。力強い応援に背中を押され、放った打球は神宮の夜空に綺麗なアーチを描き左中間席に吸い込まれた。主将の一発に球場全体が大きく揺れ、拍手と笑顔そして涙が聖地神宮球場に溢れた。
最終回、八回から登板していた一條(総4=常総学院)が続投し、最後の打者をニ飛に打ち取り試合終了。19-2と大差で圧倒的な勝利で、1部復帰を決めた。
「覚悟ー奪還ー」のスローガンを掲げ挑んだこの1年。昨年のスローガンである「執念」を受け継ぎ、全員が勝ち抜く「覚悟」を持って最後、1部「奪還」を成し遂げた。
最終戦は4年生の投手リレーと主将の一発で試合を締め括った。勝利目前でサヨナラ負けを喫(きっ)し2部降格となり、悔し涙を流したあの秋から1年。冬を越え、迎えた春は2部3位と勝ちきることの難しさを痛感した。その悔しさを乗り越え、夏を経て迎えた今秋のリーグ戦。全員でひとつひとつ、勝利を積み重ねてきた。そして帰ってきた聖地神宮。この聖地で4年間の集大成となる最高のプレーを見せた四年生。頼もしい後輩たちに大きな置き土産を残した。
1年間チームを引っ張ってきた嶋村主将は「プレッシャーがあったので、最後1部にあげられて安心している」と会見で安堵の表情を見せた。また「嬉しいのが一番なんですけど、やっぱり3年生以下に日本一を狙えるような環境で戦ってほしい」と副将岩崎。1部に上がって終わりではない、戦国東都。見えるのは狙う頂点だけでなく、回避するべき降格もある。1部で戦い続けることの難しさを、どこよりも身に染みて知っている東洋大。この戦国リーグを確実に勝ち抜いていくことが来季の課題となる。
1部復帰で大学野球を終えた嶋村世代も、残る3年生以下も、互いに健闘を誓い、これからもそれぞれの未来へ、彼らの挑戦は続いていく。
■コメント
・井上監督
ーー今日の試合を振り返ってどうでしたか
いつも私が思い描いている理想の展開でしたね。昨日苦しい勝ち方をして、で今日の朝もバッティングをしてきたんですけれども、ちょっとリラックスできているような、みんなそんな感じを受けたので、まあ打ってくれるかなという確信まではいかないですけど、予想はしていました。
ーー今日の先発は昨日の時点で決めていたのか
そうですね。昨日、試合が終わってすぐに(岩崎に)言いました。「(明日)行くぞ」って
ーー先発の岩崎は五回までの予定だったか
五回をめどに。五回は投げ切ってほしいって思っていました。
ーーキャプテンが代打でホームランを放った
ずっと使われない鬱憤を晴らしたんじゃないですかね。最後の最後で。
ーー来季への意気込みは
本当は日本一目指しますって大きいことを言いたいんですけど、前回一季で(2部に)落ちてしまったというところもあるので、やっぱり自力で勝ち点3を取るチームをまず作って、そっからですね。リーグ戦で上を目指してまずは勝ち点3を自力で取れるようにしながら、取れたらもう一個上を目指そうかなと思っています。
ーープロの世界に飛び込む一條と岩崎に激励のメッセージを
さらに厳しい世界なので、しっかり頑張ってください!
ーー去年の秋は勝ち点2をあげながらなぜ最下位になってしまったか
勝ちきれなかったっていうところですよね。本来考えると勝ち点2を取っちゃえばなかなか(最下位になることは)ないんですけど。団子だったんで、ここぞというときに勝ちきれなかったっていうことです。自力で勝ち点3を取ってしまえば、上しか見ることがないと思うので。
ーー野手はかなり良い選手が来年も残るのか
もちろん残ります。で、来年も良い1年生が入ってくるので、また競争です。
ーー来年も戦力的には戦えるか
十分、そこは自信を持っています。
ーーリーグ戦では野手があまり良くないと言っていたが、昨日今日は3年生が打ってくれた
本当に3年、2年、みんな頑張りましたよね、この2日間。当然ね、全員がヒーローになれるわけじゃないので、日替わりで良いとは思っているんですけど、昨日ダメだったやつも今日打ちましたし。日替わりでヒーローが毎日出てくれば良いんじゃないですか。
・嶋村主将(法4=栄北)
ーー一部昇格を決めた今の気持ちは
結構プレッシャーがあったので、最後1部にあげれたと安心している感じです。
ーー代打の打席はどんな気持ちで入ったか
後輩が点数を結構広げてくれたので、もう自分は大きいのを狙おうと思っていました。
ーーホームランの感触は
あんまり、感触はなかったんですけど、打った自分が一番びっくりしています。
ーー歓声がすごかったが、どう感じたか
あんな歓声の中で野球ができるのがすごい幸せだと思いました。
ーー来年の春を戦う3年生以下の後輩たちにどんなことを期待するか
ピッチャーは抜けてしまうんですけど、ピッチャーだったら島田(総3=木更津総合)を中心に、野手だったら池田(営3=三重)、花田(総3=大阪桐蔭)、宮下(総3=北海)を中心に、強い後輩なので、そこは自信を持って1部でも戦ってもらいたいと思います。
・一條(総4=常総学院)
ーー一部昇格を決めた今の気持ちは
3年の秋に負けているので、すごい嬉しいです。
ーーどんな気持ちでマウンドにあっがったか
点差もすごくあったので、気持ちよく投げれたかなと思います。
ーーピッチング自体を振り返って
最後の回とかも3人三振で終わりたかったんですけど、あまりうまくいかなかったです。
ーー去年の悔しい思いは今日で払拭できたか
去年の秋はタイブレークだったんで。今日は点差がすごいあったんですけど、(払拭)できたかなと思います。
ーー東都の入替戦という痺れる試合を経験して、成長できた部分はあったか
やっぱり精神面ですごいそういう(痺れる)場面が多かったんで、すごい成長できたなと思います。なので、プロの世界でもそういうのを発揮できたらなと思います。
ーーその精神面というのは
緊張せずというか、緊張はしているんですけど、良い緊張をもって投げれているかなと思います。
ーープロではどういう投手になりたいか
観客とか子供とかに夢を与えられるような投手になりたいなと思います。
ーーストレートに関して。一時期ボールが走らない時もあったが、この秋にかけて走るようになってきた。その要因は。
今もすごい確率で良いストレートが投げれるってわけじゃないんですけど、前よりもテイクバックのフォームとかを少しですけど変えたので、そこかなと思います。
・岩崎副将(総4=履正社)
ーー一部昇格を決めた今の気持ちは
嬉しいのが一番なんですけど、やっぱり3年生以下達に日本一を狙えるような環境で戦ってほしいです。僕らは2部にいた期間の方が長くて、1部に上がっても、一季で落ちてしまうっていうのが全部だったので、日本一を争うような戦いを3年生以下にはしてほしいなと思います。
ーー今日のピッチングを振り返って
全然良くはなかったんですけど、こっちが結構点数を取ってくれたおかげで、1点オッケーっていう中で投げれたので、大量失点はすることなく投げれたのかなと思います。
ーー昨日先発を伝えられたと思うが、その時の感情は
1試合目、1球しか投げてなかったので、体的には全然大丈夫で、気持ちの準備もしていたので全然刺されることはなかったですね。
ーー今日勝てば大学ラストのになるという試合だったが、どんな思いでマウンドにあがったか
2連勝して2日で勝って終わるっていう気持ちで投げたのと、井上さんに五回投げ切れってイニング途中にマウンドで言われたので、もう五回投げ切ろうという気持ちで投げ切りました。
ーー五回を投げ切れと言われて気持ちは楽になったか
言われてからは全力で五回投げ切ろうと思って投げて、5イニング目のツーアウトを取ったぐらいに最後かという思いで寂しかったです。
ーー神宮のマウンドはどうだったか
神宮のマウンドは好きなんで、去年もやっていて。プロに行っても来れたら、早く投げたいなと思います。
ーーこれからプロの世界でどういうピッチングをしたいか
一番はチームに信頼されるようなピッチャーになりたいですね。
ーー(ソフトバンクは)選手層の厚いチームだが、どんな存在になっていきたいか
僕自身どのカテゴリーでもやっぱ一番上、最初から上にいる存在じゃないんで、プロにいっても下から、ドラフト6位なんで、1番下の立場からチャンス掴んで、最終的には信頼される投手になれればなと思います。
・花田(総3=大阪桐蔭)
ーー一部昇格を決めた今の気持ちは
去年の秋の入替戦は直前に怪我をしてしまって、チームに迷惑をかけて何もできなかったのが悔しかったですし、今回の入替戦は特別な思いで挑んだのですごく嬉しい気持ちです。
ーーホームランを振り返って
チームが流れを作ってくれた状態だったので、一発狙おうっていう気持ちで打席に入りました。
ーー一回に他の選手がヒットで大量得点した中で打てなかったという悔しい気持ちはあったか
井上監督含めてチームメイトが前向きな言葉をかけてくれたので、切り替えて甘い球を仕留めるということだけに集中していました。
ーー勝負強さの秘訣は
勝負強いとは思わないんですけど、井上監督に日頃から気持ちの面も鍛えてもらっているので、今期は少し出せたかなと思います。
・岸主務(国4=北海)
ーー主務として1年間やられてきて、1部昇格という目標を達成した今のお気持ちはいかがですか
1年間を振り返ると苦しいこととか、しんどいこととかいっぱいあったんですけど、最後に1部に上がれたので、後輩たちにこれから頑張ってもらいたいなという思いと、終わりよければ全てよしと思って最後(後輩に)託したいなと思います。
ーー後輩たちに向けてエールを
次の後輩たちは日本一を目指せるメンバーが揃っていると思うので、一戦一戦自分の実力を出して頑張ってもらいたいなと思います。
TEXT=一ノ瀬志織/PHOTO=青柳そよか、鈴木真央、山本華子 、福田和奏、高梨美遼 、一ノ瀬志織