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2024.11.23
硬式野球

[硬式野球] 「野球をやっていてよかった」人望厚い愛された主将 見る人に感動を与えた最終打席の本塁打

東都大学野球 秋季1部2部入替戦・東農大戦 第2回戦

11月17(日)神宮球場

○東洋大19-2東農大


ダイヤモンドをまわりながらガッツポーズの嶋村




スタンドには涙ぐむ部員も


誰もが出場を待ち侘びた選手。この日一番の大歓声が球場を包み込む中、東洋大の背番号1がグラウンドに姿を現した。

この秋シーズン、ここまで出場機会は多くはなかった。それでもチームのために声を出し続け、仲間を鼓舞してきた。何をやるにも全力な主将のその姿は、見る人全員の目にしっかりと映っていた。

 17-2で迎えた、八回表1死二塁。代打嶋村がコールされ、その名が聖地神宮球場に響いた。より一層の盛り上がりを見せる、スタンドからの嶋村コールが背中を後押しする。

 バットを数回程振り、落ち着いた様子で打席に入るその姿は主将の貫禄が感じられた。「後輩が点数を広げてくれたので、もう自分は大きいのを狙おうと思っていました。」と意気込み、入ったこの打席。粘ってカウント2-2で迎えた6球目、直球を力強く振り抜いた。神宮の夜空に綺麗な放物線を描いたその打球は、左中間席に突き刺さる2点本塁打に。これまでのひたむきな努力が実り、報われた瞬間だった。この入替戦で、ベンチ入りの4年生野手は嶋村のみ。4年間毎日共に野球に励み、この日はスタンドから全力で声援を送ってくれた同期の思いも乗せた渾身の一振りだった。

 打席に入る前の心境を「まずは井上監督に一打席頂いたことへの感謝。そしてベンチの中では聞こえにくい、グラウンドでしか味わえない歓声、それを打席に向かうまでかみ締めていました」と改めて振り返った。

 ダイヤモンドを一周しながら、大盛り上がりのスタンドに力強いガッツポーズで応えた。喜びの余り、中には感動し涙ぐむ部員も多く見られた。日々の寮生活を常に共にしてきた仲間。嬉しい時も苦しい時もいつも一緒だった。苦しい時の方が多かったこの1年間、時には先頭に立ちみんなを引っ張り、また時には敢えて後方に周りチームを押し上げ、後ろから支えてきた。今秋のリーグ戦出場は、わずか2試合。打席に立ったのは専大戦第3回戦の2打席のみだった。打席に立てないもどかしさもあったかもしれない。それでも主将として、最上級生として、井上監督が期待する役割を責任を持って果たしてきた。チームを支え続けたキャプテンの代打での一発は、東農大の選手達からも賞賛の声をかけられ、神宮球場の全ての人に感動を与えた。

 本塁打を改めて振り返り、「ホームランが打てたのは、スタンドからのすごい応援のおかげでもあります。あんな大歓声の中で初めて打席に立ちました。野球をやっていてよかったと心から思いました」と、最後まで周りへの感謝を口にした嶋村。1部の舞台という大きな置き土産を残し、頼れる後輩たちのこれからの活躍に期待する。


◾︎コメント

(会見でのコメントは試合記事に記載)

・嶋村主将(法4=栄北)

ーー本塁打を打った球は

真っ直ぐです。

ーー打席に入る前の心境を振り返って

まずは井上監督に一打席頂いたことへの感謝。そしてベンチの中では聞こえにくい、グラウンドでしか味わえない歓声、打席に向かうまでかみ締めていました。

ーー改めてあの本塁打を振り返って

入替戦まで来れたのも、あの打席に立つことができたのも、頼もしい後輩たちのおかげです。そしてホームランが打てたのは、スタンドからのすごい応援のおかげでもあります。あんな大歓声の中で初めて打席に立ちました。野球をやっていてよかったと心から思いました。そして「野球」をやらせてくれた両親にも感謝です。

ーー最後に後輩たちへエールをお願いします

最後まで諦めなければ必ずいい結果が出ると思うので諦めずに全力で頑張れ!


TEXT=一ノ瀬志織/PHOTO=青柳そよか、一ノ瀬志織