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『スポーツ東洋』第98号(2023年2月3日発行)「マネージャー&スタッフ特集」でご紹介した、アイスホッケー部のマネージャー・山勢結香さん。ある日の授業、選手と隣になったことが入部につながった。長い間、マネージャーは一人。大変だったというが、「考えられないくらい充実していた」と振り返る。そんな彼女が全力で駆け抜けた4年間とは。
マネージャーを務めた山勢結香さん
ーーマネージャーを始めたきっかけは何ですか
私自身、小学校から高校3年生までフィギュアスケートをやっていて、大学に入る前にまず競技を続けるか続けないかですごく悩んで。ただ、高3の夏に足首をけがしてしまい、そこから元の状態に戻すってモチベーションが必要で、そうなったときにずっとマネージャーをやってみたいと思っていて。ぱっと思いついたのが、フィギュアの貸し切りの入れ替えとかで一緒だったアイスホッケー。東洋大にスケート部があることは知っていたので、探してみて。ただ、そのときインスタグラムがなくて、フェイスブックとホームページだけだったんですけど、フェイスブックやっていなかったので、ホームページ見るだけで全然わかんなくて。気になってはいたんですけど。
入部には踏み切れず、1年生の6月ぐらい、サークルに入る時期。もう友達のサークルに入ろうと決めていて、そのときはサッカーのサークルに入るつもりだったんですけど、(ある日)統計の授業でたまたま同期の宮田大輔と隣になって。U-18から帰ってきたタイミングだったので、見るからに分からなそうにしていて、私が大丈夫って声かけて友だちになったのがきっかけですね。
「部活で遠征行ってたんだよね」って話で、「何部?」って聞いたら「アイスホッケー部」ってなって。「入りたいんだよね」みたいな話したら、「そしたらつなげるよ」ってつなげてくれて、入部したという形ですね。
ーー当時、部にマネージャーはいたのですか
ちょうど入れ替わりで先輩が卒業されていて、そのときはいなかったという感じですね。
ーーそのあたりで不安はありませんでしたか
不安なかったわけではないんですけど、私、兄が3人いるので、男性ばかりの環境とかはそんなに抵抗がなく、むしろやってみたいって気持ちが強くて。もう気づいたら入っていました。
ーーどのような仕事をしていますか
主に、練習や試合、合宿などに帯同して選手のサポートするのと、試合時はチケット販売があるので、そこでのチケット販売。あと、お金の管理と基本的にビデオ録り、写真撮影、そしてSNS。私が入部したぐらいからSNSをやり始めて、まずインスタグラムを作って、2年目からツイッターも開設して、3、4年目からラインを作ったっていう感じです。
試合経過をSNSにアップ
(写真提供:東洋大学アイスホッケー部)
ーーSNSを運用する計画は元々あったのですか
インスタグラムは、先輩マネージャーの方がアカウントだけ作ってくれていて。マネージャーや部活を探すとき、よく「#春から東洋」とかって見るじゃないですか。そういうときに、私はすごくインスタグラムとツイッターを見てたので。まずはインスタグラムをやった方がいいんじゃないかなと思っていたので、アカウントを受け継いで、そこからスタートしたっていう感じです。
ーー長い期間、マネージャーは1人だけでしたが
でも私、本当に緩い性格ですし。あと、みんなからしたら本当にポンコツだったと思うので、たしかに大変じゃなかったって言ったら嘘なんですけど、今振り返ったら楽しかったなっていうのが大きいですね。
ーー務めるにあたって意識したこと、目標はありましたか
とにかく選手の立場になって考えることはかなり意識していて。自分が選手だったのもあるので、自分が選手だったらプレーについて言われるの嫌だなとか、アイスホッケーよく知りもしない人に口出されるのは嫌だなと。いいのか悪いのかよく分からないですけど、アイスホッケーの競技についてはあまり勉強しすぎないようにしていて。知ってしまうと、やっぱり何か変に知識がついたりして、なんかこうすればいいのにとか思うのも嫌で。抽象的にはもっとこうしたらいいなとか思うこともあるけど、具体的にならないようにしていて。
あとは、笑顔でいることもかなり気をつけていて。プレーとかで直接チームに貢献できるわけではないんですけど、マネージャーの雰囲気がチームの雰囲気にもかなり影響を与えると思っていたので。どんなときであっても、ピリオド間にハイタッチして、そこでは必ず笑顔でみんなのことを送り出そうとは意識していました。
試合前に選手とハイタッチ(2019年撮影)
ーー強豪チームとしてのプレッシャーはありましたか
プレッシャーというよりも、とにかくみんなが自慢でした。もちろん選手たちは厳しく自分を追い込んで、たくさん努力しているので、私にプレッシャーがないって言ったら無責任になってしまうかもしれないんですけど。ただ、やっぱりその努力を近くで見ていて、みんなすごいなっていうのと、その努力の結果でみんなが勝利をつかんでいく姿はとにかく自慢でしたし、もうみんなを信じて、私は自分のやることをやるというのが一番だと。プレッシャーとかは特に感じなかったですが、ただ、毎試合緊張はしていました。
ーー特に大変だった仕事内容や苦労したことは何でしょうか
やっぱり1人でいるのはちょっと大変でした。今は3人いるので、もちろん仕事量もそうなんですけど、それよりも部に女性1人というのが。やっぱり女性と男性で考え方とか違うこともあるじゃないですか。一緒に帯同する女の人がいない中で、例えば、母とか友だちに言っても、もちろんすごく分かってくれるんですけど、マネージャーは肌で感じてくれていることも多いので。そういったところで共感してくれる人が今はいますが、やっぱり前はずっと1人だったなっていう感覚があって。
あと、合宿とかでは、もちろん選手も疲れてきますし、私もやっぱり余裕がなくなってきて。同期に対して強い口調になってしまうとか、そういったところで精神的に落ち込むこともあったんですけど、日数重ねていく中で、やっぱり打ち解けてというか、割り切って自分の嫌なこととかも言えるようになって。同期の性格を把握できれば、こうなるなとか分かるので、最初の方がやはり大変でしたね。
2022年、マネージャーは3人に(右が山勢さん)
ーー後輩のマネージャーが入ったことも大きな変化でしたね
最初は正直、私が教える自信もなかったですし、ずっと1人で先輩方に優しくしていただいてたので、自分が上に立って教えるような立場になれるのかとか、今のこの自分の心の余裕で誰かに教えられるのかとか、すごく不安だったんですけど。いざ入ってきてもらって、特に最初の1か月は大変ではあったんですけど、部に女の子がいるのってこんな楽しいんだって。今までももちろん楽しかったけど、今までとは違う楽しさがたくさんあって、本当に後輩2人は入ってきてくれてありがとうっていう気持ちが大きいです。
ーー山勢さんはどうやって仕事を覚えていったのですか
まず、入れ違いの先輩がすごくいい方で。今でもご飯に行ったり、飲みに連れて行っていただいたり、プライベートで遊びに行ったりするような仲で、本当にいい方で。その方が社会人1年目で絶対大変なのに、私が分からないこととか、聞いたことに対して、いつもすぐお返事くださって。あとは3年の春まで山口さんという方がコーチで、その山口さんもすごく気を遣ってたくさん教えてくださったりとか、選手の先輩方が教えてくださったりとか。入れ違いの先輩方がいたときのことが全く分からないので、同じ仕事内容ができていたのか分からないんですけど。教えてくださったことがすごくたくさんあって、そのことをベースに、あとは自分で考えながら行ってました。
こういうふうに言ってるんですけど、今になってキャプテンの石田陸と話すことがあって。当時、本当に使えなかったみたいで。私の性格上イエスマンで、何やって何やってと言われて全部やるんですけど、全部中途半端になっちゃっていたみたいで。もうみんなの中でネタみたいになっちゃってるんですけど(笑)。
試合前にベンチでドリンクを準備
ーー逆に、楽しかった瞬間や思い出は何でしょう
挙げるのは難しいくらい、部活のおかげで大学4年間が本当に楽しかったですし、もう東洋に入ってよかった、アイスホッケー部に入ってよかったと本当に心から思います。大変なことはもちろんあったんですけど、この選択は本当に間違いじゃなかったなって心から言えるぐらい本当に楽しくて。本当に楽しくてちょっと挙げるのが難しいんですけど。
ーー特に思い出に残っているエピソードを教えてください
毎年インカレの時期は本当に大変なんですけど、すごく楽しかったです。2年生のときは中止だったので、最後の秋リーグになってしまうんですけど。もうその年のチームが一番いいときというか、やっぱりチームが一丸となるので、帯同していて本当にみんながキラキラしてるんですよね。最後だからか分からないですけど。私もチームの一員なんですけど、なんか本当にすごい人たちに見えて、そこに私も入ってるんだなって毎年思って。その時期になると、自分の中で1年を振り返りもして、(4年生の)引退はすごく寂しいですが、インカレは楽しいです。
選手を信じ、試合を見守った
ーーインカレ終了後には集まりや会が開かれるのですか
1年と3年のときは優勝したので、ホテルに帰って全員で祝勝会をして。その後は学年ごとに分かれて、4年生はスタッフと「4年生会」というものがありますね。今年は祝勝会という感じではなくて、チーム会として、新横浜のところ貸し切っていただいて。それもすごく楽しかったです。
ーーマネージャーのやりがいはどこにありますか
試合が終わって、みんなの笑顔を見るときにやりがいを感じます。結果とかももちろん大事なんですけど、笑顔が見れるというのは、みんなが思い切りプレーできたときだと思うので。みんなが試合後に笑えるように私もサポートしようと思っていましたし、その笑っている顔を見るのがやりがいでした。
ーーチームの活躍を4年間どのように見てきましたか
とにかくみんなが自慢でした。結果とかそういうものじゃなくて、みんなの努力を近くで見てきて。さらに、努力してきたその力を出せるのってすごいじゃないですか。私は緊張して(実力を)出せなかったりしますが、みんなはプレッシャーとかもある中、努力したものをそのまま出したりとか。練習以上にすごいときもあるので、学年関係なく尊敬してますし、とにかくみんながかっこいいと思っています。
チームの活躍を間近で支えた
(写真提供:東洋大学アイスホッケー部)
ーー改めて、4年間を振り返ってみていかがですか
本当に楽しかったですし、入部してマネージャーをやらせてもらったおかげで、大学4年間が考えられないぐらい充実しました。この大変だったことも、うれしかったことも、この先の人生ではもう経験できないようなことなので。何歳になっても、どんどん歳を重ねても、もしおばあちゃんになってちょっとぼけちゃっても、この4年間のことは絶対に忘れないし、この4年間のことを繰り返し話しちゃいそうなぐらい。本当に楽しくて充実した4年間だったなって思います。
ーー最後のインカレは振り返っていかがですか
そうですね、優勝したかったのはありますけど。ただ、本当にみんなの努力は絶対に何にも代えられないですし。それがみんなの思った結果にならなかったことが、本当に悔しいんですけど。ただ、後輩たちには来シーズンからのいいバネになる、なってほしいなっていうふうに思っています。同期も全員ホッケーは続けるので。この先のホッケー人生で本当に活躍してほしいと思いますし、この気持ちをバネにとか言っていいのか分からないですけど。ただ、私的には結果よりみんなが努力していたということが何にも代えられないと思っているので。結果が伴えば、一番いいんですけれど。ただただみんな今年もすごかったなと思います。
ーー4年間で印象に残っている試合とか大会は選べますか
難しい。ちょっと待ってくださいね。印象に残っている試合はあるとは思うんですけど、やっぱり振り返ると、試合後に笑っているみんながぱっと出てきちゃうかもしれないです。ちょっと面白くない回答ですけど。本当に毎試合毎試合です。
ーー同期へのメッセージ、思いをお願いします
私と、同期6人いて。(石田)陸、(阿部)泰河、(藤原)周、(前田)拓杜、(宮田)大輔、(武部)太輝。もう1年生のときは、私の学年がいちばん普通だって思ってたんですけど、面白い先輩方がたくさんいたので。ただ、本当に今は癖が強くて、とにかく濃くて。その6人と同い年として、同期マネージャーとして活動できた4年間は、本当に大変なこともあって、悩んだこともあって、何回泣いたかも分からないんですけど。でも、やっぱり楽しかったなっていうのと、みんなと同い年、同じ代で東洋のアイスホッケー部に所属できたということが本当に誇りですし、とにかく楽しい思い出をありがとう。これからみんなの活躍を心から応援していますし、アイスホッケーという競技にこの4年間ですごくはまってしまったので。みんな全日本(選手権)とかに出場できるようなチームに入るので、応援に行きたいなっていうふうに思ってます。
当時1年生の同期7人(2019年撮影)
「濃い」4年生に(2022年リーグ戦後)
ーー後輩に向けてもメッセージをお願いします
自分が1年のときとか、まだチームに先輩がいるときは、ずっと後輩でいたいって思ってたんですけど、いざ後輩が入ってきてくれると本当にかわいくて。あまりかわいいとかは言わないようにしていたんですけど、やっぱりどう考えてもかわいくて。そんなかわいい後輩たちには、本当にこれからのシーズン、これからの試合でも本当に笑ってほしいなと思っていて。たぶん来年以降もいろんなプレッシャーや重圧、周りからの期待、たくさんのものに押しつぶされそうになることもあると思うんですけど、学生のアイスホッケーってあっという間に終わってしまうので。毎年毎年メンバーが変わってしまうので、その一シーズン一シーズン、一試合一試合を楽しんで、自分たちらしさを大切にプレーしてもらいたいなっていう気持ちが大きいです。
ーー後輩のマネージャーに向けてもお願いします
2人は入部して1年で、1年目から一気に教え込んでしまったので、ときには厳しいことを言ったこともあると思うんですけど。まず、それに1年ついてきてくれて、こんな頼りないマネージャーについてきてくれてありがとうっていうのと、あとは来年以降、今までと違った大変さだったり、心細いこともあったりすると思うんですけど、引退しても私は2人の先輩マネっていうのには変わりないので。いつでも連絡してきてほしいですし、チームを応援するのはもちろんなんですけど、2人のことを一番に応援しています。笑顔で頑張ってほしいです。
思いを後輩に託す(奥が山勢さん)
ーーアイスホッケーの魅力はどこにあると思いますか
私にとって、「アイスホッケー=東洋」になってしまうので、必然的に東洋のよさになってしまうかもしれないんですけど。初めて見たときは、まだフィギュアをやっているときだったので、リングサイドにパックが思い切り当たる音とか怖くて、すごく苦手だったんですけど。ただ、初めてリングサイドで見たときに迫力があって、当たり合いはもちろん激しくて心配になる部分とかもたくさんあるんですけど、こんなに面白い競技がなんでこんなに普及してないんだろうと思って。みんなで攻めて守って、オフェンスとディフェンスの切り替えがすごく速いのがアイスホッケーだと思うんですけど、その中でも東洋は本当に全員で攻めて全員で守ってるというのをすごく感じられて。アイスホッケーの醍醐味ってやっぱり当たり合いだと思うので。そこでもハードに、絶対に痛いじゃないですか。痛くてやりたくないことだと思うのに、チームのためにみんな自分のことを犠牲にして守ったり、当たりにいったりしているのを見て、すごいなって思いますし、それが本当に魅力なので、面白いなって感じます。
ーーマネージャーの魅力はどこでしょうか
こんなに努力している人たちと一緒に4年間を過ごせることがすごいと思いますし、この歳になってうれし泣き、悔し泣きができるってすごい貴重だなって思うんですね。あとは同期との喧嘩とかも、もう大学生になってそんなことしないじゃないですか。ありきたりになってしまうんですけど、本当に青春だったなって思います。
◇プロフィール◇
山勢結香(やませ・ゆか)
趣味・好きなこと/家族や友人との思い出などを一つの動画にまとめること
オフの日の過ごし方/とにかく家族や友人と遊ぶ
2022年度のアイスホッケーの記事は以上となります。1年間、ありがとうございました。引き続き、アイスホッケー部のご活躍を応援しております。
◇東洋大学アイスホッケー部について◇
◇『スポーツ東洋』第98号について◇
■主務&マネージャー&スタッフ特集 2022年