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昇格後ワーストの５位に終わった秋季リーグ戦。偉大な先輩から受け継いだ王者のバトンをつなぐべく挑む来年度、チームをけん引する４人の幹部陣を紹介する。
最終週は2016年夏、全国の高校球児の中で一番長く一番熱い夏を過ごした作新学院高校の主将・山本（法３＝作新学院）。真紅の大優勝旗を手にしてから早３年。学生野球ラストシーズンが自身の「野球人生最後の１年になるかもしれない」と覚悟を決める男に迫る。
作新学院高校の主将選出方法は監督からの指名を受けた３選手が試用期間を経て、最終的には様子を見た監督が指名をするというもの。その中から指名を受け、名門の主将の看板を背負った。最後の１年の思い出を聞くと一番に口にしたのは「やっぱり夏の記憶が」。そう、日本中が熱狂する夏の甲子園だ。負けたら終わりのトーナメント戦。弱冠18歳で全国の注目を一手に浴び、戦い抜いた。「その中で一番緊張したのは甲子園の決勝よりも地区大会だね」。現在は９連覇を達成している作新学院高校だが、山本の在学時は６連覇をかけてのトーナメントに。歴代OBたちが繋げた襷を次の世代に回せるか。そのプレッシャーを押しのけ聖地・甲子園に立つとそこからは緊張はあまりなかったという。
「初戦は自分たちの力試しというか。初めての甲子園だったから。楽しもうって話してた」と尽誠学園高校を３対０で撃破。その後は関東勢との闘いを制し、一気に準決勝まで駒を進める。そして迎えた大一番。「一番緊張したのは準決勝。明徳義塾とはやったことなかったし、優勝がちらついてた」とチームの異変を察知したという。少し悩んだ末に「練習中は放っておいた。みんなぴりぴりしてそうだったし。そのあとのミーティングでちょっと笑わせたら雰囲気も良くなって」と主将が振り返った山場を乗り越えるとチームは深紅の大優勝旗を手に入れた。
今も試合前にベンチ前での歓談の輪の中心で選手の顔から緊張の色を取る山本の発想の原点は小中学生までさかのぼる。「そんな強いチームじゃなかった」と当時のチームを振り返ったが、そのチームはあまり緊張することがなかったという。キーワードは”笑顔”チーム全体に笑顔があれば、という当時の経験が高校時代に実になった。
甲子園優勝キャプテンとして大学に入学するも苦しい時期が続いた。チームが優勝をした2017年。当時は学業が忙しく、チーム練習に参加できない日々だったが優勝後の会見で名将・高橋監督から「山本拳輝っていうね。面白い内野手がいるんですよ。今年は法学部だと忙しくて出てこれてないけどね、今後を背負う選手になりますから。期待していてくださいよ」の言葉があったことを報道陣はどれだけ覚えているだろうか。その期待は直後の秋に形として現れる。代打として、ここ一番での勝負強さを存分に発揮。泥臭く執念で食らいつく打撃でチームを１年生ながら鼓舞した。順調に進みそのままレギュラーを奪取できるかと思われたが、壁にぶつかった。「腐ってたなぁ」。少しずつ減っていく出場機会にやがて「とりあえずいただけ」と心持が下がる。持前の明るさがなくなり始めると、そのうちベンチ入りメンバーからも名前が外れた。返り咲いたのは３年春。野手を中心に実力のある先輩たちが抜け、「空いた枠に入ってやる」と決意。アピールの末、今秋はベンチ入りメンバーに返り咲いた。
この男の魅力は全身全霊で向かうその姿。今秋はベンチ入りを果たしても、出場機会に恵まれず。しかし、１年を経て決して腐らずに声でチームを鼓舞し続けた。”すべては声から”。いよいよ迎えた元気印のラストイヤー。ぜひ、神宮球場で山本拳輝副将の魂の鼓舞を聞きに行ってはいかがだろうか。
◇プロフィール◇
山本拳輝（やまもと・げんき）
生年月日／1998・10・９
身長・体重／178㎝・79kg
好きな食べ物／ピザ
苦手な食べ物／強いて言うなら辛い物
長期オフがあったら行きたいところ（理由）／オーストラリア（昔行ってよかったから）
苦手な物／心霊系
好きだった教科／数学
苦手だった教科／社会
野球をやっていなかったら（理由）／バレー（母親がやっていたから）
差し入れで貰ってうれしいもの／赤福・京バウム・神戸プリン
部員の誰かを彼氏にするなら（理由）／村上か納（プライベートで仲が良いから。斎藤はない）
～掲載予定～
第２週：チーム随一のユーティリティー チーム作りに生かす 諏訪賢吉副将
第３週：エースとしての自覚 さらに上のステップへ 村上頌樹副将
12月26日～12月31日（６日間連続掲載）：”神宮に立つのは俺たちだ” スポトウ的来年度の注目選手紹介
◇秋季リーグ戦終了連続インタビュー◇
[硬式野球]～課題を見つけた実りの秋。再挑戦へ～15日間連続インタビュー
リンク先に掲載全選手分のURLが添付されています。ぜひ、併せてご覧ください
TEXT／PHOTO＝須之内海
