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2022.08.10
硬式野球

[硬式野球] 〜最後に散った1部への夢、ここから再起を図れるか〜14日間連続インタビュー第10日目・ 松澤海渡投手

聖地神宮に戻ることを夢見て、チーム一丸となりこの春を戦った東洋大の戦士たち。厳しい2部を戦い抜き、1部への切符を掴みかけたが、最後は戦国東都の重圧がのしかかり、思い出の地で涙を流した。心に焼き付く経験をした選手たちは何を語るのか。14日間にわたり彼らの思いをお届けする



第10日目は、先発として躍動した松澤海渡(営4=帝京)投手。リーグ戦では4勝をあげたものの、大一番の入替戦では不発に終わった。2部残留が決まった瞬間にこみ上げたのは自分に対しての苛立ちだった。「実力がないなら練習するしかない」。松澤はこの夏さらなる進化を目指す。(取材日・7月17日、聞き手=宮谷美涼)


ーー今季を振り返っていかがでしたか

リーグ戦は、最初の3戦までは良かったのですが、拓大戦で疲れが出た。その部分で調整不足というか、上手く投球できなかったのが悔しかったかなと。そこでの1敗がもったいなかったなという印象です。それでも、それなりに自分のボールは投げれたかなって。結局は最後がダメだったので、納得はいかないですね。一番大事な大一番で結果を残せたら成長できたなってなったんですけど、結果を残せなかったので、今までと変わってないなと思います。


今季は安定したピッチング見せた


ーー今季は4勝しましたが、失策が少なかったことも勝利の要因になったのでは

今シーズンエラーが少なかったので、投げやすいですよね。「打たせて取ればいいや」っていう守りをしてくれるので。石上泰(営3=徳島商業)加藤響(総2=東海大相模)だったりが、すごくいいプレーをしてくれるので、あそこらへんに打たせればいいやという感覚で投げられましたね。だから、そういうのも含めて球数が少ないというのがあるのかなと。単にコントロールが良くなったというのもあるかもしれないですけど、シンプルに守備が良くなったので、任せられるというか。ストライクゾーンで勝負して打たせればいいやという感覚になりましたね。


ーー第一先発だった細野(総3=東亜学園)投手を見ていていかがでしたか

もうすごいの一言しか言えないです。あんなえげつない球を放っているのなら、ずっとストライクだけ放っておけばいいかなって自分は思うんですけど。そこはあいつの中でもストライクを入れるというのは課題になっていると思います。


ーーやはり四球を出してしまうことが細野投手の課題だと

確かに減らさないといけないですけど、それが一つの良さでもあるので。あれだけ球がいい感じに散らばってるので、あれはあれでバッターは絞りづらくて打ちづらいと思うので。散らばった中で、フォアボールを出さずに打ち取れれば、球数も減らせますし、完投も増えてくるのではないか。無駄なフォアボールであったり、そういう球が減っていけば、もっとえげつない投手になるのではないかと。そこが改善出来たらシーズンとして防御率0.00を狙えると思います。


今季も2人で支えあってきた


ーー入替戦前のご自身の調子は

リーグ戦のいい時と比べたら、落ちてるかなっていう感覚はあったんですけど、その中で抑えなきゃいけないという部分があったので、修正しきれなかった感じですね。


ーー久しぶりの神宮球場はいかがでしたか

神宮はグラウンドインが好きなんですけど、スケールの大きさとか他の球場に比べて全然違うので、そういう部分では楽しみでしたね。


ーー思い出の地で2戦目の先発を任されましたが、心境は

1戦目は細野が取ってくれたので、いけると言う感覚もありましたし、悪かったとしても3戦目があるという気持ちの余裕を持ってはダメなんですけど、それくらい大雑把に勝負できると思っていましたね。


2戦目の試合前のブルペンの様子


ーー初回から野手の捕球ミスからの本塁打を浴びましたが

あそこは、普通は自分がカバーして、その後抑えられたら良かったんですけど。自分自身、一回捕球体制に入っていたんで。ホッとして気が抜けた中で、また投げなきゃいけないってなって、隙をつかれてしまったかなという感じです。


ーー降板後、投手陣が大崩れしましたが

全部自分のせいかなと。自分がランナーを貯めて渡邊(総4=報徳学園)に渡してしまって、渡邊も失点してしまった。普段の渡邊だったら、絶対に抑えられるんで。ああいった場面で渡してしまって申し訳ないなと。後に投げる他のピッチャーに対しても、あれだけリズムやテンポの悪いピッチングをしてしまったら、味方のピッチャーも投げづらいですし、乱してしまったなという感じです。


入替戦ではいい思い出を作れなかった


ーー2戦目は投手陣全体で四死球が11を数えました

普段より力んでしまうというところはあったんでしょうし、慣れない、固いマウンドで苦労してしまったって言ったら終わりなんですけど。しっかりと対応できるように準備する期間はあったと思うので、そこで準備しきれなかった自分たちのせいですね。


ーー3戦目では九回で河北(営4=浦和学院)投手が連続2四球で降板しましたが

九回にチャンスを作って、自分たちが点を取れなかった流れで、悪い雰囲気になってしまった。ちょっと流れが悪いかなと思ってたんですけど、案の定、ああいう形(連続2四球)になってしまって。正直言って、河北がああいう感じになっちゃうんだったら、誰が行っても変わらないかなと。河北にはずっと後ろやランナーがいる場面を任せてて、火消ししてもらってたんで。そういう場面で河北がダメだったら自分的にもしょうがないかなと思いましたね。


ーーその後は、1年の島田(総1=木更津総合)投手が登板しました

4年生の自分、渡邊、羽田野(法4=汎愛)が控え投手で待っている中、ああいう場面で1年生を行かせてしまったのは、悔しい部分もありますし、申し訳ないというか、情けないなと思いました。「打たれても、お前の責任じゃないから。どんどんストライクゾーンに投げ込んでけ」と言って送り出しました。


ーー最後打球がくぐり抜けたシーンを見た時は

悔しさでみんな結構泣いていたと思うんですけど。もちろん悔しさもあったんですけど、自分に対してイライラしました。最後にあのマウンドに立てなかった、自分が2戦目で決めていれば、0で抑えて勝っていればという思いもありますし、最後、1年の島田に行かせてしまった。全て含んで悔しさというよりは、自分に対する苛立ちがすごく大きかったですね。


2部残留が決まった直後の細野と松澤


ーー試合後は真っ先に島田選手を慰めてましたね

行かせてしまった自分たちが悪いので、「責任はないから、気にするなよ」と言う感じですね。


ーー4年生で話はされましたか

寮に帰ってからのミーティングで、「いつまでも引きずっていても変わらないので、次の練習からはしっかり切り替えてやっていこう」と。(今は)変に引きずらずに、秋に1部に上がれるようにちゃんと練習出来てるように感じます。自分の実力がなかっただけだと思ってるので。実力がないなら練習するしかないです。



ーー松澤選手が考える1部に上がれなかった原因とは

確実に言えるのは、ピッチャーのフォアボール。去年に比べたら、明らかに減ってはいたんですけど。結局その大一番で二桁四死球だったりとそういう部分が大きく出てしまったのは、うちのピッチャーの弱さが出てしまったのかなと。そういうところで自分のピッチングを誰もが出来るような練習をやっていけたらいいなと思います。



ーー自身の課題はなんでしょう

全部です。別にいいところは一つもないので。防御率0.00、1点も取られないピッチングができてやっと1部で通用するのかなという感覚でいるので。リーグ戦であの成績(防御率)で、入替戦であんな風になってしまったので、あれ以上の成績を求めないといけないと考えているので。もう0点台。負けなしで5勝0敗。そのくらいの感覚で行かないとダメなのかなと思いました。


ベンチからも声掛けをしていた


ーー2部では専大の菊地投手が防御率1位でしたね

いいピッチャーです。それは変わりないんですけど、秋も1戦目と3戦目に投げてくると思うので、1戦目で打ち崩すというか。1戦目で取れないときついと思うので。今回は、疲れたところを付け入ることはできたんですけど、元気な状態の菊地投手を打てなかったので。



ーー秋では早々に菊地選手を打ち崩す必要があると

元気な菊地投手を打てるようになったら、それなりに1部に通用するのかなと。菊地投手だけで見たらすごいいいピッチャーで、1部でも通用すると思うので。菊地投手をしっかり打ち崩せて、自分たちが2部のバッターをこてんぱんにに抑えられれば、入替戦でも勝てて1部に通用するチームになれるのかなと思います。


チャンスでの小口の打席を見つめる松澤


ーーここからどのようにチームを再建していきたいですか

フォアボールだったり、フィールディングであったりと、投球以外の部分もしっかりと見返して、チーム全体として課題に取り組んでいきたい。やはり、フォアボールとか自分たちの自滅で点がつながって、負けたので。そこをチーム全体として意識して減らしていけたら、確実に勝っていけるのかなと。みんな力はあるので、そういうのが無くなれば全然勝てると思うので。そこを意識して自分もやっていけたらなと思います。



ーー昨年から「あと1勝」が達成できない状況が続いていますが

今回はあと3アウトという部分で、そこが取れなかったんですけど。あと1つなんですけど、その1つが去年から全く取れないというのは、勝負弱さとなってしまってるのかな。チームとしての勝負弱さ、ピッチャー陣としての勝負弱さ。そういう部分が昨年の春からずっと出てしまっていると思います。



ーーそれでは秋も全勝を目指すと

もう全勝しないと勝てないと思いますし、2部で手こずっているようじゃ、1部に勝てないことが分かったので。春は10勝2敗だったので、秋はその2敗をしっかり無くして、全勝出来たら1部に勝てるというか、入替戦に勝てるのかなと。そこの2敗を消したいですね。完璧に優勝したいです。



ーーそのために夏はどのようなことに取り組みますか

新しい変化球を2種類くらい増やして、大きく自分の投球スタイルを変えていこうかなと。打ち取っていくというスタイルは変わらないですけど、その中で今までにはない幅を使ったピッチングをできたらいいなと思います。



◇プロフィール◇

松澤海渡(まつざわ・かいと)

生年月日/2000・7・25

身長・体重/183㌢・93㌔

グローブに入れている言葉/「臥薪嘗胆」特に意味はなく、言葉がかっこいいから。



◇連続インタビュー一覧◇

第1日目:杉本泰彦監督 「今度はもっと強いチームを」

第2日目:宮下朝陽内野手「いい経験になった初めての春」

第3日目:加藤響内野手 「秋は見返してやる」

第4日目:石上泰輝内野手「首位打者を狙いに」

第5日目:後藤聖基捕手 「手応えのあった春」

第6日目:橋本吏功外野手「自分が出ればチャンスになる」

第7日目:水谷祥平外野手「力不足を感じた」

第8日目:渡邊友哉投手 「困ったときに使われるような選手に」

第9日目:細野晴希投手 「チームを引っ張る立場に」

8月11日 矢吹栄希外野手

8月12日 松本渉外野手

8月13日 河北将太投手

8月14日 小口仁太郎主将


PHOTO=宮谷美涼