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今季、2部で完全優勝を成し遂げた東洋大の戦士たち。10勝2敗と他を圧倒したように見えるものの、優勝までの道のりは決して楽ではなかった。
「全勝を目指していた中、2敗してしまい、悔しい部分がある。もう少しやりきれたかな」。主将としてチームを率いる小口(法4=智弁学園)は今季をこう振り返った。
最初は東農大との戦いだった。細野(総3=東亜学園)、一條(総2=常総学院)、羽田野(法4=汎愛)の150㌔超リレーで華やかなスタートを切ると、2戦目では松澤(営4=帝京)がマダックスを達成。杉本監督が「日本一のピッチャー陣」と豪語した彼らの圧倒的な力をはじめから見せつけた。
初戦から先発として躍動した細野
しかしこの時点ではまだ打線は眠っていた。悪天候で1日延期となった国士大との1戦目は、順延に影響を受けた細野が4失点と波乱を招く。試合はタイブレークにまでもつれたが、チームの切り札である大髙(営3=常総学院)が2死から適時打を放ち、打線を覚醒させた。ここで勢いづいた東洋大ナインは続く2戦目、相手のミスをつきながら得点を重ね、ここまで4連勝とした。
1戦目でタイブレークで勝負を決めた大髙
そして今季大一番といえる、専大との戦いが到来。1戦目ではドラフト候補の菊地(専大)を前に打線は沈黙。タイブレークの末敗れ、「全勝」の夢は5戦目で散った。それでも、2戦目は19安打14得点と打線が大爆発。その中でルーキー・宮下(総1=北海)が上尾で大暴れ。サイクルヒットを達成し、歴史ある東都に名を残した。そして、昨春チームを盛り上げた橋本吏(総3=花咲徳栄)が猛威を奮い始める。勝負の3戦目で、相手の失策による好運も重なり、3打点の活躍で勝利を後押し。2部優勝に向け、大きく前進した。
1年生の宮下が大活躍を遂げた
今季打点10を上げた橋本吏
厳しい戦いはまだ続いていた。拓大との1戦目では投手陣に不安が見られつつも、野手陣の猛攻で試合を優位に進め、続く2戦目。ここまで3勝をあげていた松澤の不振に加え、相手投手の遅い球に悪戦苦闘。屈辱の2敗目を浴びる。それでも3戦目は、橋本吏が貧打に悩むチームを救う全打点を上げ、再び勝利に貢献。そして、勝ち点5の完全優勝に向けて、再び上尾へと向かった。
今季多くのピンチを凌いだ4年の河北
4年の渡邊は3戦目では先発として登場
最後は昨年、共に2部降格となった立正大との戦い。はじめに松澤が文句なしの4勝目をあげ、ついに入替戦に王手をかける。2戦目では、細野の力投に加え、主将・小口の勝利への執念が届き、念願の神宮への切符を手にした。
4年の松澤は今季4勝をあげた
昨春、神宮で屈辱を味わった彼らは今度は「挑戦者」として入替戦に挑む。神宮での苦い思い出を素晴らしいものに塗り替えられるか。「ここで負けたら意味がない」。1部に絶対返り咲く。2部での熱き戦いを勝ち抜いた東洋大ナインの本当の戦いがまもなく始まる。
主将の小口が入替戦のキーマンとなるだろう
◇入替戦前特集◇
6月17日 橋本吏功外野手・石上泰輝内野手
6月18日 松本渉副主将・小口仁太郎主将
6月19日 松澤海渡投手・細野晴希投手
TEXT/PHOTO =宮谷美涼