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「なんとしても連覇を」。そう意気込み臨んだ東都大学野球秋季1部リーグ戦。昨年度の豪華メンバーをもってしても成し遂げることのできなかった偉業に挑むも叶わず。昇格後ワーストの5位と悔しい結果に終わったシーズンを振り返り、選手たちは何を語るのか。15日間連続スポーツ東洋独占インタビューでお届けする。
第6日目は大車輪の活躍を見せた山下雅善投手(営4=東邦)。投手陣の最後の砦として君臨したサイドハンドが4年間を振り返り、語ることとは。(取材日・11月3日、聞き手=齋藤洋)
ーーまず、秋季リーグを振り返っていただけますか
優勝はできなかったけど、最後に入れ替え戦かもしれないという、最下位の緊張感も味わえていい勉強になりました。入学してからずっと優勝争いで、いつも早めに最下位がなくなっていたのに、最後の方まで最下位の可能性が残ったので。最下位の緊張感の方が圧倒的に強い。プレッシャーもかかります。その中で残留できたのはよかったですね。
ーー秋季リーグ前にパワーピッチングに取り組むとおっしゃっていましたが
春に比べたらパワーピッチングできたし、今までのシーズンで一番ストレートを投げたかなと。1年春でもこんなにストレート投げてないですから。真っ直ぐで押せた感はこのシーズンの方がありますね。調子が悪いと変化球が多くなります。かわしていく感じです。際どく投げるより、真ん中に投げてストライク先行でいきます。それなら相手打線は早めに振りにきてくれます。そこで多少キレのある球がいけば打たれるにしても抑えるにしても一球で終わらせることができるので、そうしてます。
ーー秋季リーグで印象に残っている試合は
立正大3回戦です。タイブレークを抑えた試合ですね。前日に打たれて監督に怒られて、次の日だからです。流石に二度の失敗はできないと思って投げましたから。出番をくれた監督に感謝です。
ーー一番印象に残っているシーズンはいつですか
1年春です。一番良かったのも1年春かな。怖いもの知らずだったので、思い切りよく投げられていたと思います。細かい部分は全然。思い切りの良さと投げっぷりでカバーしていたのかなと。調子は1年春と4年秋が良かった。出番は1年春の方が多かったです。身体がきつくなるタイプでもないので連投は大丈夫。毎日投げても大して疲労はないです。
ーー副将を務めた1年間でしたが
都志也(佐藤、法4=聖光学院)が元気だし、まとめてくれるから、自分らがどうこうまとめる必要はなかったです。だから、やることが少なかった。都志也が引っ張ってくれました。ただ、投手陣は下級生が多いので、やりやすいようにというのは意識してました。
ーー後輩の村上投手(総3=智弁学園)が大車輪の活躍でした
本当によく頑張ってくれました。ただ、あれぐらいは村上ならやれますよ。試合数が多くなっていて、疲労もある中であれだけ投げられるのはすごい。
ーーリリーフを務める上でのメンタルの持ち方は
実戦の時は自分のせいにはしないことです。グローブのせいとか都志也のせいとか。実際はグローブのせいでもないし都志也のせいでもないんですけどね。思い詰めないようにしてます。練習やオープン戦はひたすら考えて改善しますけど、実戦は気持ちの部分が大半を占めてるかなと。今日打たれて明日までになにができるかという話です。大幅に何かを変えることはできないですから。
ーーマウンドへの上がり方にこだわりは
あんまり攻守交代が早くないですね。チンタラしてると言われるけど、こっちにもいろいろあるんですよ(笑)。いまだに緊張するから、そういう時に素早く動きたくない。緊張してる分ゆっくりして、落ち着く感じですね。ゆっくりやってるから雰囲気も出ちゃいますね。ただ、攻守交代は素早くしたほうがいいです。遅いと見栄えが悪いので。とにかくチンタラしていたわけではありません。それでも落ち着かない時は落ち着けなくて。主に点差が詰まってる時ですね。流石に点差があったら別ですけど。
ーー期待している後輩はいますか
出てきて欲しい投手はたくさんいますよ。部屋子の山内(営2=東洋大姫路)もそうだし、宏史郎(山下、総3=関西)も。宏史郎はアンダースローだし、投げたら抑えると思うんですけど。あとは彼次第です。ストライクさえ入れば抑えられると思います。真面目だから考えすぎて悪い方に行っちゃうのかな。でも考えて悪い方に行くならいいと思います。考えずにもういいやってなるより、悩んで悩んで。それでダメでも何かに生きる。あとは鈴木拓人(営3=聖光学院)。トレーニングを教えたりしているので個人的には出てきて欲しい。拓人は大きなカーブがいいですね。ストレートも春ぐらいにトレーニングを教えてから身体が大きくなって良くなったし。身体の使い方を上手くすればチャンスもあるのかなと。春のオープン戦で結果を出さないといけないですね。内池(総3=桐生第一)は練習をちゃんとしてください。やれば必ずできる。これちゃんと書いといてくださいね。
ーー新チームはどうでしょう
チームとしては強いんじゃないですか。投手陣は村上を始め河北(総1=浦和学院)や松澤(営1=帝京)がいる。野手は、山崎(営3=愛工大名電)や諏訪(総3=浦和学院)、小林直(法3=八戸学院光星)、松本(営1=龍谷大平安)とか、いい打者もたくさんいるし、けっこういけますよ。みんな負けん気が強いタイプなのもいいですね。みんな負けず嫌い。自分ら4年生はどちらかというと大人しいので。
ーー途中から監督が変わりましたが
杉本監督は社会の厳しさを教えてくれる。あとは、練習しろと言わないですね。自分はそっちの方が好きです。自分のやりたいことをできるので。刺激は自分で入れているし。ランニングは多いですけど、比較的自由ですね。前監督はとても厳しかったので。4年間で対照的な監督に出会えて、どちらもいい監督さんだったなと思います。高橋監督には1年春から使ってもらって感謝ですね。石倉(H28年度営卒=JR東日本東北)さんがエースで、自分と片山(H29年度法卒=日本製鉄東海REX)さんがリリーフして、といった感じでした。入ったタイミングもよかったです。
ーー次のステージが目前ですが
今の4年で、上でやる選手の中で勝負です。頑張りたいですね。上でやるために取り組んでいたこともあるので。入ったらなんとかなるかなって思ってます。それぐらいのことはやったし、これからもまだトレーニングを続けますしね。自分は投げることよりフィジカル面に重きを置いてるのでガンガンやります。実戦感覚は春からでも間に合うので大丈夫です。身体をもう一回り大きくして、それをうまく使えるようにといったところですね。
ーー4年間でどこが成長しましたか
したかな(笑)。ただ、調子を何度も崩しましたし、メンバー外になったり投げない時期もありました。そこで、調子の戻し方、保ち方を学べましたね。大事なところで打たれて自分のせいで負けたりもして、一球の重みも学べました。後ろの方を投げさせてもらう上での責任、試合の最後を任されるのは大変だなと。それが面白いんですけどね。
ーーご両親への感謝の気持ちは
シーズンに一度や二度は見にきてくれてました。もちろん感謝してます。父は試合の結果を見ていて、逐一LINEが来たり、技術面ではなくて、人としてみたいなことを送ってくれるので。調子が上がらない時は読み返したりしてました。行動の部分ですね。勉強になることを教えてくれました。
ーー他に感謝したい人はいらっしゃいますか
いくらでもいる。山ほどいます。親もそうだし、監督さんもそうだし先輩方も。一人は決められないですね。とても多いです。お世話になった人全てに感謝したいです。親、監督、コーチ、スタッフ一同は特にですね。
ーープロ野球への憧れはありますか
行きたい。150キロ近くまでは出せないときついかな。かわす投手じゃないので。社会人に行っても際どいところの出し入れとかはできないと思う。高校から元からこうで、大学でさらにパワーピッチャーになった。大学で細かいところ学ぶと思ったのに。球の質で抑えられるようになればプロに行っても面白いのかなと思っています。球の質が良ければ配球やコントロールは関係ない。分かってても打てない球を投げたいです。スタイルは変えないつもりです。
ーー大学野球に未練はありますか
ないです。優勝もしたし、投げたシーズンもあれば投げられないシーズンもあった。いろんな経験ができたなと思います。
ーー4年間を振り返っていただけますか
サッカーの本田圭佑さんが言ってたんですけど、落ち幅が大きいほど上も大きいっていう言葉、その通りだなと。落ちた分上に上がるためにいろいろ考えて、試して。フォームの試行錯誤なんて、ピッチャー陣の中でも一番したんじゃないかなと。引き出しは4年間で圧倒的に増えました。
◇プロフィール◇
山下雅善(やました・まさよし)
身長・体重/179㌢・84㌔
好きな食べ物/焼肉
登場曲にするなら/AK-69の「START IT AGAIN」
切り替えの方法/打たれたら何かを変えること。アンダーシャツや、ズボンのサイズ、アンダーストッキング。グローブも変える。
野球を始めたきっかけ/サッカーと野球やってみたら野球の方が上手だったから。
~連続インタビュー一覧~
第1日目:杉本泰彦監督〜「主役は選手たち」日本一の野球部に〜
第2日目:小峰聡志外野手「やり残したことはない」〜副将が振り返る大学野球〜
第3日目:7季連続無失策だった男。最高の守備職人が語る未来 津田翔希内野手
第4日目:木村翔大内野手〜「存在感がある選手に」高みを目指し戦う〜
第5日目:松本渉外野手〜「もっと結果が出せる」スーパールーキーが振り返る1年目〜
11月22日小林直輝内野手
11月23日河北将太投手
11月24日小川翔平内野手
11月25日村上頌樹投手
11月26日納大地外野手
11月27日松澤海渡投手
11月28日諏訪賢吉内野手
11月29日山崎基輝新主将
11月30日佐藤都志也捕手