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2022.08.13
硬式野球

[硬式野球] 〜最後に散った1部への夢、ここから再起を図れるか〜14日間連続インタビュー第13日目・河北将太投手

聖地神宮に戻ることを夢見て、チーム一丸となりこの春を戦った東洋大の戦士たち。厳しい2部を戦い抜き、1部への切符を掴みかけたが、最後は戦国東都の重圧がのしかかり、思い出の地で涙を流した。心に焼き付く経験をした選手たちは何を語るのか。14日間にわたり彼らの思いをお届けする。



第13日目は、河北将太(営4=浦和学院)投手。調子が上がらず追い込まれていた3月から、努力が身を結んだリーグ戦。それでも「気負ってしまった」と悔しさを味わった入替戦を振り返る。「経験はしたので、次は失敗しないように」。レベルアップを図る河北は学生最後の夏をどう価値あるものにするか。(取材日・7月17日、聞き手=宮谷美涼)


ーー今季を振り返っていかがですか

いいシーズンになったんですけど、最後は良くなかったんで、そこだけでは後悔が残っている感じですね。


ーー春季オープン戦では、調子が上がらない様子でしたが

焦りしかなかったです。でもどこかで何かがハマれば変わるなっていう自信があったので、焦りがある中で、ある意味やってきたから大丈夫だろうという自信はありました。それでも、ずっと「なんとかなる」と思っていて。最初は結果が出てなかったんですけど、オープン戦最終戦のBチームでの試合(駿河大戦)で感覚をつかんで、「いけるな」と思いました。


ーー「いいシーズンになれた」理由を教えてください

ずっと去年から取り組んできた、身体の面で一から作り直したのと、フォームを180度変えたことがようやく身体に馴染んできたのかなと。我を突き通して去年は苦しんだんですけど、そこは自分を信じて良かったかなと思います。


ーーリーグ戦を振り返っていかがでしたか

国士大1回戦は、そこで投げると言われてなくて、ブルペンで8球ぐらいしか投げてなかったんですけど、ある意味落ち着いていたんで、焦らず入れたので良かったかなと思います。専大1回戦でのタイブレークは緊張しましたね。でもそこで打たれたから、次に活かせたのかな。拓大3回戦では、無死満塁でマウンドに上がりましたが、渡邊(総4=報徳学園)が頑張ってたんで。なべ(渡邊)はプライベートでも仲良くしてもらってるんで、「助けたい」という思いが強くて。あそこで打たれたら負けてたぐらいの大事な部分だったので、助けたいのも強かったんですけど、あの時も事前準備できなかったんで、そこは僕の失敗だなと思います。


ーーそれでは、常に準備しておく必要があると

僕はアップに時間がかかるので、そこのタイミングを間違えたかなと。それでも、失敗して修正しての繰り返しをずっとやって来れたので、いい体験というか、次に活かせることができたかなと思います。


ーー今季はピンチでの登板が多かったですね

心臓に悪いなと思ってたんですけど、ある意味使い勝手のいいピッチャーに思われてると思うんで、結果を出さなければ言われるし、結果を出せば地位が逆転すると思っているので。そういう部分では面白かったかなと思います。


ピンチでの登板前


ーー結果を残したことで自信がついたのではないでしょうか

自信は変わらないですけど、自信というよりは、前よりは楽しく野球を出来てるのかなと。去年はそんなことなかったので(笑)。楽しく野球ができて、余裕ができてきたから、いけたのかなと思います。ピンチが来たら「またか」みたいな。「どうせここらへんで来るんだろうな」と予測と準備ができたので、それは今後に活かせますし、そういうのは良かったなと思います。


ーーやはりピンチの場面では自分がいきたいと

以前と比べれば、「任せてくださいよ」じゃないですけど、というか「どうせ俺なんだろ」みたいな感じで(笑)。ある意味そこを抑えたら、僕の地位が上がるんで。抑えたら変わるじゃないですか。「今に見とけよ」じゃないですけど、そのスタンスで投げていましたね(笑)。


ピンチと言えば河北だった


ーーそれでは入替戦全体を振り返っていかがでしたか

気負っちゃったなと思います。


ーー1、2戦目を振り返ると

1戦目は自分が上がったときは、前の回に細野(総3=東亜学園)から一條(総2=常総学院)に変わって、そこで2点取られて流れが良くなかったので。「テンポ良く投げよう」って思ったのが、急いじゃってボール先行になってしまいました。でも修正できたのはひとつ成長したのかなというのがありますね。2戦目は途中で投げる予定がなくなったんですけど、結局投げることになって。まあ、抑えられてラッキーだなって感じですね。


 入替戦では3戦ともマウンドに上がった


ーー3戦目は八回からの登板でしたが

流れが良くなかったので、八回は最初から気合い入れて投げましたね。


ーー登板時の雰囲気を今振り返ってみるといかがですか

八回と九回で違ったのは、八回は東洋大側が変に盛り上がったじゃないですか。まだ九回があるから「勝ったんじゃないならやめてくれ」って思っていたんですけど、「ちょっとヤバいな」ってなっていて。それで九回表で1死二塁で小口(法4=智弁学園)が抑えられて、シュンっていう空気になったじゃないですか。それで「俺、集中して抑えなきゃダメだ」ってなっちゃって。いつもはイニング跨ぎの時は裏でリラックスしてるんですけど、この時は「集中しなきゃ集中しなきゃ」って気負ってしまいました。自分の仕事だけを考えるんじゃなくて、チームを変に背負っちゃったのが良くなかったです。


ーーそれではどうすべきだったと

僕の仕事は抑えることだから、周りの情報を入れないで、そこだけに集中すべきだったのかなと。そこは八回はできてて、九回は変に背負っちゃった。去年、2部に落としたのは僕だと思っていたので、「俺が上げなきゃ」と気負ってしまいました。そこが僕が弱かったところなので、本当に悔しいですよね。


ーー実際、九回前の表情がかなり強張っていましたよね

抑えなきゃとかチームの勢いもあったので、なんとか(状況を)変えなきゃいけないと思っていました。細野に声を掛けられたことも覚えてないです。それくらい緊張というか、気負っていました。


九回前の河北からは緊張の様子が伝わってきた


ーー最初からストレートの四球を与えてしまいました

緊張もありますし、映像を見てないので、技術的なことは分からないですけど、フォームが変わってたと言われました。いつもは姿勢を大事にしていて、常に気にしているのですが、その姿勢が崩れてしまった。結局は気にできてないという部分で、自分を見つめられてなかったってことで、やはり気負ってしまって、「周りが周りが」で逆に視野が広がりすぎたのかなと思います。百歩譲って最初のフォアボールは良かったんですけど、2人目の森下(中大)へのフォアボールは良くなかったですね。


九回の投球の様子


ーー後から島田(総1=木更津総合)投手が登板しました

僕の後は島田と聞いていたんで、「いけるところまでいけるいけ」みたいな感じでしたね。でも、最後を1年生に背負わせてしまったというのは今回一番反省しなきゃいけないところです。そこが心残りですし、悪い思いをさせたな思います。


ーー最後打球がくぐり抜けた時は

絶望しました。申し訳なさ過ぎて。「また俺やっちゃった」みたいな。俺のせいで負けたと思って、帰って気づいたら10時みたいな感じぐらい気が落ちちゃってて。それでも周りの選手や、地元の友達、恩師が気にかけてくれて、切り替えられて、また前に進めているので、それは周りに感謝しかないですね。


ーー周りの人の支えに気づいたと

去年は、感謝というよりは周りに怒りじゃないですけど、怖かったのですが、今回は、支えてくれてるんだと気づいたので、そこは一年を通して大きく変わったことですね。そこはありがたいと本当に思っています。


ーー2部優勝のマウンドを任されましたが、やはり入替戦の最終回とは違うものがありますか

2部の最後は緊張しましたけど、対応できたので、そこの差じゃないんですかね。いつもなら集中できるのに、集中できていないということは、格別に違ったのかなというのはありますね。そこが弱かったのと、結局はけがした状態で(入替戦に)臨んでしまったのは一番反省しないといけない部分です。そこでやっぱり逃げができるじゃないですか。万全だったからといって、結果が変わったかは分からないですけど、気持ちは違いますから。そこはチームに迷惑かけてしまったなと思います。


2部優勝直後はホッとした表情を見せた


ーー河北投手が考える2部残留の原因とは

1戦目の九回からなんだかんだ中大にペース握られていたので。あの場面で北村(中大)にタイムリー打たせたのが良くなくて、それで結局(2戦目で)北村にホームラン打たれましたし。リーグ戦と違って短期決戦なんで、一戦一戦圧倒しないといけない。そこで「北村がやってくれる」と思わせてしまった。それが僕らの失敗ですよね。


ーーチームとしての反省点はありますか

今回は、松澤(営4=帝京)に頼りすぎちゃったことが僕自身はいけないことだと思っています。松澤が結果を出してくれたので、2部優勝ができましたし。僕は細野より松澤の方が安定して計算できると思うので。そういう部分でみんなが「松澤ならいけるだろう」っていう空気がありました。やっぱり2タテしたくても全部勝てるわけないじゃないですか。そういう意味で、拓大戦入替戦では、松澤に頼りすぎちゃったと思います。


4年生としてチームを支えてきた


ーー入替戦から見えた自身の課題は

けがをしないように。身体を一回りでかくして、身体を作った中で全体的にレベルアップしていきたい。変化球とかもそうなんですけど、全体的にレベルを一個ずつ上げる。その面に徹底して身体作りからやっていきたいです。


ーー昨秋から身体がスリムになりましたね

去年は無駄な脂肪だったり、変な部分に筋肉がついているので、全部排除したわけじゃないですけど、そういうトレーニングをして、無駄なものを省きました。そうしたら、動きが良くなってきたので、今は筋力をつけるという段階に入ったという感じです。その段階踏む途中に、なかなか馴染まない動きとかあって、苦しみました。それでも、去年苦労してよかったと思います。


ーー夏はどの部分に重点を置いて取り組みますか

身体作りとトレーニング。けがしない身体を作って、筋力アップ。もう一段階大きくなって、強く一個ずつあげてればいいかなと。


ーーメンタル面ではいかがでしょう

周りを見すぎちゃうことがあるので。結局は自信って、僕は「技術=自信」だと思うので。技術が上がってくれば、自信に変わると思うので、とりあえずそこを突き詰めてやっていきます。経験はしたので、次は失敗しないように、修正すればいいだけなので。そこの部分は変わりなく、今まで通りやっていって、経験を生かして、いろんな人からアドバイスもらっているんですけど、活かしてやっていこうかなと。


ここからまた再挑戦だ


ーーラストシーズンへの思いは

秋はもっとチームに貢献して、みんなで勝ちたいので、とりあえず多く投げてやっていけたらなと。結局は使うのは監督なんですけど、先発もやりたいので狙いますし、今のところに満足はしていないんですけど、やりがいを感じているので。貪欲にやって最終的に、今より上に行けたらいいなと思います。


ーー秋の目標は

0にこだわりたいです。防御率も0でいきたいですし、リリーフだったら失敗0。無失点、四死球もいかに0に近づけるか。数字にこだわってやってて、そうすればチームの勝ちにも結びつくと思いますし、とりあえず、圧倒した結果を目指してリベンジしたいです。


ーー最後は1部に上げて卒業ということでしょうか

僕らができる最後の仕事って、来年後輩を神宮でやらせるということしかどうあがいてもできないので。迷惑かけた分、僕がやり遂げる仕事だと思っているので、本当に命削って投げていければなと思います。


 

◇プロフィール◇

河北将太(かわきた・しょうた)

生年月日/2000・6・14

身長・体重/177㌢・81㌔

リラックス方法/音楽聞く、マンガ読む、ワンピース、時間があるとき温泉とサウナ、水風呂



◇連続インタビュー一覧◇

第1日目:杉本泰彦監督 「今度はもっと強いチームを」

第2日目:宮下朝陽内野手「いい経験になった初めての春」

第3日目:加藤響内野手 「秋は見返してやる」

第4日目:石上泰輝内野手「首位打者を狙いに」

第5日目:後藤聖基捕手 「手応えのあった春」

第6日目:橋本吏功外野手「自分が出ればチャンスになる」

第7日目:水谷祥平外野手「力不足を感じた」

第8日目:渡邊友哉投手 「困ったときに使われるような選手に」

第9日目:細野晴希投手 「チームを引っ張る立場に」

第10日目:松澤海渡投手 「全勝しないと1部で通用しない」

第11日目:矢吹栄希外野手「不甲斐ない結果で終わってしまった」

第12日目:松本渉外野手 「ラストシーズンは後輩に残せるように」

8月14日 小口仁太郎主将


PHOTO=宮谷美涼