記事
2023年6月24日、誰もが待ちに待った瞬間が訪れた。何度も大きな壁に跳ね返されてきた東洋大ナインがその壁を打ち砕き、2021年春以来5季ぶりの1部の舞台への切符をつかみ取ったのだ。そこで今回は、1部昇格・復帰を記念して今季のリーグ戦・入れ替え戦について水谷祥平主将(営4=龍谷大平安)に特別インタビュー。今季のチームや入れ替え戦、1部の舞台にたどり着くまでの険しい道のりについて語ってもらった。(聞き手=成吉葵)
――“1部に上がった”ということについて。一番は嬉しいですか、それともホッとしていますか
嬉しいですめちゃくちゃ。けど、どう思うかって考えると「ホッとしている」って感情が一番強いです。
――それはやはりご自身が最終学年ということも関わってきますか
そうですね、それはあるかもしれないです。秋に上がっても、チームとして1部に上がれた喜びはありますが、自分たちが1部でプレーできない。できるのとできないのじゃ差は多少あるかもしれないです。
――他にもホッとした理由などはありますか
昨年春の入れ替え戦から1年。秋は入れ替え戦にすら進めず。そろそろチームみんなで壁を超えるというか、もっと大きくならなきゃいけないなって思ってる中でリーグ戦初戦からタイブレーク。勝ったんですけど自分たちの野球ができなくて、正直このままじゃ2部優勝も厳しいなと思ったこともなかったわけではないです。だからって言うのはあります。
――そこから結果として上がれたことが安心の理由ですね
そうですね。数字じゃ見えない悲壮感というか、苦しかった中から這い上がれたので良かったなと。
――今季、チームとして“一戦必勝~執念~”というスローガンを掲げられていました。このスローガンについて教えてください
入れ替え戦に行くためには2部で優勝しなければいけません。その中で、昨秋は最後の最後まで分からないという展開の中で自分たちは負けて入れ替え戦に進めなかった。その時に、点を取れるときに取らず、試合に勝ち切れずにいたツケが回ってきたんだって思いました。なので、目の前の1試合に全力で挑み、必ず勝つことをチームとして意識しなければいけない。この思いを乗せたのが今季のスローガンでした。
――このスローガンを踏まえて、今季のチームはいかがでしたか
今季のチームにとって大事なのは1戦目を落とさないことでした。細野(総4=東亜学園)が投げる試合で必ず勝たないと完全優勝なんて夢のまた夢。この意識がチームにありました。その中で初戦からタイブレークで危うかったり、等々力球場で橋本のソロ本塁打で勝ったりと、危ない試合が続きました。けど、勝てたので満点ではないですが最低限はできたのかなって思います。そして、落とす試合ももちろんありましたが完全優勝を成し遂げられたので。目の前の一戦、カード勝ち越しを意識して戦って勝つことができたので良かったです。
――今季、チームとして何か苦しかったことは
楽なことなんて一つもないので、そういう意味では全てにおいて苦しいです。そんな中でもチームとして開幕カードの東農大戦と開幕2カード目の国士大戦は特に苦しんだのかなって思います。序盤はホントに打線が繋がらずに投手に負担かけてしまったし、東農大2回戦も劇的な終わり方でしたけど結局自分たちが攻めきれずに接戦に持ち込んでしまった事実は変わりないので。国士大戦もほんとに安打が生まれないというか、何とか勝てた初戦の後に今季初黒星。苦しい中で何とか勝ちを拾ってきた。その中でタイミングで黒星がついて連勝が止まったのは苦しかったですね。3戦目でサヨナラ勝ちできてほんとによかったです。
――チームはどのように調子を上げていったのですか
野球って9人のチームスポーツではあるんですけど、攻撃においては一人一人の繋がりが得点を生み出す足し算みたいなものなので。バントとか犠牲フライも連携というよりかは足し算の中の一部。結局個々が頑張らないと点が生まれないスポーツで、そこの意識がみんな徐々に変わった結果なのかなって。
――状態を徐々に上げていった中で迎えた他の3カード(立正大・拓大・専大)についても聞かせてください
立正大カードに関しては、1戦目は序盤にたくさん点を取ってそのまま流れを抑え込んだ感じで。2戦目は個人的に今季初めて自分が貢献できたと実感した試合でした。ただ本塁打による得点で、得点圏に走者がいても繋げられなかったのでまだまだかなと。
拓大線は最初から自分たち次第では優勝を決められるとしていたのと、GW明けでみんな野球に集中できた後だったので上手く初戦は取れたのかなって。ただその流れで2戦目を取れなかったことが最大の反省点。3戦目で決められたから良かったけど、あそこで負け越して完全優勝逃して、優勝自体も翌週に持ち越しだと、自分たちは苦しかったのかなって思います。
専大戦も優勝が決まってるとはいえ、僕たちは完全優勝を狙っていたし、一戦必勝で勝ちに行くことが今年の目標なのでそこは徹底して臨みました。2戦2勝はできなかったし、今思うと今年はタイブレークで始まりタイブレークで終わるリーグ戦だったんですけど、しっかり勝ち切れてよかったです。個人としても守備で貢献できたのかなって思います。
――その専大戦から約1か月後に行われた入れ替え戦ではみんな状態が仕上がっていたように見えました。入れ替え戦はリーグ戦で徐々に状態を上げてきたのがハマった感じですか
それもありますね。感覚が戻ってきた中で1ヶ月間試合がなくてブランクを懸念する声もありましたが、自分たちとしてはいい意味でリフレッシュできたというか、個々に課題に取り組めた。そこは大きいのかなって思います。
――その入れ替え戦について。昇格をかけた入れ替え戦は2度目ですが、今季はどのような気持ちで臨まれたのですか
正直、普段通りやるのは難しいです。その中でいかに自分の緊張や興奮をコントロールできるかが大事だと思うんですけど、結構みんな冷静だったなって思いますね。もう目の前の敵を倒すだけというか、そこだけに集中してました。
――昨年を経験しているのは大きいですか
そうですね。初めてのメンバーももちろんいますが、ほとんどが昨春の入れ替え戦や昨秋の専大戦を経験しているので一戦の重みを知ってる人が多いのかなって思います。
――昨年の入れ替え戦と今年の入れ替え戦。相手が違うのは当然なのですが、自分たちが戦う上で何か違うものはありましたか
“入れ替え戦”というもの自体は同じなんですけど、やっぱり経験もあってか不安よりもポジティブに捉えていた気がしますね。やってやるぞというか、俺らならやれるというか。初戦を戦う前から自分たちの中に勝って喜ぶビジョンがあって、そこに向けて戦えた感じがします。昨春は怖かったというか、完全優勝できて入れ替え戦初戦を奪えた分、負けた時には「終わった」って思いましたね。
――まず、今回の入れ替え戦の初戦について振り返りお願いします
細野が少し荒れてたんですけど、あいつは絶対勝つのでそんな心配とかなく。3回表に1点奪われて、今回の入れ替え戦唯一のビハインドの場面を迎えるんですけど、1点で細野がしのいだこと、全員が勝ちに向かっていたおかげか悲壮感は0でしたね。さっさと取り返すって会話をしていた中で、4回裏に追いついたどころか逆転。ビハインドの場面を短く、そしてすぐさま逆転。それが勝因だと思います。
――2戦目について振り返りお願いします
この試合は本当に野澤(総4=龍谷大平安)、島田(総2=木更津総合)、石上祐(法4=東洋大牛久)の試合でしたよね。打線も前日とまではいかないものの小刻みに得点できてよかったですが、やっぱり彼らの投球は後ろから見ていて圧巻でした。
――2戦目では水谷主将のヘッドスライディングもありました
相手のエラーがあった中で、それを見逃さずに得点に絡めたことが良かったです。個人的にあのヘッドスライディングは自分としてもチームとしても大きいものだったかなって思います。
――最後のセカンドゴロについて
気を抜かずに、しっかり打球の行方を追ってました。宮下がしっかり捌いて初めて初めて喜びを感じられました。同時に頭真っ白というか必死にマウンドに向かってたんですけどね。
――今季のチームとして得た収穫はありますか
守備から流れを作り投手陣で勝つ野球を井上監督も言ってますし、僕たちもその勝ち方が向いてると思うのですが、実際にできたこと。これは今後に繋がると思います。
――今季を戦った中で生まれたチームとしての課題
やっぱり2戦目と起爆剤ですよね。今年の青学見てもらえばわかるんですけど、ほぼ2連勝。やっぱりそういうチームが勝つので、そこがうちはまだまだ足りない。あと、細野が完封した試合も全員が同じタイミング打撃が湿ったりと、とにかく試合ごとに波があるので、そこでチームが勢いづくための打撃、自分が勢いづけるって意識を全員が心掛ける必要があると思います。
――秋からは1部に舞台が移ります。2年生以来の1部ですが、復帰・帰ってきたという感じはありますか。
まだ戦ってないので何とも。ただ、自分たちがいた頃とは違うんだろうなって外から見て感じますし、自分たちは挑戦者なので。前にいたとかは関係なく挑戦者として上の舞台に挑みます。
――最後に今季の総括、一言をお願いします
苦しいことばかりでしたが目標達成できて本当に良かったです。サポートや応援してくれてありがとうございました。秋に向けて、全員で成長していくので秋もよろしくお願いします。
◇プロフィール◇
水谷祥平(みずたにしょうへい)
生年月日/2001・5・31
身長・体重/175㌢・ 85㌔
♢13日間連続インタビュー♢
♢特別企画♢
2.1部の舞台へ!水谷祥平主将特別インタビュー
♢インタビュー♢
宮下朝陽 内野手
細野晴希 投手